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カワムツ(Nipponocypris temminckii)の分類 Cyprinidae
カワムツ(Nipponocypris temminckii)の概要 Nipponocypris

カワムツ(Nipponocypris temminckii)

【 学名 】
Nipponocypris temminckii (Temminck & Schlegel, 1846)

基本情報

大きさ・重さ

全長:15 cm

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

分布

能登半島、静岡県以西の本州、四国、九州の河川と湖沼に自然分布する。近年では、静岡県の大井川以東および関東地方の川でも見られるが、これは琵琶湖アユの放流に伴って移植されたものである。

国外では、北東部を除く朝鮮半島、中国の四川と淅江、台湾島が知られている。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

別名・方言名

地方名:ブト(静岡県)、ムツ・モツ(琵琶湖)、モト(関西)、ハエ(高知県)、雄には地方名の前に「アカ」とつけることが多い。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

分類学的位置付け

コイ目 コイ科 カワムツ属 

参考文献

  • 武内啓明 2018 カワムツ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. pp. 100-101.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

人間との関係

食用としては、美味ではないが毒はなく肉も多いので、空揚げにしたり香辛料を多くつけて食べることがある。かつては誰も釣ろうとはしなかったが、最近、都市近郊の河川では、休日に家族連れでカワムツを釣ることが流行っている。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

形態

成魚の形質

背部は褐色。腹部は白色で、体側中央に暗藍色の幅広い縦条がある。オイカワに比べると、体色が褐色がかっており、体側に暗青色の縦条があり、体幅が広い。よく似た種のヌマムツより側線鱗数が少なく(51枚以下)、胸鰭と腹鰭の前縁が黄色(もしくは幼魚では無色)を帯び、やや目が大きく顔つきが丸い。

成熟した個体には、朱色の婚姻色が頭部下面と腹部に、白色の追星が頭部と尻鰭上にあらわれる。これらの形質は特に産卵期の雄に著しく、頭部の追星は雄がほかの雄と闘うときに、体の後半部の追星は産卵行動の際に産卵床を掘り起こすのに役立つ。雄は雌に比べ大形で、各鰭、特に尻鰭が大きい。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

似ている種 (間違えやすい種)

ヌマムツ

参考文献

  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

生態

生息環境

河川の上・中流を中心にふつうに見られ、特に流れの緩やかな淵に多く生息する。木陰や草陰になっているような場所で群れていることが多い。岩の間や柳の下などに隠れる性質が強く、開けた場所には少ない。この点、オイカワとは対照的である。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

食性

なわばりを形成してその中で流下物や落下昆虫を食べる。流れの遅い場所では、群がって付着藻類を食べたり、広く動き回りながら落下昆虫や底生動物を食べることが多い。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

活動時間帯

夜間や洪水時には隠れ場に入り、主に日中に活動する。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

生殖行動

産卵に先立って、雄は雌を追尾して産卵場一帯を広く動き回る。やがて雌雄は産卵場にやってきて産卵を開始する。

まず雄は、雌の横に並び体を震わせる。そして雌に覆いかぶさりながら体の震えを激しくし、ついには雌を横倒しにすると同時に、尻鰭で砂をかき上げる。このときに卵は放出される。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

産卵

産卵期は5~8月であり、生後2~3年で成熟する。

川では淵尻から平瀬にかけての浅場に雌雄が集まり、砂泥底部もしくは礫底部に産卵する。

雌はふつう数十回産卵行動を繰り返したのち1日で産卵を終えるが、何日かのちにまた産卵する個体もいる。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

特徴的な行動

カワムツは摂餌場所を巡って個体同士が激しく争うことがある。

攻撃行動のパターンは約10種類知られており、一方の個体が他方の個体を追う行動のほかに、2個体が横に並んで速やかに動く¨平行泳ぎ¨、鰭を伸ばし体の側面を相手に見せる¨側面誇示¨、相手の体を頭で突く行動が一般的である。

個体間には攻撃行動の結果から強弱が認められ、順位関係が形成される。一般に体長の大きな雄ほど順位は高く、流れの速いところでなわばりを形成することが多い。順位の近接した個体はときに激しく闘うことがあり、実験池で観察された例では、20分間に2個体が158回もの攻撃行動を行った。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

その他生態

行動範囲はふつう隠れ場を中心に 10~300 ㎡であるが、河川敷にある小さな池など閉鎖された場所では著しく狭くなる。流れの速い場所では流れに定位することが多い。

雄の間には、雌を巡って順位が形成され、雌と番になって産卵行動を行うのは、順位の高い個体だけである。劣位の雄は、番の産卵時にあとから突っ込んで放精したり、放出される卵を食べたりする。同じ場所で何度も産卵行動をすると、既に埋め込まれた受精卵が露出したり、劣位個体によって食べられてしまうことが多くなる。そのため、産卵はいくつかの異なった産卵床で行われることがふつうである。

産卵行動を行う雌雄の間には決まった組合せがあるわけではなく、乱婚である。特に雌の多い場所では、最高順位の雄は1日中放精行動を繰り返すため、体力の消耗が激しく、優劣順位が下落することが多い。

カワムツを個体群として捉えてみると、夏から秋にかけて成魚の密度は低下し、これは高年齢群ほど著しい。成魚は3~4月と6~7月の2回に著しく成長する。

参考文献

  • 片野修 1989 カワムツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 239-243.

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

関連情報

その他

1980年代後半から2000年頃までは「カワムツB」の名称で呼ばれていたが、2003年に本種をカワムツとして、「カワムツA」がヌマムツとして2種に分類された(Hosoya et al. 2003)。

参考文献

  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-07-20 ハリリセンボン

種・分類一覧