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ニホンウナギ(Anguilla japonica)の分類 Anguillidae
ニホンウナギ(Anguilla japonica)の概要 Anguilla

ニホンウナギ(Anguilla japonica)

準危急種 (EN)

【IUCN】近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

絶滅危惧IB類 (EN)

【環境省】IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

【 学名 】
Anguilla japonica Temminck & Schlegel, 1846

基本情報

大きさ・重さ

・成魚全長:全長 60 ㎝
・仔魚全長:約 5 ㎜(孵化直後)
・卵の大きさ: 1.49~1.71 ㎜(平均 1.61 ㎜)

参考文献

  • 波戸岡清峰 2013 ニホンウナギ, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索 全種の同定 第3版. 東海大学出版会. 240.
  • 望岡典隆・多部田修 2014 ニホンウナギ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. 14.
分布

北海道太平洋側~三陸地方北部(少ない)、青森県~福井県(少ない)、伊豆諸島、小笠原諸島(稀)、三陸地方南部~紀伊半島、近畿地方~中国地方、島根県隠岐、四国、対馬、五島列島、九州、屋久島、琉球列島;朝鮮半島全域(西部と南部に多い)、台湾、澎湖諸島、中国沿岸の各省、四川省成都・重慶~陝西省南部の揚子江流域、海南島

参考文献

  • 波戸岡清峰 2013 ニホンウナギ, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索 全種の同定 第3版. 東海大学出版会. 240.
生息状況

ニホンウナギは1970年頃から減少し始め、2012年現在では1960年代の資源量の5%近くまで減少してしまった。減少の原因として、シラスウナギと銀ウナギの乱獲、河川環境の悪化、海洋環境の変化などが挙げられている。つまり、人間がウナギを過剰に採り、汚染や河川工事でウナギのすむ環境を壊した結果である。また、海洋環境の変化は、遠い海のかなたの事象で一見人間活動とは無関係に見えるが、これもやはり遠因は人間活動にある。地球温暖化、気候変動など、人間の活動と無関係とはいえない地球規模の環境変動が、海流や海水温に影響を及ぼし、これがウナギ資源を大きく変動させる可能性のあることも次第にわかってきている。

参考文献

  • 黒木真理 2012 ウナギ博物学のすすめ, 黒木真理(著) 黒木真理(編) ウナギの博物誌. 化学同人. 7-15.
保全の取り組み

平成26年9月に行われた第7回「ウナギの国際的資源保護・管理に係る非公式協議(政府間協議)」にて、中国、台湾、韓国および日本の4か国は以下を内容とする共同声明を発表した。

(1)ニホンウナギの池入数量を直近の数量から20%削減し、異種ウナギについては近年(直近3か年)の水準より増やさないための全ての可能な措置をとる。 (2)保存管理措置の効果的な実施を確保するため、各1つの養鰻管理団体を設立する。それぞれの養鰻管理団体が集まり、 国際的な養鰻管理組織を設立する。
(3)法的拘束力のある枠組みの設立の可能性について検討する。

また、(2)を踏まえた国内措置として、平成26年10月に日本の養鰻管理団体である「一般社団法人 全日本持続的養鰻機構」が設立された。さらに、各国・地域の養鰻管理団体が集まり、民間ベースでウナギの資源管理について話し合う国際的な団体「持続可能な養鰻同盟(ASEA)」も設立されている。

平成30年7月に開催されたワシントン条約第30回動物委員会では、ニホンウナギを含むウナギ類の持続可能な取引の確保に関する勧告案が取りまとめられた。その内容の概要は以下の通りである。

ヨーロッパウナギ以外のウナギ類が生息する国は、以下を実施することが推奨される。
①資源を共有する関係国・地域と協力し、共通の管理目標の設定や、生物学的情報の理解の改善等を行うこと。
②資源状況のモニタリング制度を導入すること。
③貿易時のトレーサビリティを改善すること。
④上記取組の進捗状況を、第31回及び第32回の動物委員会に報告すること。

