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フグ科(Tetraodontidae)の分類 条鰭綱(Actinopterygii)
フグ科(Tetraodontidae)の概要 Tetraodontiformes

フグ科(Tetraodontidae)

【 学名 】
Tetraodontidae

基本情報

大きさ・重さ

成魚体長:40 ㎝以下の種が多いが、モヨウフグ属やサバフグ属には 70 ㎝に達する種もいる。

参考文献

  • 松浦啓一 2000 フグ科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 193.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

分布

多くの種が海産。本州中部以南。インド洋、太平洋、大西洋の温帯~熱帯。東南アジア、アフリカ、南アメリカの淡水域。

参考文献

  • 松浦啓一 2000 フグ科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 193.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

和名の解説

フグの和名の由来にはいくつかの説がある。

①腹が膨れることから。

②韓国語でフグのことを「ポク」といい、その呼び名が日本に入って「ポク→ホク→フク→フグ」となった。

③古くはその姿がひょうたんに似ていることから、「フクベ(古語でひょうたんの義)」と呼んだ。

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

分類学的位置付け

フグ科魚類は28属180種余りで構成される。フグ目の中で100種以上を含むのはフグ科とカワハギ科のみである。種数が多く、分類学的に未解決な点が多いため、今後、新種の記載や種レベルでの学名の変更が必要となる属が多い。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

人間との関係

縄文後期の前・中期(約3000~4000年前)の貝塚(フグの本場、下関安岡の潮待貝塚)からフグの歯が出土しており、また、北九州や青森県など各地の貝塚からもたびたびフグの骨が発見されている。これらの事実から、日本人がフグを食べはじめたのは縄文時代からではないかと考えられている。ただ、フグ食が広く普及したのは江戸時代もなかばをすぎたころからである。このため、フグ中毒死する者も多く、各藩はそれぞれフグ食禁止令を設けるほどであった。例えば長州藩ではフグ中毒死した者は家禄没収や家名断絶、尾張藩ではフグを売買した者、食べた者は五日、もらって食べた者は三日の入牢など厳しい処罰をしていた藩もあった。

現在、日本国内では毎年30件程度のフグ中毒が発生し、40~50名が中毒している。そして、そのうち数名が死亡する。厚生労働省や地方自治体がフグに関する注意喚起を行っているが、残念なことにフグ中毒の件数は横ばいの状態が続いている。フグ中毒になると死亡率が高く、国内の食中毒死亡者の過半数となっている。

国外のフグ中毒では、ベトナムにおいて極めて深刻なデータが出ている。Dao et al. (2012) によると、1999~2003年にベトナムでは737人がフグ中毒にかかり、127人が死亡したという。日本と比べると桁外れの多さである。また、ベトナム国内のフグ中毒死亡者は食中毒死亡者の42.9%になっているという。ベトナムでは2004年にフグ類を市場で扱うことを禁じる通達が出され、これによってフグ中毒件数が減少すると期待されている。香港や台湾でもフグ中毒が確認されているほか、フィリピンのルソン島での聞き取り調査でも、フグ中毒によって死者が出ていることが分かった。

Dao, V. H., T. D. Nguyen, T. H. Nguyen, Y. Tanaka, S. Sato, M. Kodama and Y. Fukuyo. 2012. High individual variation in the toxicity of three species of marine puffer in Vietnam. Coastal Marine Science, 35: 1-6.

参考文献

  • 山田梅芳 2000 トラフグ属, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 191-192.
  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

形態

成魚の形質

体はやや長く、横断面は多くの種でまるい。例外的に、キタマクラ属と淡水性の Carinotetraodon 属では体が側扁する。体表に小棘をもつ種が多いが、小棘を欠く種もいる。すべての鰭に棘を欠き、軟条のみをもつ。背鰭と臀鰭は体の後部に対在する。腹鰭はない。上顎と下顎に強大な歯板が2枚ずつある。左右の歯板は中央部で縫合する。鰓孔は胸鰭基部の前方にあり、裂孔状である。
フグ科魚類には肋骨や肉間骨がない。体内にある膨張嚢に水や空気を飲み込んで体を膨らますことができる。多くの種は内臓に毒をもつ。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

稚魚・仔魚・幼魚の形質

色素胞の分布様式は仔稚魚の同定形質の1つであるが、成長にともなって変化するので、発育段階別に比較する必要がある。フグ類の孵化仔魚は頭胴部にだけ黒色素胞があるものと頭胴部および尾部にあるものに大別されるが、両者とも成長に伴って黒色素胞の数と分布は体の後方に広がる。

卵黄吸収から背・臀・尾鰭の3鰭分化までの前屈曲期仔魚では、尾部に黒色素胞が全くないもの、尾部中央部に黒色素胞横帯があるもの、尾部の背腹に黒色素胞が点状に対在するか背腹に黒色素胞叢が対在するもの、肛門後方腹面に黒色素胞があるものに類別される。

3鰭分化から上屈開始までの前屈曲期仔魚は、尾柄部の背腹両面に黒色素胞がないもの、、同部の腹面にだけ黒色素胞がないもの、背臀両鰭の直後方に一時的に大黒色素胞叢が対在するもの、尾部の体側中央部を除く背腹両面に多数分布するもの、尾柄部を取り囲み黒色素胞が分布するものなどに類別される。

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

卵の形質

フグ類の卵はいずれも球形の多油球分離沈性粘着卵で無数の小油球からなる油球塊がある。卵の表面は一様に粘着物で覆われ表面に皺がある。

産出卵は海底の砂礫、岩石、沈殿物などに粘着する(ヒガンフグの卵は海藻にも粘着する)。粘着力は卵発生の中期以降徐々に弱り、孵化前には粘着性を失っているものもある。卵はガラスにはよく粘着するがポリエチレン製品には粘着しない。

サバフグ属では卵発生中に油球の癒合が進み大形になり数個に減少するが、それ以外の属では癒合はわずかに進む程度である。キタマクラの卵の卵膜は10数層の同心円構造であるが、トラフグ属、サバフグ属では1層である。

卵径はキタマクラ 0.55~0.69 ㎜、トラフグ属 0.85~1.41 ㎜、サバフグ属 0.6~0.71 ㎜である。卵膜の透明度はトラフグ属では卵径 1.10 ㎜以下の小形卵では無色透明であるが、 1.20 ㎜前後以上の大形卵ではムシフグを除いては乳白色不透明、または半透明である。ムシフグの卵黄は鮮明な橙色で卵膜は透明である。サバフグ属はシロサバフグは無色透明であるが、ドクサバフグは黄金色透明とされている。キタマクラは微橙色透明である。

トラフグ属とキタマクラでは卵発生中に胸鰭の原基が出現するが、サバフグ属では孵化後の卵黄吸収中に形成される。フグ科魚類では卵期を含めて腹鰭は全く形成されない。フグ科魚類稚仔魚の形態発達は直達的で棘鱗の形成過程を除いては変態的要素は見られない。

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

生態

生息環境

フグ科魚類の多くの種は浅海に生息するが、ヨリトフグのみは深海にすむ。アフリカ、インド、東南アジア及び南米の淡水に約40種が生息する。

多くの種は底生性であり、サンゴ礁や岩礁、藻場、砂泥底、砂礫底に生息する。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

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生殖行動

トラフグ属は大きな群れで産卵する。とくに、クサフグは初夏に砂浜や砂利浜に押しよせ、波打ち際で産卵することで有名。

参考文献

  • 松浦啓一 2000 フグ科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 193.

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産卵

知られている限りでは、フグ科魚類は沈静粘着卵を産む。繁殖生態が分かっている種は多くないが、トラフグ属については他属よりも知見が多い。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

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その他生態

フグ類はフグ毒を体内で生産できないため、外部からフグ毒を獲得し、体内に蓄積する。このことは、フグ毒をもっていないトラフグやクサフグにフグ毒を混ぜた餌を与え、毒化させる実験から確かめられた。

養殖されたフグ類の消化管や筋肉にフグ毒を注入すると、血液を介して体内の臓器や組織に運ばれる。しかし、時間の経過とともに、腎臓や脾臓、皮膚や筋肉ではフグ毒が速やかに減少する。フグ毒が主に蓄積されるのは肝臓である。また、精成熟したメスの場合には、フグ毒は卵巣にも蓄積される。

フグ類はフグ毒をもつのは、捕食者に対する防御効果と考えられている。まず、トラフグに電気ショックを与えると多量のフグ毒を皮膚から放出する。また、クサフグ、ショウサイフグ、ヒガンフグはガーゼで拭くような軽い刺激を皮膚に与えるだけで、フグ毒を放出する。さらに、ほかの魚類はフグ毒を味覚で感知することが判明している。このため、フグ類が皮膚からフグ毒を放出すれば、フグ類を食べようとする魚はフグ毒を感知して、食べるのをやめると推測できる。実際に、フグ類の幼魚をヒラメに食べさせたところ、口に入れたものの、すぐに吐き出した。フグ類を食べようとする魚は、フグ毒によってフグ類を不味い魚であると感知し、吐き出すことで、フグ類は自らを防御することができる。

自然界でフグ類はどのようにしてフグ毒を獲得しているのだろうか。この問題に関する興味深い実験が行われている。フグ毒を入れたゼラチンと無毒のゼラチンを水槽内に置き、そこにトラフグの稚魚を放すと、フグ毒入りのゼラチンに引き付けられることが分かった。つまり、フグ類はフグ毒をもつ動物を嗅覚で探し、それらを好んで食べている可能性が高い。

フグ毒は防御効果のほかにも機能があると考えられる。養殖フグにフグ毒入りの飼料を与えると免疫機能が活性化することが分かった。また、クサフグのオスは低濃度のフグ毒に誘引されることが判明している。つまり、フグ毒はフェロモンとしても作用する可能性が高い。

東南アジアや南アジアの淡水域に生息するフグはサキトキシン(STX)という毒をもつ。サキトキシンもテトロドトキシンと同様に危険な毒である。淡水フグのサキトキシンが何に由来するかは明らかにされていないが、藍藻類が起源になっている可能性が高い。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

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関連情報

漁獲方法

延縄、底刺網、定置網などで漁獲される。釣りの対象魚として専門的にねらうこともあるが、磯釣りの外道としてかかることも多い。

釣りでは、オモリの下の孫針に、見せかけの身餌をつけて、その下にあるギャング針で引っかけて釣るカットウ釣りや、オモリ下の二本針にイカやエビ、アサリなどの切り身をつけて釣る食わせ釣りなどで釣る。竿を上下させて誘い、針にかかったらすぐにたぐらないと、鋭い歯で糸をかみ切られてしまう。

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

種・分類一覧