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ドンコ(Odontobutis obscura)の分類 Odontobutidae
ドンコ(Odontobutis obscura)の概要 Odontobutis

ドンコ(Odontobutis obscura)

【 学名 】
Odontobutis obscura (Temminck & Schlegel, 1845)

基本情報

大きさ・重さ

・成魚全長 :15 ㎝程度で、最大で約 25 ㎝
・卵の大きさ:長径 5.0 ㎜ 短径 2.0 ㎜

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

分布

富山県・岐阜県・愛知県以西の本州(紀伊半島南部を除く)、四国、九州(薩摩半島と大隅半島を除く)、新潟県越後、茨城県那珂湊、神奈川県道程川・相模川水系;韓国巨済島(明仁ら, 2013, 1347-1608)

関東地方のものは移入と考えられている。(萩原, 2018, 386)

参考文献

  • 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1347-1608.
  • 萩原清司 2018 ドンコ科, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 386.

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生息状況

韓国の巨済島に分布しているものは絶滅寸前。

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和名の解説

「ドンコ」という標準和名をもつのは本種であるが、ほかのハゼ類やカジカ類、海産のチゴダラ類もしばしば「ドンコ」と呼ばれる。

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別名・方言名

ドカン、ウシヌスト、クロドンボ

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分類学的位置付け

かつて朝鮮半島や中国に分布するドンコ属は Odontobutis obscura interrupta(セマダラドンコ)、O. o. potamophila(カラドンコ)、O. o. obscura(ドンコ)、Odontobutis platycephla(コウライドンコ)とされていた。

しかし、Sakaki et al. (1993) はセマダラドンコ、ドンコ、コウライドンコの関係をアロザイム分析によって、それぞれが独立種とし、ドンコを O. obscura 、セマダラドンコを O. interrupta とした。

参考文献

  • 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 2109-2211.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

形態

成魚の形質

頭部が大きく、やや縦扁する。体には黄褐色で、体側に3列程度の暗色横斑が存在する。またドンコ科はハゼ科と異なり、左右の腹鰭が分離する。

繁殖期の雄個体は黒褐色になる。

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稚魚・仔魚・幼魚の形質

仔魚は孵化時から稚魚形をしてドンコの特徴を現しているので、ほかの仔魚と識別できる。

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卵の形質

紡錘形をした大型卵。(道津, 2014, 1219)

一生を淡水で過ごす河川陸封性のドンコの卵は、両側回遊型や湖沼陸封型の川にすむハゼ類と比べて著しく大きい。そして、受精後三週間前後で孵化し、餌を食べ始めるときには鰭もしっかりできており、一目見てそれが何の子であるかがわかるまでになっている。つまり、ほかのハゼ類が海や湖で餌を食べながら成長する分の栄養を、大きな卵黄でまかなってしまうのである。(岩田, 1987, 91)

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地理的変異

西九州、西瀬戸、東瀬戸、山陰・琵琶・伊勢の4つの地域集団に大別される。

参考文献

  • 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 2109-2211.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

似ている種 (間違えやすい種)

後鼻孔から眼窩後方に伸びる孔器列は眼の後方で途切れないことと、鰓蓋部下部の孔器列は離れることから、よく似たイシドンコと区別できる。

参考文献

  • 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1347-1608.

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生態

生息環境

河川中流部の淵やワンド、用水路や池など、流れの緩やかな場所に生息する。植物帯や礫底などの身を隠せる場所を好み、泥環境にはあまり出現しない。

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食性

甲殻類、小魚、水生昆虫などを活発に捕食する。

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ライフサイクル

九州西部における産卵期は4~5月。仔魚は浮遊生活を送ることなく、孵化時から底生生活に入る。6月には成魚が棲む堀川で見られる。

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活動時間帯

夜行性

参考文献

  • 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1347-1608.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

産卵

繁殖期は5~7月ごろで、石や倒木の下などに卵を産み付け、ふ化するまで雄親が保護する。なお、コイ科のムギツクが本種の繁殖巣を利用して托卵することが知られている。

参考文献

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その他生態

水温が 10℃以下になると、体は砂泥に埋めて、眼だけを水中に出して越冬する。

参考文献

  • 伊藤勝敏 2000 扁平で大きな頭, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 160.

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関連情報

研究されているテーマ

セマダラドンコやドンコは、近縁種のコウライドンコと比べて最大体長や雌の最小成熟個体はより小さく、頭部側線感覚管系も幼期の特徴にとどまっている。これらは生殖器官は促進されるが体組織の発育速度は変化が見られないプロジェニシスの特性に当てはまる。ところが、実際には孔器列の完成時期、初期発育速度、黒色色素の出現時期がより早くなり、逆に感覚管の出現が遅くなっている点で、アクセレレイションやネオテニーの性質をも内在しているのである。このようなずれが生じた理由はともかく、ドンコ類では、器官形成のずれがモザイク状に絡みあいながらも、結果的には幼形形成という方向のもとに種分化が進んだと考えることができる。

コウライドンコは、河川の上流域や中流の流れの比較的速い場所に生息している。これに対してセマダラドンコやドンコは、河川の中・下流域の流れのゆるやかなところを好む。特にセマダラドンコは岸辺の水草の間などに底から離れて浮いていることもある。三者間の個体発生の違い、例えば、後二者の方が前者に比べて呼吸の助けをする黄色色素の発現が強く、孵化後遊泳行動をするといったことも、生息場所が上流域よりもゆるやかで溶存酸素量の少ない中・下流域であるという生態的な理由から理解できる。

したがって、生息場所と種分化の関係を総合的に考えると、河川の上流にいるコウライドンコに近い、河川陸封の生活史をもつ祖先型から、流れのゆるい中・下流にすむセマダラドンコやドンコが純淡水魚のままで分化したという結論が導かれる。

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外来種としての影響

道保川では1998年に初めて確認され、現在ではふつうに見られるほど数が増えている。また、近年、道保川の本流の相模川でも確認されており、ミトコンドリアDNAの研究により、中国および四国地方西部からの導入とみられている。

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種・分類一覧