- 解説一覧
- ツチフキ(Abbottina rivularis)について

ツチフキ(Abbottina rivularis)
【環境省】IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
- 【 学名 】
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Abbottina rivularis (Basilewsky, 1855)
基本情報
- 大きさ・重さ
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全長:8 cm程度
参考文献
- 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .
最終更新日:2020-07-31 ハリリセンボン
- 分布
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濃尾平野以西の本州と九州北部、アムール川水系・朝鮮半島東岸を除く南部から中国福建省に分布する。
参考文献
- 川瀬成吾 2018 ツチフキ(ツチフキ属), 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 104.
最終更新日:2020-07-31 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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地方名:スナモロコ(関西)、ドロモロコ(別名)
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
最終更新日:2020-07-31 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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コイ目 コイ科 カマツカ亜科 ツチフキ属
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
- 川瀬成吾 2018 ツチフキ(ツチフキ属), 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 104.
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- 人間との関係
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雑魚として取り扱われる。
近年激減し、淀川では20年以上記録がない。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
- 川瀬成吾 2018 ツチフキ(ツチフキ属), 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 104.
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形態
- 成魚の形質
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体はやや縦扁し、カマツカに比べて太くて短い。吻は短く、やや尖る。眼は高い位置にある。口は吻端の下方に開き、1対の短い口ひげがある。下唇に肉質葉を備えるが、乳頭突起は発達が悪い。カマツカと同様に、肛門は前方にあり、肛門と尻びれ起点間のうろこの数は6~7枚。下あごの端から胸びれ基底までの腹面にはうろこがない。
体色と斑紋の形はカマツカに似るが、概して濃い。眼より前の吻端部には1本の暗色の帯がある。胸びれ、背びれおよび尾びれには、鰭条に沿って褐色の小さな斑点が並ぶが、胸びれのものは不明瞭なこともある。
側線は完全。頭部側線系は発達が悪く眼下管は眼前部で途切れ、眼上管および前鰓下顎管には連絡しない。咽頭歯は1列。うきぶくろの前室は骨嚢におおわれ、後室は著しく退縮している。
成熟した魚では、上あごの後ろ背面が一部くぼむ。また雄では、背びれがのび、顆粒状の追星が頭部や胸びれの前縁にあらわれるが、婚姻色はあまり目立たない。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
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- 卵の形質
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卵は沈性粘着卵で、最大径 2.5~3.0 mmである。ゼゼラの卵と同様、寒天質様の物質を多量に含む。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
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生態
- 生息環境
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平野部の、湖や池や流れのほとんどない灌漑用水路に生息する。浅い砂泥底のところを主な生息場所とするが、カマツカに比べて、いっそう泥の多い底質を好む。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
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- 食性
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雑食性で、ユスリカ幼虫、イトミミズ、デトリタス、浮遊動物、付着藻類などを食べる。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
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- ライフサイクル
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受精後5~6日で孵化する。仔稚魚には明瞭な浮遊期がない。満1年で 5~8 cmに成長するが、雌より雄のほうが大きくなる。雌雄とも、多くは満2年で成熟する。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
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- 産卵
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産卵期は4~6月である。川のワンドや農業水路など、流れの緩やかな泥底で産卵する。卵はすりばち状の巣の中で1尾の雄によって保護される。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
- 川瀬成吾 2018 ツチフキ(ツチフキ属), 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 104.
最終更新日:2020-07-31 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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体が小さく、寒天質卵を産む点でゼゼラ属に似るが、頭部骨格の構造からカマツカに最も近縁であることは明らかである。
なお中国で従来ツチフキ属 Abbottina に分類されていたものは、いずれもゼゼラ属コブクロカマツカ亜属 Microphysogobio のものである。
濃尾平野のツチフキは自然分布か移入分布か不明であったが、岐阜市の長良川水系産21個体と梅津市の揖斐川産2個体のミトコンドリアDNAの部分塩基配列を決定し、データベース上のツチフキと比較したところ、一宮市の木曽川産19件、滋賀県産6件、和歌山県産1件と完全に一致した。滋賀県のツチフキは奈良県からコイやタモロコが放流された際に混入したものと考えられており(中村, 1969)、揖斐川・長良川・木曽川のツチフキが、完全一致するということは、滋賀県産と同様の移入起源(あるいは滋賀県に定着した個体群の二次的移入)であることを示唆している。
参考文献
- 細谷和海 1989 ツチフキ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 316.
- 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .
最終更新日:2020-07-31 ハリリセンボン