- 解説一覧
- カネヒラ(Acheilognathus rhombeus)について

カネヒラ(Acheilognathus rhombeus)
- 【 学名 】
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Acheilognathus rhombeus (Temminck & Schlegel, 1846)
基本情報
- 大きさ・重さ
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全長:12 cm
タナゴ類では大型に属する。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
- 分布
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自然分布域は、濃尾平野以西の本州、四国北東部、九州北部、朝鮮半島である。確実な自然分布は琵琶湖水系以西であり、岐阜県には1970年代以降に出現していることから、移植によるものと考えられる。
関東・北陸・東北地方に人為分布する。
国外では朝鮮半島に分布する。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
- 武内啓明 2018 カネヒラ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
- 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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地方名:ヒラボテ・オクマボテ(琵琶湖)、サンネンシュブタ(筑後川)
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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コイ目 コイ科 タナゴ属
参考文献
- 武内啓明 2018 カネヒラ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
形態
- 成魚の形質
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体は側扁して、体高が高い。背鰭・尻鰭の分岐鰭条数はそれぞれ13~14及び、10~12と多く、その分ひれの基底が長いのに加えて、大形の個体では鰭条が伸びるので、全体として鰭が著しく巨大に見える。側線は完全である。
上顎後端に1対の口ひげを持つが、短くて目立たない。肩部の濃青緑色の暗色斑は三角形で顕著である。体側後半の中央に青緑色の縦条が走る。
産卵期の雄では、背側が青緑色に輝き、頭部~体側前半部、背鰭、腹鰭と臀鰭が桃色をしている。産卵行動中の個体の尾びれはかなり黒ずむ。
雌の産卵管は太くて短く、最大伸長時でもかろうじて尻びれ後端に達する程度である。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
- 武内啓明 2018 カネヒラ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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稚魚は背鰭に顕著な楕円形の黒色斑がある。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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琵琶湖では、本種の成魚が夏から秋の産卵期にかけて湖岸の砂泥域に多くなり、その後極端に少なくなることから、成熟の状態に対応したかなりの回遊が推定される。
それ以外の地域では、平野部を流れる大河川の緩流域、それに続く水路、湖沼などに生息する。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
- 武内啓明 2018 カネヒラ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
- 食性
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稚魚や幼魚は主に付着藻類や水草を食べるが、成魚になるとオオカナダモなどの水草を積極的に食べる。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
- 産卵
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秋産卵で、7月~11月(盛期は10月)にイシガイ、オバエボシガイ、マツカサガイに産卵する。
琵琶湖では9月中旬~11月下旬、岡山市の水路で7~11月である。柳川市街地に流れ込む二ツ川ではおそらく5月から完熟を開始して、6月に捕獲された雌の2割程度が完熟卵を保有する小盛期となり、8月にいったん減退したのち10月下旬~11月上旬にかけて最盛期を迎える。最盛期に産卵活動が活発な場所にいる雌は、ほぼ半数が産卵管を伸長させた個体である。琵琶湖では二枚貝のタテボシに多く産卵するが、セタイシガイの多い所ではこちらを選んで卵を産み付ける。
岡山市と北九州の水路では、イシガイに好んで産卵する。ほぼ1週間間隔で数回に分けて産卵し、1回の産卵行動で数十粒の鶏卵形の卵を産みこむ。
ほぼ16℃の水温のもとでは、受精後4日で全長約 3 ㎜の仔魚が孵化する。その後の仔魚の発育は春に産卵するタナゴ類に比べて極端に遅く、貝から泳ぎ出るのは翌年の5月中旬~6月上旬になる。初期仔魚の全体表はうろこ状の微小突起で被われ、その後全長 7 ㎜程度になって突起が退化する頃になると、ちょうどハエの蛆虫のような運動をする。この突起や動きは貝から吐き出されない機能を持つものと考えられている。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
- 武内啓明 2018 カネヒラ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
- その他生態
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染色体数は2n=44である。
稚魚は二ツ川では7月末に最下流部の止水域に集中して見られる。その後、月を追うごとに成長しながら、流れのある上流の貝の多いところに向かって移っていく。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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長良川水系15個体と揖斐川水系2個体、比較用に岡山県産5個体のミトコンドリアDNAの部分塩基配列を決定し、Tabata et al.(2016)の琵琶湖水系産の塩基配列と比較したところ、岐阜県産の個体は琵琶湖水系産とほぼ同じであり、梅津市の1個体は岡山県産と同じであった。
本種はかつて淀川の¨わんど¨にも生息したが、最近では採集されない。本種と同じく秋に産卵するイタセンパラとの間に競合関係があるのかもしれない。
参考文献
- 長田芳和 1989 カネヒラ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 368-369.
- 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .
最終更新日:2020-07-13 ハリリセンボン