日本国内に目を移すと、平成26年11月1日に、ウナギ養殖業を内水面漁業振興法に基づく届出養殖業とし、農林水産大臣への届出や池入数量等の報告を義務付けが行われている。
平成27年6月1日には、うなぎ養殖業を内水面漁業振興法に基づく農林水産大臣の指定養殖業とし、稚魚の池入数量を法律に基づき制限することで、養殖業者毎の池入数量の上限が設定された。

水産庁はニホンウナギの資源管理とシラスウナギ採捕量を把握するために、以下のような対策などをとるよう各都道府県に助言している。
・ 現場での監視や写真付き証明書の発行、ワッペンや帽子等の着用の義務化等の密漁対策を講じること
・ 正しい報告を行わなかった者に対しては、翌年漁期の許可を行わないことを原則とすること
・ 採捕者数について管理が行き届く範囲内の妥当な人数とすること
・ 都道府県内においてシラスウナギの安定的な採捕が見込まれる県においては、採捕数量の上限を当該都道府県下の養殖場の池入れに必要な数量を満たすものとすること
・ 都道府県において指定された出荷先への販売価格を設定している場合において、その設定価格が市場価格に比べて低いときには、再点検を行うこと

河川から海に下る親ウナギの資源保護も行われている。例えば、主要な養鰻県においては、産卵に向かうために河川から海に下る時期(概ね10月~翌年3月)のウナギの採捕禁止又は自粛等に取り組むことが決定されている。
他には、ウナギの生息環境改善のため、ウナギの住み処となるとともに、餌となる生物(エビ類など)を増やす効果が期待される石倉(石を積み上げて網で囲った工作物)を設置する取組が始まっている。

ニホンウナギの完全養殖へ向けた動きも出てきている。平成22年には卵から親魚まで育て、親魚から得た卵をふ化させることに成功し、平成28年には計画的な採卵と年間数千尾のシラスウナギの生産が可能になった。新たな初期飼料や飼育方法や、シラスウナギの大量生産を加速させるシステムの開発が続いている。

参考文献

和名の解説

この種の標準和名は2010年に他種のウナギと区別するためにニホンウナギに改名された。

「ウナギ」の名前の由来はいくつか仮説がある。
①古語「ナムギ」の転。これには諸説あり、皮を「ムク」ことから/細長い体が家屋の棟木(ナムキ)に似ることから/胸が黄色いことから/ハムノコ(鱧の子)が縮約されて転じた/ムは身を表す語、ナギは長いものを表し、ヘビ類の総称/「空しき義」のシ音が欠けたもの/胸に鰓が開いているので「ナムアキ」といったことから、など。
②「ウヲナガキ」(魚長)の意。
③ウネルからの転。「キ」はさかなを表す接尾語。

参考文献

  • 波戸岡清峰 2013 ウナギ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索 全種の同定 第3版. 東海大学出版会. 1783.
  • 望月賢二 2005 ウナギ, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 80-82.
別名・方言名

カヨコ(千葉)、エドマエ、カニクライ(東京)、スベラ(長野)、チュウ(浜名湖)、アオバイ(岡山)、リンズウナギ(高知)、ヌチャウナギ、ヤアクヮヤ(沖縄)、タンネ・チェブ(北海道、アイヌ語で「長い魚」の意)

参考文献

  • 望月賢二 2005 ウナギ, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 80-82.
人間との関係

岐阜県の長良川支流の粥川のウナギ生息地は国の天然記念物に指定され、捕獲が禁じられているが、それは村上天皇時代の藤原高光による魔物退治の説話が伝えられているためである。神の助けによって与えられた矢で魔物を射殺することができたため、授かった矢とともにウナギ数十匹を川に放流し、今後このウナギはとらないことを宣言したといわれている。

日本最古の歌集『萬葉集』にあるウナギの歌はとても有名で、編者のひとりである大友家持は次の二首を詠んでいる。

石麻呂に 吾(われ)物申す 夏痩せに 良しといふものぞ 武奈木(むなぎ)漁り(とり)食せ(めせ)
痩す痩すも 生けらばあらむを はたやはた 武奈木(むなぎ)を漁る(とる)と 川に流るな

「武奈木」は、今でいうウナギ(鰻)を指す。これらの歌からも推測されるように、奈良時代にはすでにウナギは夏バテによく効く滋養強壮の食べ物として広く認識されていたらしい。

一年で最も暑い時期といわれる夏の土用の丑の日には、うなぎの蒲焼きを食べる習慣が江戸時代から続いており、かば焼きは世界でもっとも文化に根付いているうなぎ料理といえる。現在でも年間ウナギ消費量のおよそ三割が夏に消費されているほどで、日本国内において一つの魚種のみを取り扱って営んでいる料理屋がこれほど多く、かつ伝統的に引き継がれているのは、おそらくこのウナギの蒲焼き屋だけである。「串打ち三年、裂き八年、焼きは一生」という言葉が表すように、蒲焼き屋の熟練の職人技が脈々と受け継がれ、その料理を愛する人々がいて、ウナギの食文化が成り立っている。

また、ウナギには多くの言い伝えや慣用句が生まれ、様々な工芸品や絵画のモチーフにもなっている。例えば、日本語では急激に拡大して止まることのないさまを「うなぎ登り」といい、間口が狭くて奥の深い家屋や店舗を「うなぎの寝床」と表現する。また落語には、「鰻屋」、「鰻の幇間(たいこ)」、「鰻谷」、「素人鰻」、「月宮殿」、「後生鰻」など、ウナギを題材にした演目がいくつもある。いずれもつかみどころがなく、それでいて滑稽味のあるウナギの動きや、思わず生唾を飲み込んでしまうほどの美味しさに起源しているようだ。

こうした文化的事例は、いかにウナギが私たちの暮らしに、自然な形で溶け込んでいるかを示しているといえるだろう。

参考文献

  • 黒木真理 2012 ウナギ博物学のすすめ, 黒木真理(著) 黒木真理(編) ウナギの博物誌. 化学同人. 7-15.

形態

成魚の形質

体は細長い円筒形。体の背側は褐色または灰緑色、腹側は薄卵色をしている。吻は丸く、下顎は上顎より突き出る。背鰭と臀鰭の基底は長く、尾鰭と連続する。胸鰭は大きく団扇状。腹鰭は無い。体は粘液に被われ、鱗は小判上で皮膚に埋没する。

・背鰭起部は肛門上方より、かなり前にあること
・体の背方は暗色、腹方は白色で、まだら状の斑紋はないこと
・背鰭起部は胸鰭後端と肛門の中間点か、それより後方にあること
・脊椎骨数は112~119であること
などから、他種と区別される。

参考文献

  • 黒木真理 2018 ニホンウナギ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. 76-77.
  • 波戸岡清峰 2013 ニホンウナギ, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索 全種の同定 第3版. 東海大学出版会. 240.
稚魚・仔魚・幼魚の形質

筋節数が102~119で、体側に黒色素胞がないのはウナギ科葉形仔魚の特徴である。
孵化直後の仔魚には眼に黒色素胞は見られない。
前期葉形仔魚期には少数の長い針状歯を持つ。尾鰭鰭膜と体幹部末端表面に点状の小黒色素胞がある。
葉形仔魚期に移行すると歯は一般のウナギ目仔魚型になり、全長約 30 ㎜を越えると尾鰭の色素は消失し、眼の脈絡膜を除いて色素沈着はない。

参考文献

  • 望岡典隆・多部田修 2014 ニホンウナギ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. 14.
卵の形質

分離浮性卵。真球形で油球は一個。卵膜構造に特殊構造はない。囲卵腔は広い。卵黄に亀裂がある。卵期の胚体上に特殊構造はない。卵径 1.3~1.6 ㎜。油球径 0.30~0.35 ㎜。

参考文献

  • 池田知司・平井明夫・田端重夫・大西庸介・水戸敏 2014 表1 魚卵および孵化仔魚の外部形態の特徴, 池田知司、平井明夫、田端重夫、大西庸介、水戸敏(著) 魚卵の解説と検索. 東海大学出版会. 7.

