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オオクチバス(Micropterus salmoides)の分類 Centrarchidae
オオクチバス(Micropterus salmoides)の概要 Micropterus

オオクチバス(Micropterus salmoides)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Micropterus salmoides (Lacepède, 1802)

基本情報

大きさ・重さ

全長:30~50 cm

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

分布

日本全国に分布する。

自然分布域は、カナダのケベック州南部とオンタリオ州を北限、ミシシッピ峡谷を西限とする北アメリカ南東部である。しかし、現在では移植の結果、アメリカのほぼ全域のみならず、世界各地に分布するようになった。

アメリカ以外でこれまでに分布の明らかになった国としては、オーストラリア、フィンランド、スウェーデン、ハンガリー、ソビエト連邦、ドイツ、フランス、イタリア、チェコスロバキア、ベルギー、オランダ、スペイン、イギリス、フィリピン、キューバ、南アフリカ、西カメルーン、ナタール、マダガスカルなどが挙げられる。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

別名・方言名

地方名:ブラックバス・バス(日本各地)

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

分類学的位置付け

スズキ目 サンフィッシュ科 オオクチバス属

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

人間との関係

日本へは、1925年に箱根の実業家赤星鉄馬氏によって、アメリカ合衆国のオレゴン州から神奈川県芦ノ湖へ移入されたのが最初である。本亜種はその食性ゆえに、芦ノ湖から外部への持ち出しが禁止されていたにも関わらず、近年野放図な放流によって各地へ移植され、今ではほとんど日本全国に分布するようになった。

本種は北米大陸東部に広く分布する名義タイプ亜種(ノーザンバス)とフロリダ半島に分布するフロリダ半島産亜種(フロリダバス)に分けられるが、日本に広く分布するのはノーザンバスである。ただし、1980年代後半に国内のいくつかのダム湖にフロリダバスが放流され、その後、琵琶湖においてもフロリダバスとの雑種化が進行した。現在、琵琶湖のオオクチバスはノーザンバスとフロリダバスの雑種になっている。

北アメリカ原産で、原産地では地方によってグリーンバス green bass、グリーントラウト green trout、オスウェゴバス Oswego bass、ブラックバス black bass、ノーザンブラックバス northern black bass、リンサイドバス linside bass などと呼ばれ、釣りの世界では最も重要な魚種の1つである。

一般に本亜種が移植された湖沼では、生態系が大きく改変される。全国の湖沼での調査によれば、本亜種の移植によってエビ類やワカサギ、トウヨシノボリ、モツゴなどが姿を消した水域が多い。
琵琶湖でオオクチバスが発見されたのは1974年のことであるが、現在では従来湖岸に多く生息していたタイリクバラタナゴ、ヤリタナゴ、シロヒレタビラ、イチモンジタナゴなどのタナゴ類とモツゴなどはほとんど完全に姿を消し、ホンモロコ、トウヨシノボリ、ワタカ、ビワヒガイ、スジエビ、テナガエビなどの減少も著しい。湖岸でかろうじて姿が見かけられるのは、オイカワとカネヒラの2種ぐらいである。

本種の在来生態系への影響の大きさは、さまざまな研究によって示されており、岐阜県内においてもため池の水を抜いて本種を駆除することで、ウシモツゴやトウカイヨシノボリなどの希少魚の生息数が回復した事例がある(向井, 2016b)。

逆に増加しているものとしては、ブルーギルが挙げられる。ブルーギルは、湖岸に多数生息しているにも関わらず、オオクチバスにはそれほど捕食されていないようである。琵琶湖漁業における最重要魚種であるアユについては、今のところ著しい減少は見られない。これは、アユの主たる生息域が沖合であるため、オオクチバスの主生息地と重ならないからであると考えられる。

里山環境における水辺の在来生態系復元のためには、本種の駆除が必要であるが、釣り目的の違法放流が横行しており、そのような犯罪によって作られた釣り場を利用する悪質な釣り人も多い。関市の中池では、池干しによる外来魚の駆除後に、千尾単位での違法放流が繰り返し行われたことがある。
外来生物法以前から経営している管理釣り場や、オオクチバスの漁業権を持つ山梨県の河口湖などの漁協は「生業の維持」としてオオクチバスの購入や放流が許されているため、全国的には生きたオオクチバスが現在でも大量に流通しており、そうした生体の流通が大規模な違法放流の温床となっていると考えられる。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

