- 解説一覧
- ウケクチウグイ(Tribolodon nakamurai)について

ウケクチウグイ(Tribolodon nakamurai)
【IUCN】近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
【環境省】IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
- 【 学名 】
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Tribolodon nakamurai Doi & Shinzawa, 2000
基本情報
- 大きさ・重さ
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全長:40 cm
参考文献
- 酒井治己 1989 ウケクチウグイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 265.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 分布
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信濃川以北~東北地方南部の日本海に流入する大河川に分布する。
国外からの記録はない。
参考文献
- 藤田朝彦 2018 ウケクチウグイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 109.
- 酒井治己 1989 ウケクチウグイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 265.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 和名の解説
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下あごが上あごの前端よりも前方に突き出し、いわゆる¨受け口¨となることから。
参考文献
- 酒井治己 1989 ウケクチウグイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 265.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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コイ目 コイ科 ウグイ亜科 ウグイ属
参考文献
- 藤田朝彦 2018 ウケクチウグイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 109.
- 酒井治己 1989 ウケクチウグイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 265.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 人間との関係
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本種は中村守純(1963)によって新種ウケクチウグイとして学名が付けられずに公表された。しかし、個体数が極端に少なく生態や行動も謎の多い幻の魚であることから、「突然変異体で、新種ではない」との意見もあり、長い間新種記録されずに学名がないままであった。その後、新たな分布域の確認、本種を含めたウグイ属魚類の遺伝的類縁関係の研究も進み、ようやく Doi and Shinzawa(2000)によって正式に Tribolodon nakamurai と記載されるに至った。
発見当時、分布域として知られていたのは福島県、新潟県の阿賀野川水系と信濃川水系だけであった(中村,1963,1969;本間,Kurowaka,1977)。その後、30年近く経過した1990年、山形県最上川においてコイ釣りを楽しんでいた人が、「見たこともない大ウグイを釣った」として試験場に持ち込み、それがウケクチウグイという珍種であることが新聞やテレビで取り上げられた。これがきっかけになって、最上川とその支流における採捕上方が次々と寄せられ、ウケクチウグイが最上川全域にわたって広く分布していることも明らかになった。その後の調査では、山形県の赤川水系でも生息が確認された(本登・桂, 1995)。
また1991年には秋田県子吉川水系でも投網により1尾が採捕された(酒井ら,1991;杉山,1997)が、この川では過去に採捕記録がなく、また、その後の採捕報告もない。さらに信濃川河口で未成魚の採捕記録がある(Kurowaka,1977)。ただし本種が塩分耐性を有している可能性があるため、杉山(2002)は、これらの採捕個体も最上川で産まれた個体が遡上した可能性があると考えた。そのほかに、長野県千曲川水系からも採捕の報告があった(上原,1997)。
このように、本種の分布は秋田県南部から新潟県の日本海に注ぐ比較的大きな河川に限られているのが特徴的である。最上川では上流部の支流から河口付近に至るまで広く分布しているが、これまで海域に設置された定置網からの採捕の報告例はない。
参考文献
- 桂和彦 2005 ウケクチウグイ, 桂和彦(著) 片野修、森誠一(監修) 片野修、森誠一(編) 希少淡水魚の現在と未来 : 積極的保全のシナリオ. 信山社. pp. 244-247.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
形態
- 成魚の形質
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細長く、紡錘形をした魚である。形態的には口ひげがなく、下顎前端が上顎前端より前方に突出し(ほかのウグイ属魚類では上顎の前端は下顎よりも明瞭に突出している)、口が上を向くこと、すなわちその名が示すように「受け口」になっているのが最大の特徴である。また、上下の唇の先端部分が黒いのも本種の特徴で、この黒色部の有無で 2~3 cmの稚魚の段階でほかのウグイ属魚類と明確な判別が可能である。
吻は長く、頬も広い。背びれ前部のうろこは40枚以上、側線鱗数は85枚以上。
産卵期には腹側に1本の朱帯と2本の黒色帯が出る。婚姻色はウグイのそれによく似ている。
参考文献
- 藤田朝彦 2018 ウケクチウグイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 109.
- 桂和彦 2005 ウケクチウグイ, 桂和彦(著) 片野修、森誠一(監修) 片野修、森誠一(編) 希少淡水魚の現在と未来 : 積極的保全のシナリオ. 信山社. pp. 244-247.
- 酒井治己 1989 ウケクチウグイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 265.
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生態
- 生息環境
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河川の上~下流域に生息する。
発育段階別に生息場所をどのように使い分けているかは現在のところ不明である。
参考文献
- 藤田朝彦 2018 ウケクチウグイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 109.
- 桂和彦 2005 ウケクチウグイ, 桂和彦(著) 片野修、森誠一(監修) 片野修、森誠一(編) 希少淡水魚の現在と未来 : 積極的保全のシナリオ. 信山社. pp. 244-247.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 食性
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魚食性が強い。
参考文献
- 藤田朝彦 2018 ウケクチウグイ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 109.
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- 産卵
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産卵生態について詳しいことはほとんど知られていないが、瀬付き漁場でウグイと混獲されることから、産卵期や産卵場の条件についてはウグイとほぼ同様ではないかと考えられている。
産卵期は融雪増水が終了し減少し始めた頃で、12~13℃(1日の最低水温が10℃を下回らないこと)が目安と考えられている。
只見川での産卵は6月頃といわれるが、詳細は不明である。そのころにはエビを餌として釣れ、ほかのウグイ類よりも肉食性が強いのではないかとも言われるが、生態についてはほとんど分かっていない。
参考文献
- 桂和彦 2005 ウケクチウグイ, 桂和彦(著) 片野修、森誠一(監修) 片野修、森誠一(編) 希少淡水魚の現在と未来 : 積極的保全のシナリオ. 信山社. pp. 244-247.
- 酒井治己 1989 ウケクチウグイ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 265.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
関連情報
- 漁獲方法
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ウケクチウグイは、簗、刺網、投網、釣りなどで混獲されるほか、産卵期のウグイの瀬付き漁でも混獲されている。
参考文献
- 桂和彦 2005 ウケクチウグイ, 桂和彦(著) 片野修、森誠一(監修) 片野修、森誠一(編) 希少淡水魚の現在と未来 : 積極的保全のシナリオ. 信山社. pp. 244-247.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 味や食感
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味については『両羽博物図譜』にも、「…味美ナラサル方ナリ」と紹介されているように、食した人の話では小骨が多いうえに泥臭く、美味ではないらしい。
ただ小さな個体はウグイと区別できないため、甘露煮や塩焼きとして食されているようである。
参考文献
- 桂和彦 2005 ウケクチウグイ, 桂和彦(著) 片野修、森誠一(監修) 片野修、森誠一(編) 希少淡水魚の現在と未来 : 積極的保全のシナリオ. 信山社. pp. 244-247.
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