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シシャモ(Spirinchus lanceolatus)の分類 Osmeridae
シシャモ(Spirinchus lanceolatus)の概要 Spirinchus

シシャモ(Spirinchus lanceolatus)

絶滅の恐れのある地域個体群 (LP)

【環境省】地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの

【 学名 】
Spirinchus lanceolatus (Hikita, 1913)

基本情報

大きさ・重さ

・成魚体長: 11~14 ㎝(雄は雌より 1.5 ㎝ほど大きい)
・仔魚全長: 9 ㎜ (孵化仔魚)
・卵の大きさ:直径 1.5 ㎜

参考文献

  • 細谷和海・南卓志・沖山宗雄 2014 シシャモ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. 179.
  • 細谷和海 2013 キュウリウオ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 358-359.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

分布

北海道の太平洋沿岸、日本固有種

参考文献

  • 細谷和海 2013 キュウリウオ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 358-359.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

生息状況

鵡川を主な産卵河川とするシシャモ(鵡川系シシャモ資源)の資源量は、 1990年に危機的な状態にまで減少したが、その後、 4年間の禁漁を初めとした資源回復に向けた様々な取り組みにより、 1995~2010年の間は 100~200 tの漁獲を支える、比較的安定した状態が保たれていた。
ところが2010年代に入ると、 資源量は再び減少傾向を示すようになり、
2015年の漁獲量は過去に禁漁を行ったときとほぼ同じ水準( 12 t)にまで減少した。2016年には 90 t台に回復は見せてはいるものの、まだまだ予断を許さない状況である。

参考文献

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

保全の取り組み

新釧路川では、ししゃもこぎ網漁業の開始された昭和32年前後から人工ふ化放流事業が試みられている。以前は人工採卵を行いシュロ皮やグラス・ウールのふ化盆を使用していたが、現在では捕獲した親魚をふ化施設内の水槽に収容し、産卵床で自然産卵させる方法でふ化放流が行われている。
また、釧路水産試験場がシシャモ資源の漁況予測を行い、遡上予想日から漁業者自ら操業終了日を決定することで、産卵親魚の確保に努めている。

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

和名の解説

アイヌ伝説による名で、アイヌ語のスス・ハム(ヤナギの葉)がなまったもの。ナガバヤナギの葉に似ることから。

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

別名・方言名

スサモ、スシャモ(北海道厚岸)

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

人間との関係

かつて北海道の太平洋に面した河川には産卵期のシシャモがおびただしいほど群れ、アイヌ伝説には、柳の葉がシシャモに変身したという話がいくつかある。

神の国の柳の葉が誤って下界の川に落ちたのを、神が、そのまま朽ちるのはかわいそうだと、魚に変えて地上に永遠に残したという話。何度も飢饉に襲われた人々を哀れに思った神が、柳の葉に食料の魂を入れて流し、それがシシャモになったという話などである。

かつて鵡川では川に簗をかけてシシャモをせき止め、丸木舟の中にすくいあげたが、最盛期には川の中を歩いても足裏がそこに触れず、シシャモを踏み潰すほどだったという。しかし、一尾も粗末にせず、漁中は神魚を迎える川で洗濯をしたり、汚物を流すことは厳禁だった。とれたシシャモは柳の枝やヨモギの茎に刺して炉の上で燻製にして貯蔵した。またルイベにし、食べるときに火であぶって解凍した。

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

形態

成魚の形質

体の鱗は大きく体側の縦列鱗数は59~70。尻鰭の外縁はまるく、側線は不完全。胸鰭は10~12軟条。
繁殖期の雄には体側鱗の先端が伸長しフェルト状になる、胸鰭と臀鰭が伸長する、体が黒くなるなど二次性徴が出る。

参考文献

  • 猿渡敏郎 2018 キュウリウオ科, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 124-125.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

稚魚・仔魚・幼魚の形質

孵化仔魚(全長 9 ㎜ )では体が著しく伸長する。垂直鰭膜が連続し、体背側部前方から肛門直後部まで、および体幅側部の腹部前方から肛門直前部まで続く。筋節数は42+17=59。卵黄は球状で第3~13筋節下に存在し、油球を1つ持つ。
孵化後5日(全長 10 ㎜ )の頭長は体長の14.1%。筋節数は42+19=61と増加する。黒色素胞は胸部下部に2対、卵黄上には多数が散在し、腹側鰭底部では1列をなし、肛門上部前部に2対、尾柄部に4対ある。