形態

成魚の形質

口が大きく、背鰭が第1背鰭と第2背鰭に分かれている。体側に不定型な黒色斑が並び、背鰭の軟条部と棘条部はわずかにつながる。上顎の後端が眼の後縁の直下よりも後方に達する。

背鰭棘条部・尻鰭・尾鰭の基底は鱗で覆われていない。

側線鱗数は59~68。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

生態

生息環境

もともと止水域を好むため、湖沼を主な住処とするが、河川の下流域の流れの緩やかなところにも棲んでいる。

また、アメリカでは、かなり塩分の濃い汽水域でしばしば漁獲されるといわれる。最近日本でも、大阪湾内で本亜種を見たとの情報がある。今後分布の拡大につれ、各地の汽水域で発見される可能性も大きい。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

食性

小型魚類、甲殻類、水生昆虫などを捕食する。

参考文献

  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

ライフサイクル

卵はふつう7~10日間で孵化し、孵化後、仔魚は卵黄を吸収するまでの1週間程度を巣の中で過ごす。その後、巣を離れて群れをなし、雄の保護下で岸辺の水草地帯でプランクトン植物を食べて育つ。

体長 2~3 cmに成長すると群れを離れて単独生活に入り、徐々に魚食傾向をあらわし、体長 5 cmを超える頃には完全に魚食性となる。ただし、プランクトン植物から魚へと食性を転換する時期については、地域ごとに体長が若干異なっている。

琵琶湖では、かなり早い時期から魚食性をあらわし、体長 35 ㎜以上ではコイ科魚類やトウヨシノボリの幼魚などを捕食するようになる。さらに成長するにつれ、魚類ではアユやホンモロコ、ヒガイ、カマツカなどを、また甲殻類ではスジエビ、テナガエビ、ヌマエビなどを捕食するようになる。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

産卵

産卵期は、北アメリカでは北部で5月上旬~6月下旬、南部で12月中旬~4月あるいは5月と地域によってかなりずれがある。

日本では、琵琶湖で5月上旬~7月上旬、芦ノ湖で5月下旬~7月上旬であり、6月に盛期となる。なお産卵期の水温は16~22℃である。

産卵はまず雄が湖底を掃除し、直径約 50 cm、深さ 15 cmくらいの巣をつくることから始まる。造巣地には、底質が砂、砂利、あるいは礫のところが選ばれ、生息地が泥地の場合には、木の切り株や水草の茎が産卵床として利用されることもある。巣と巣の間は、ふつう 6 m以上離れているが、障害物などがある場合には近接してつくられることもある。

雄は巣に成熟した雌を導いて卵を産ませる。雌は、体の大きさにもよるが、ふつう1回に数百粒の卵を産み、その後巣を離れるが、以後数度にわたって産卵を繰り返す。その際、同じ雄のところへ戻ってくることもあれば、ほかの雄のところへ行くこともある。雄は複数の雌を次々と導いて産卵させ、1巣あたりの卵数は数百粒から1万粒ほどに及ぶ。

雄は卵と仔魚を保護し、近づく外敵を追い払う。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

その他生態

春から秋にかけては、水草地帯や障害物のある岸辺近くで活発に餌を求めて動き回り、水温が10℃前後になる晩秋には深いところへ移動し、厳寒期には沈木、そのほかの障害物の間で群れをなして越冬する。しかし、春先の水温上昇期には、水温8℃くらいでも入れ食い状態で釣れることがある。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

関連情報

味や食感

肉身は白身で美味である。また、老化を防止するアミノ酸であるタウリンが、淡水魚としては極めて多量に含まれている。

芦ノ湖では高級魚として扱われているが、琵琶湖でも学校給食に出されるなど、今後利用増加が見込まれている。

参考文献

  • 前畑政善 1989 オオクチバス, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 494-502.

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

その他

特定外来生物であり、飼育、販売、輸送、放流などが禁止されている。また、緊急対策外来種として指定されている。

参考文献

  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-09-24 ハリリセンボン

種・分類一覧