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サンマ(Cololabis saira)の分類 Scomberesocidae
サンマ(Cololabis saira)の概要 Cololabis

サンマ(Cololabis saira)

【 学名 】
Cololabis saira (Brevoort, 1856)

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長:約 35 cm
仔魚全長:6.22〜6.74 mm (孵化直後) (上野, 2010, p. 158)
卵の大きさ:長径約 1.7〜2.2 mm , 短径 1.5〜2.0 mm (上野, 2010, p. 159)

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. pp. 158-159.

最終更新日:2020-04-28

分布

寒帯域および熱帯域を除く北太平洋とその沿海の全域

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 158.

最終更新日:2020-04-28

学名の解説

属名はギリシャ語で「切り詰められたはさみ」を意味する。種小名は日本各地での地方名「サイラ」に由来する。(中坊・平嶋, 2015, p. 139)

参考文献

  • 2015 日本産魚類全種の学名 語源と解説 - 書籍全体, 中坊徹次、平嶋義宏(著) 日本産魚類全種の学名 語源と解説. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-04-28

和名の解説

「細長い魚」を意味する「狭真魚 (さまな)」がなまったとする説、群れて泳ぐ習性を持つことから「大きな群れ」を意味する「サワ (沢)」と魚を意味する「マ」の「沢魚 (サワンマ)」が語源となった、とする説がある。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

別名・方言名

カド、サイラ、サイリ、サダ、サヨリ、サイロ、サザイオ、ザザアジ、サーベラ、スズ、スス、ダンジョウ、バンジョウ、マルカドなど。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

分類学的位置付け

条鰭綱 ダツ目 トビウオ (ダツ) 亜目 サンマ科 サンマ属 サンマ

参考文献

最終更新日:2020-04-29

人間との関係

庶民の食用魚の代表格であり、秋の味覚として広く親しまれている。塩焼き・蒲焼き・刺身・開き干し・炊き込みご飯・煮物・缶詰など、様々な調理法で広く食されている。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

形態

成魚の形質

全長 35 cm 前後。体は細長く、上下顎はくちばし状で下顎は上顎より突出している。背びれや腹びれが体の中央部より後方にあり、背びれ後方に6個程度、尻びれの後方に7個の小さな離鰭がある。体の背部は暗青色、腹部は銀白色。胃がなく腸も短いため、餌は摂食した20〜30分後には消化され体外に排出される。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

稚魚・仔魚・幼魚の形質

背ビレ鰭条数14〜18、尻ビレ鰭条数18〜21、胸ビレ鰭条数12〜15、腹ビレ鰭条数7、脊椎骨数62〜69、筋節数63。孵化直後の全長は 6.22〜6.74 mm で、体は円柱形で細長い。背部は濃青色または藍青色で、腹部は青白色または銀白色。ひれは全て無色。下顎は上顎よりわずかに突出するのみで延長して突出することはなく、これで同じダツ目のサヨリ類やダツ類と区別される。全長 7.7 mm になると背ビレと腹ビレにそれぞれ8本と12本の鰭条が現れる。全長 23.0 mm になって稚魚期に入ると、下顎がやや尖り、体は左右から押しつぶしたように平べったくなってくる (側扁する)。

参考文献

  • 陳春暉 2014 サンマ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑 . 東海大学出版会. p. 583.

最終更新日:2020-04-28

卵の形質

卵は楕円形で、粘質の纏絡糸を持ち、多数の卵が絡み合ってブドウ状をなす典型的な付着卵である。卵膜の一端に10数本の細かい纏絡糸を持ち、これと約90˚隔ててやや太い糸を持つ。

参考文献

  • 2014 魚卵の解説と検索 - 書籍全体, 池田知司、平井明夫、田端重夫、大西庸介、水戸敏(著) 魚卵の解説と検索. 東海大学出版会. .
  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 159.

最終更新日:2020-04-28

地理的変異

系群としては、北西太平洋系群、中央太平洋系群、東部太平洋系群の3つが考えられてきたが、近年の研究により、集団遺伝学的には日本近海のものも東部太平洋のものも差がないことが分かってきた。

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 158.

最終更新日:2020-04-28

生態

生息環境

沖合性の表層魚である。

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 158.

最終更新日:2020-04-28

食性

成魚は主に橈脚類、オキアミ類、端脚類などの浮遊性甲殻類を餌にし、稀に魚類 (主にカタクチイワシ) の卵稚仔を捕食することもある。

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 159.

最終更新日:2020-04-28

天敵

サバ類、サケ・マス類、サメ類などの魚類、クジラ類、海鳥

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 159.

最終更新日:2020-04-28

ライフサイクル

最少成熟年齢は0.5年程度と考えられている。北西太平洋においては、産卵は夏季を除いてほぼ1年を通じて行われているが、主な産卵期は冬季と推定されている。日本海や東部北太平洋では、産卵期は春季〜初夏、あるいは夏季であると報告されている。産卵期が長期間にわたり、また海域によって盛期が大きく異なることから、成熟の開始や進行を制御する条件についてはよくわかっていない。
北西太平洋においては、サンマは大きな反時計回りの回遊パターンを形成している。冬季に発生した仔稚魚は黒潮や黒潮続流によって東に輸送されながら、春季の表面水温の上昇とともに親潮水域へ向けて成長しながら北上する。秋季になると親潮水域の表面水温の低下とともに南下を開始し、冬季には主産卵場である黒潮水域に達する。この時は親潮に沿って南西方向に回遊する。冬生まれの仔稚魚は、秋季には体長 20〜29 cm の中・小型魚に成長し、千島列島中部〜本州房総半島の沿岸〜沖合域で漁獲対象となる。その後黒潮域で越冬し、一部は産卵に加わる。これらの中・小型魚は春季には再び北上回遊を行い、大型魚 (29 cm 以上) となって親潮域に達し、秋季には再び南下途上で捕獲対象となる。その後、冬季には黒潮域へ回帰して産卵、死亡するものと考えられる。
中央太平洋・東部太平洋・日本海などに分布するサンマの回遊についてはよくわかっていないが、基本的には春季に北上し、秋季に南下するパターンで回遊しているものとみられる。八面六臂株式会社 (2015) は、日本海に分布するサンマは「山口県沖の対馬海流の暖流域で産卵し、新潟県沖など日本列島を囲むように南下を行う」としている。

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 159.

最終更新日:2020-04-28

生殖行動

産卵直後に付随してきた雄による放精が行われ、受精するものと考えられる。

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 159.

最終更新日:2020-04-28

産卵

産卵は何回も行い、1回当たりの産卵数は2000〜3500個粒。3〜6日おきに産卵を繰り返すと考えられている。

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 159.

最終更新日:2020-04-28

特徴的な行動

群れて泳ぐ習性を持つ。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

その他生態

卵は水温10〜25℃の範囲で孵化することが確認されており、この範囲では水温が高いほど孵化日数が短く、20℃では10日前後である。纏絡糸を用いて流れ藻などの浮遊物に巻きつく。

参考文献

  • 上野康弘 2010 サンマ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. pp. 158-159.

最終更新日:2020-04-28

関連情報

漁獲方法

棒受け網、刺し網、定置網などで漁獲される。棒受け網漁は敷き網の一種で、光に集まる習性を利用して、棒受け網で漁獲するものである。また産卵しようと流れ藻に入るサンマを手づかみで捕らえる漁が佐渡島や北海道西岸沿海で行われている。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

養殖方法

養殖は行われていない。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

味や食感

肉は旨味と脂の甘さを併せ持つ。内臓はほろ苦い。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

販売価格

7月に新ものが入りはじめ、この時は1尾600〜1200円程度だが、8月中旬になって大型船での漁が解禁されると値段は大きく下がり、秋には1尾80〜100円程度で取引される。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

その他

栄養価は高く、たんぱく質より脂肪を多く含む。サンマの脂肪含有量は季節による変動が大きく、8〜9月には20%を超えるが、11〜12月には数%にまで減少する。特に生活習慣病を予防するといわれるDHA、IPAが豊富で、また血液の流れをよくするといわれるエイコサペンタエン酸や、ビタミンB12、ビタミンDなどのビタミン類、さらに鉄、銅、亜鉛などのミネラルも豊富。内臓はビタミンA、カルシウム、マグネシウムなどの微量栄養素に富む。

参考文献

最終更新日:2020-04-28

種・分類一覧