- 解説一覧
- Oncorhynchus rhodurusについて

目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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全長:40 cm
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- 分布
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琵琶湖にのみ自然分布している日本固有の亜種である。現在は長野県木崎湖、芦ノ湖、日光中禅寺湖に移植されている。
中禅寺湖の¨ホンマス¨は、ビワマスといわれている。
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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地方名:マス・アメノウオ(滋賀県)
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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サケ目 サケ科 サケ亜科 サケ属
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ビワマス, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 139.
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- 人間との関係
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現在河川でのビワマスは、稚魚も、産卵のために遡上する成魚も、ともに全面禁漁である。将来を見越して、遡上する成魚の一部が人工採卵、孵化、放流のために河口で捕獲され、知内にある1ヵ所の孵化場で種苗が生産されている。しかし1ヵ所で集中して種苗生産するのは、ウイルス性の伝染病があっという間に広がるなど、危険性が高い。
現在の人工種苗生産の方法は、ときには人工増殖ならぬ人工絶滅に荷担する場合もある。
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
形態
- 成魚の形質
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サツキマスに酷似するが、"朱色"は成魚の場合完全に消失している。側線上部および下部の横列鱗数がサツキマスやアマゴに比べて明らかに多いとの記載もある。
幽門垂数はビワマスで56.9±6.6で、サツキマスの48.3±5.9、新潟産のサクラマスの48.3±6.7に比べると、ビワマスの方が10本近く多い。
頭長に対する眼径の比は、ビワマスで0.169±0.028、サツキマスで0.134±0.011、サクラマスで0.100±0.013と、ビワマスの眼径がほかの2者に比べて相対的に大きい。このためビワマスは顔つきが優しく感じられる。漁師は、ビワマスと最近琵琶湖で増加しているアマゴの降湖個体とを即座に判別する。
産卵期は雌雄とも東部が黒くなり、体は赤紫に暗緑色の縞模様、雄の吻は尖り口は鉤状となる。
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ビワマス, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 139.
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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河川生活期の稚魚は¨サツキ¨と呼ばれ、アマゴよりも淡い橙色の斑点が、しかも側線付近に集中して存在するが、降湖とともに消失する。湖内の銀白色個体は吻がやや丸く、朱点は消え、背鰭の先端は黒くない。
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ビワマス, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 139.
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
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生態
- 食性
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河川生活期の稚魚¨サツキ¨は、小型の水生昆虫や陸性昆虫を捕食し、湖中の未成魚はヨコエビなどの甲殻類を、成魚は湖中のアユやイサザなどの魚類とヨコエビを食べる。
夏、湖中での遊泳層は水温15℃付近、すなわち水深 15~20 mの躍層(水温が急激に低下層)直下で、捕食時にのみ水温20~25℃の表層に出撃し、群れアユを捕食するらしい。
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
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- ライフサイクル
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川の砂礫中で孵化した仔魚は、卵黄吸収後の2~4月に尾叉長 2.8 cmで川に浮上して泳ぎ出し、流れの緩い川岸などに生息する。1ヵ月余りで尾叉長 6 cm以上に成長し、瀬に出て流下する水生昆虫などを活発に食べる。尾叉長 5 cm以上で体側に朱点が現れ、成長とともに増え、多いもので15個ほどになる。
4~7月に尾叉長 6~8 cmで降雨による増水時に琵琶湖へ降下する。降下時期から体の銀白色化が始まり、降湖後しばらくして体側のパーマークが消えるが、降海種の銀化(スモルト化)とは異なり、海水への適応能力の上昇はない。
琵琶湖の沖合には水深 15 m以下に周年水温20℃以下の水域が広がり、湖へ降下した幼魚は、ここで水深70mまでの層に移動して湖中生活を始める。
最初は琵琶湖固有種のアナンデールヨコエビを食べるが、尾叉長 17 cmを超えるとアユなどの魚類を食べて、成長が早くなる。銀白色化に伴って、尾叉長 22 cm以上で体側の朱点は完全に消失する。
湖中の深い層を遊泳しながら成長し、3年後に尾叉長 35~45 cm、5年後に 45~55 cmに成長する。雌雄とも3~5歳で成熟する。成熟した個体は8月頃から婚姻色になり、9~11月に川の中上流部まで遡上、雌が直径約 2 mの産卵床をつくり、雌雄ペアで産卵を行う。産卵後は死亡する。
幼魚の一部の雄(約5%)は琵琶湖へ降下せず、夏以降も河川に残留、その年の秋に尾叉長 11 cmで成熟して産卵に加わり、産卵後は死亡しない。また6~7月に河川に遡上する個体がいる。
1年で 20 cm、2年で 30 cm、3年で 40 cm、4年で 40~50 cmに成長するが、サツキマスやサクラマスに比べて成長は遅い。
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ビワマス, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 139.
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- 産卵
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直径 50 cm程度の産卵床を雌が掘るという産卵行動は、ほかのサケ・マスと同様である。
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- その他生態
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9月~11月上旬にかけて、特に雨のあとの増水時に、産卵のため琵琶湖より遡上する。その上限は安曇川では市場付近、愛知川では水源寺付近で、これより上流すなわちアマゴ域までは遡上していなかったと伝えられている。
低温の躍層下で休息するのがふつうで、琵琶湖の水温が上下で夏に大きく違うことを巧みに利用して生活している。
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
関連情報
- 漁獲方法
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刺網やトローリングで漁獲される。
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ビワマス, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 139.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- 味や食感
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6~7月の成魚は脂がのり、刺身、塩焼き、煮つけ、マリネ、フライにして究極至高の味である。ただし、琵琶湖の富栄養化と汚染の臭いが、微かに喉の奥に感じられる。
参考文献
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン
- その他
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ビワマスは従来アマゴの降湖個体と考えられていたが、タンパク質組成などからいうと、ほか2亜種よりもこれが特に離れている。川を下る時期、上る時期も全く違う。
中禅寺湖のホンマスは130年前に移植されたビワマスとサクラマス由来だが、ビワマスの特質を多くもつ。
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ビワマス, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 139.
- 古川哲夫 1989 ビワマス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 180-181.
最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン