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- シナイモツゴ(Pseudorasbora pumila)について

シナイモツゴ(Pseudorasbora pumila)
【IUCN】近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
【環境省】ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
- 【 学名 】
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Pseudorasbora pumila Miyadi, 1930
基本情報
- 大きさ・重さ
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全長:8 cm
参考文献
- 内山隆 1989 シナイモツゴ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 306.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 分布
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長野県、新潟県、神奈川県以北の本州に分布しており、日本固有種である。
参考文献
- 細谷和海 2018 シナイモツゴ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 106.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 和名の解説
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シナイモツゴのシナイは、基産地である宮城県品井沼の名に由来する。
参考文献
- 内山隆 1989 シナイモツゴ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 306.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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コイ目 コイ科 ヒガイ亜科 モツゴ属
参考文献
- 内山隆 1989 シナイモツゴ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 306.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 人間との関係
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1916年に宮城県品井沼で発見され、新種として記載された(Miyadi, 1930)。
モツゴの分布拡大と並行して減少していることが明らかであり、本亜種の基産地であった宮城県品井沼においてもモツゴと置き換わるかたちで姿を消した。このようなシナイモツゴの絶滅現象は東北地方各地で見られる。
自然分布域ではオオクチバスなどの外来種による食害や、侵入種モツゴ雄による雌の独占、平地開発、圃場整備、里山の荒廃により激減している。
シナイモツゴの人工繁殖技術は、高橋ら(1995)によって開発されている。繁殖期である5月から、塩化ビニルの管やプラスチック製の植木鉢などの産卵基質を入れて飼育すると、容易に産卵する(シナイモツゴ郷の会,2004)。また、産着卵は雄親の保護がなくとも問題なく孵化し、クロレラとミジンコの餌料が豊富であれば高い生存率と成長率を示す。
参考文献
- 細谷和海 2018 シナイモツゴ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 106.
- 内山隆 1989 シナイモツゴ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 306.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
形態
- 成魚の形質
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側線は不完全であり、ふつう前方の3~5枚の側線有孔鱗が見られることが多い。体側の黒い縦条はモツゴのそれよりもむしろはっきりとしている。モツゴに比べ、頭部が大きく尾柄が短いので、全体としてずんぐりとした寸詰まりの印象を与える。
また、金属光沢が少ないために、くすんだ茶色もしくは薄黄色っぽく見える。口は受け口であるが、モツゴよりも下あごが上にせり上がるので、この特徴がさらに顕著である。
産卵期の雄ではモツゴと同じく全身が黒くなり、黒い縦条は消失する。
参考文献
- 細谷和海 2018 シナイモツゴ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 106.
- 内山隆 1989 シナイモツゴ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 306.
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生態
- 生息環境
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本亜種が多数生息しているのは泥深い池沼で、ヒシやジュンサイなどの植物が水面を覆い、水は緑っぽく濁っているところが多い。
コンクリート護岸など人工的に手が加えられたり、コイやフナなどの放流が積極的に行われている場所などでは減少する傾向にある。これは環境の変化に弱いことと、コイなどの放流に伴って混入されるモツゴの影響によるものであろうと考えられる。
参考文献
- 内山隆 1989 シナイモツゴ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 306.
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- ライフサイクル
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受精卵は、およそ10日ほどで、コイ科の中ではやや発生の進んだ状態で孵化する(中村,1969)。
孵化後2~3日もすると、微小な甲殻類を捕食するようになる。
孵化後1ヵ月で 15 ㎜程度に成長し、この頃には吻端が伸びてやや上を向いて尖り、モツゴ属の特徴が現れる。
孵化後1年が経過すると、体長が数センチ以上に成長する。繁殖期の後期に生まれた個体では、成熟までに2年を要する個体が観察されるものの、シナイモツゴ、モツゴともに孵化後1年が経過すると、多くの個体が成熟する(中村,1969)。
また、雄は雌よりも大型になる。
寿命は両種とも2年から3年と推定されている(小西,未発表)。
参考文献
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン
- 産卵
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産卵期は4~7月で、産卵行動はモツゴと大差はない。この頃のシナイモツゴの雄は、全身に真っ黒な婚姻色と、頭部に追星と呼ばれる皮膚の硬化した小さなトゲのようなものをいくつも発現させる。次いで、植物の茎、竹木類、石や貝など、雌に卵を産み付けさせるための基質を中心に、強いなわばりを形成する。この時期の雄は攻撃的で、なわばりに入ってきた他個体を攻撃する(Konishi and Takata,2004b)。
雌は1シーズンに50粒から400粒ほどの卵を数回にわたって産卵する。基本的にペア産卵をし、産卵は早朝に行われる。雄は稚魚が孵化するまで産着卵を保護する習性をもつ。長い繁殖期間を通して雌、雄ともに複数の個体と産卵を行う。そのため、産卵基質では発生段階の異なる複数の卵塊が観察されることが多い。
参考文献
- 内山隆 1989 シナイモツゴ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 306.
最終更新日:2020-08-28 ハリリセンボン