参考文献

  • 細谷和海・南卓志・沖山宗雄 2014 シシャモ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. 179.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

地理的変異

襟裳岬を境に、太平洋側西部海域と東部海域における系統群の相違が示唆されている。

参考文献

  • 細谷和海 2015 シシャモ, 細谷和海(監修) 細谷和海(編) 山溪ハンディ図鑑15 日本の淡水魚. 山と渓谷社. 221.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

生態

生息環境

海域沿岸部の水深 20~30 m付近

参考文献

  • 細谷和海 2013 キュウリウオ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 358-359.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

食性

動物プランクトン、小型の甲殻類、ゴカイなどを食べる。

参考文献

  • 細谷和海 2015 シシャモ, 細谷和海(監修) 細谷和海(編) 山溪ハンディ図鑑15 日本の淡水魚. 山と渓谷社. 221.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

ライフサイクル

10~11月に産卵のために河川を遡上し、河口から 1~10 ㎞上流の砂礫域で直径 1.5 ㎜の沈性付着卵を産む。卵で越冬、翌年4~5月に孵化。仔魚は沿岸域へ降下し海で生活する。孵化後、1年半で多くは体長 11~14 ㎝になり成熟する。

参考文献

  • 猿渡敏郎 2018 キュウリウオ科, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 124-125.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

生殖行動

成熟したシシャモのオスの精巣質量は、体重の1%程度に過ぎない。この数字が大きいか小さいかは、何と比べるかによって違ってくるが、たとえばアユのオスでは生殖腺指数が11%に達することを考えると、シシャモのオスの生殖腺に対する投資量は、決して大きいわけではない。どうやらシシャモのオスは成長により多くのエネルギーを振り分けているようである。繁殖期のシシャモの平均体長は、雌が 12 ㎝前後であるのに対して、オスは 13.5 ㎝に達して雌よりも 1.5 ㎝大きいのである。

雌雄がペアを組んで産卵するときは、オスの体の大きさが繁殖の成功を左右することがある。体の大きいオスは、メスを獲得するうえで有利にふるまえることが多いからである。水槽観察によると、シシャモはペア産卵を行うようだ。シシャモのオスの臀鰭は、二次性徴を発現して、メスよりもずっと大きくなる。オスはこの臀鰭でメスの生殖孔をおおい、受精を完了する。精巣が小さいと、生産される精子の量も限られる。放精の際のオスのしぐさは、少ない精子で受精率を稼ぐことに貢献しているのかもしれない。

参考文献

  • 井口恵一郎 2000 キュウリウオ科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 45.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

産卵

シシャモのメスは数回に分けて産卵し、放出された卵は受精して川底の砂礫に付着する。産卵は、11月上旬から12月上旬にかけて、秋も終わり冬に入るころに行われる。これは、多くのキュウリウオ科魚類の産卵期が、春から初夏にかけてに集中しているのとは対照的である。

参考文献

  • 井口恵一郎 2000 キュウリウオ科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 45.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

関連情報

漁獲方法

10~11月にシシャモ桁網で漁獲される。

参考文献

  • 猿渡敏郎 2018 キュウリウオ科, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 124-125.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

味や食感

水揚げ直後のものは刺身や、ルイベにする。一般には塩焼き、天ぷら、フライなどにすることが多い。産卵間近の雌の卵巣が好まれ、「子持ちシシャモ」として生干しや丸干しなどにされる。旬は秋。
近年は漁獲量が減少し、多量に出回っている「シシャモの干物」はほとんどがカラフトシシャモである。

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

その他

シシャモは漁獲量が少なく全国的にはほとんど流通していない。
現在シシャモとして市場に出回っているのは、北部太平洋沿岸に分布する Mallotus のカペリンか、同属の大西洋カペリンである。これらはうろこが非常に細かいので、シシャモとは簡単に見分けがつく。

参考文献

  • 木村義志 2009 シシャモ, 木村義志(監修) 日本の淡水魚 増補改訂フィールドベスト図鑑. 学研プラス. 54-55.

最終更新日:2020-05-01 ひろりこん

種・分類一覧