生態

食性

レプトセファルス( Leptocephalus )は尾虫類を食べることが知られている。
黄ウナギになると、小魚、甲殻類、昆虫類などを捕食する。

参考文献

  • 望岡典隆 2012 大回遊の立役者、レプトセファルス, 黒木真理(著) 黒木真理(編) ウナギの博物誌. 化学同人. 56-73.
  • 黒木真理 2018 ニホンウナギ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. 76-77.
ライフサイクル

生活史は降河回遊性。淡水域・汽水域で成長し、成熟が始まると降海して産卵する。
仔魚はレプトセファルスと呼ばれ、海流によって受動輸送され、成育場近くの海域で変態する。吻端と尾部後端から細くなり、肛門が前方に移動、細長い円筒状の「シラスウナギ」(稚魚)に変態して、接岸する。変態期とシラスウナギ初期には摂餌しない。
シラスウナギは神経頭蓋上部から黒色素胞が発達し、吻部、尾部後端、背鰭基底から体全体へと広がり、やがて筋節に沿う黒色素胞が不明瞭になると「クロコ」となる。さらに、腹腔内へのグアニン色素の定着が完了すると「黄ウナギ」となる。このあと性分化するが、ニホンウナギでは全長約 30 ㎝で起こる。
数~数十年かけて成長し、成熟が始まると体は銀化し、背側は暗褐色、腹側はグアニン色素の沈着で金属光沢を呈し、「銀ウナギ」となる。銀化に伴い眼は大きくなり、胸鰭は伸びて黒化し、消化管壁は薄くなる。

太平洋のマリアナ諸島西方海域の水深 150 m前後で孵化、レプトセファルスは北赤道海流と黒潮により4~6か月で東アジアの成育場まで運ばれる。
全長 5.5~6 ㎝でシラスウナギへ変態、日本では11~4月に沖縄県~岩手県の太平洋沿岸(稀に青森県、北海道南部)の河口域に接岸。水温上昇の頃シラスウナギ後期になり摂餌行動が活発化、クロコ(全長約 6.5 ㎝)になって河川や湖沼の淡水域へ遡上する。一部は河口などの汽水域、沿岸域にとどまる。
全長約 9 ㎝で黄ウナギとなり、数年から十数年かけて成長。成熟が始まり銀化した銀ウナギは9~11月に降河し、産卵場のマリアナ諸島西方海域まで回遊して産卵する。

参考文献

  • 黒木真理 2018 ニホンウナギ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. 76-77.
活動時間帯

日中は岩の隙間や石の下に潜み、夜になると活動をはじめる。

参考文献

  • 望月賢二 2005 ウナギ, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 80-82.
産卵

産卵の最盛期は5~7月、透明な直径約 1.6 ㎜の分離浮性卵を産む。

参考文献

  • 黒木真理 2018 ニホンウナギ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. 76-77.

関連情報

漁獲方法

冬になると、河口域にやってくるシラスウナギを、波打ち際や河岸で光を照らしてて網を使って掬う漁が行われる。
シラスウナギが成長し、川や湖沼の岩の隙間や砂場に隠れているウナギは、餌や人口の棲み処を使って誘引して捕らえる。たとえば、細長い棒の先に細い鎌を使って隠れたウナギを引っかけて取るウナギ掻きや、河口近くの浅瀬に石を積み、一晩おいて翌朝石の隙間に入ったウナギを採る石蔵漁は、底生生活に入ったウナギを採るための伝統的な漁法。
晩秋から初冬になって成熟が始まると、川から海へ下ろうとする銀ウナギは餌を食べなくなる。そこで、こうしたウナギは待網や定置網など、おもに移動経路を遮断するように設置した漁具を使って採集される。石を積み上げて川の水を一点に集めてその最後の部分に待網を仕掛けたり、胴尻と呼ばれる大きな竹籠を設置したりして、銀ウナギを採ることもある。かつては日本全国にあったこうした伝統漁法は、今ではあまり見られなくなってしまった。

参考文献

  • 黒木真理 2012 ウナギ博物学のすすめ, 黒木真理(著) 黒木真理(編) ウナギの博物誌. 化学同人. 7-15.

種・分類一覧