- 解説一覧
- ビワヒガイ(Sarcocheilichthys variegatus microoculus)について

ビワヒガイ(Sarcocheilichthys variegatus microoculus)
- 【 学名 】
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Sarcocheilichthys variegatus microoculus Mori, 1927
基本情報
- 大きさ・重さ
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全長:20 cm
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
最終更新日:2020-07-29 ハリリセンボン
- 分布
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琵琶湖固有の亜種で、瀬田川や京都疎水にも分布するが、流入河川ではまれである。
1911年に石川県今江潟へ、1912年に諏訪湖へ、1917年に霞ヶ浦へ放流され、現在では東北地方、関東地方、北陸地方、諏訪湖、高知県で定着している。ただし琉球列島は除く。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
- 細谷和海 2018 ビワヒガイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 107.
最終更新日:2020-07-29 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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地方名:ヒガイ(関東地方、近畿地方)
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
最終更新日:2020-07-29 ハリリセンボン
- 人間との関係
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ビワヒガイの頭長には変異があり、琵琶湖の漁師は短頭型をトウマル、長頭型をツラナガ、両者の中間型をヒガイと呼んでいる。これらの変異は互いに連続し、ヒガイの占める割合が圧倒的に高い。北端の岩礁部ではツラナガ、流出河川の瀬田川ではトウマルが多くなる。関東地方や諏訪湖に定着しているものはヒガイである。長頭型と短頭型をそれぞれ別種とみなす説もあるが、形態形質は連続し、遺伝的・生態的分化は認められない。
水産資源として各地に放流されてきたが、琵琶湖産アユの放流への混入もあったと考えられる。岐阜県内では、木曽川、長良川、揖斐川の各水系にビワヒガイのmtDNAを持つ個体が見つかっているが、木曽川水系では特にビワヒガイの比率が高い(鈴木ほか, 2016)。形態的には、尾柄高/頭長の比率が49%以下がビワヒガイとされ、その基準でビワヒガイと同定される標本は1982年の長良川(美濃市)や1985年の木曽川(当時川島町)でも採集されている(向井ほか, 2014)。また、現在でも木曽川水系のダム湖では、形態的にビワヒガイと同定されるものが多く採集される。
明治天皇がことのほか好んだといい、そのために日本ではヒガイに「鰉」の字が当てるようになった。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
- 細谷和海 2018 ビワヒガイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 107.
- 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .
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形態
- 成魚の形質
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カワヒガイに似るが、体が大きくて側扁し、吻がとがり、口がやや大きく、眼が小さい。尾柄高は頭長の49%未満と低く、尾びれの後縁の切れ込みが深い。1対の口ひげは極めて短く、先端に向かって先細る。体色や斑紋のパターンはカワヒガイに似るが、雲状斑はあらく、特に琵琶湖北部のやや深い所に生息する大形の個体では消失する。背びれには1本の黒色帯がある。雌はやや黄色味を帯びる。
雄の第2次性徴はカワヒガイと同様であるが、婚姻色はやや淡い。また雄では 2~3 cmの産卵管を伸長させる。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
- 細谷和海 2018 ビワヒガイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 107.
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- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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幼魚は体側に1本の黒い縦条を備える。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
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- 卵の形質
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卵の形状はカワヒガイのものとほぼ同じであるが、卵形がやや小さく、吸水後で径 3.5~4.5 ㎜である。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
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生態
- 生息環境
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湖や川の下流域の砂底や砂礫底を好み、関東平野では潮汐の影響を受ける汽水域にも生息する。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
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- 食性
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常に水底近くを泳ぎ、毛翅類やユスリカ科などの水生昆虫の幼虫、小型の巻貝、プランクトン動物、石面に付着する有機物や藻類を食べる。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
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- ライフサイクル
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受精から孵化までに要する日数は、水温15℃で17~27日、17.7℃で12~17日、21℃で8~12日。満1年で全長 8~10 cm、2年で 11~16 cm、3年で 15 cm以上に成長する。雌雄ともふつう満2年で成熟する。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
最終更新日:2020-07-29 ハリリセンボン
- 産卵
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産卵期は4~7月である。産卵に適した水温は17~21℃で、最適な水温は19℃。成熟時の全長は、雌雄とも最小のもので約 8 cm、琵琶湖ではイシガイ、マルドブガイ、カラスガイ、ササノハガイなどの殻長 2.5~7.0 cmの二枚貝に産卵する。
産卵場の条件としては、ゆるやかな流れがあり、沈水植物が粗生し、上記の二枚貝が存在していることが必要である。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
最終更新日:2020-07-29 ハリリセンボン
関連情報
- 漁獲方法
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旬は産卵前の3~4月で、延縄、刺網、魞、筌などで漁獲される。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
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- 味や食感
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肉は白身で美味。肉と骨はきれいに分かれるが、背骨やうろこがかたいため、丸ごと食べるのには適さない。
塩焼き、照り焼き、唐揚げ、南蛮漬け、辛子酢味噌和えなどの料理が知られる。
参考文献
- 細谷和海 1989 ビワヒガイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 312-313.
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