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カツオ(Katsuwonus pelamis)の分類 Scombridae
カツオ(Katsuwonus pelamis)の概要 Katsuwonus

カツオ(Katsuwonus pelamis)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Katsuwonus pelamis (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長:最大 100 cm
仔魚全長:約 2.6 mm (孵化直後)
卵の大きさ:約 1 mm

参考文献

  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 165.

最終更新日:2020-04-28

分布

太平洋・大西洋・インド洋全ての熱帯〜温帯水域

参考文献

  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 165.

最終更新日:2020-04-28

和名の解説

和名の由来に関しては諸説あり、身質が柔らかく傷みやすいため、鎌倉時代までは堅く干したものを食用としていたことから「カタウオ (堅魚)」と呼ばれ、それがなまって「カツオ (鰹)」と呼ばれるようになったという説や、殺生を禁じられた平安時代の仏僧が、干しカツオを木片としたことから「堅魚 (かたうお)」と呼ばれるようになった説などがある。

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最終更新日:2020-04-28

別名・方言名

烏帽子魚

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最終更新日:2020-04-28

分類学的位置付け

条鰭綱 スズキ目 サバ科 カツオ属 カツオ

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最終更新日:2020-04-29

人間との関係

代表的な食用魚であり、大和朝廷にも献上され、「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」と歌われるなど、、古くから日本人の食を支えてきた魚である。たたきや刺身、かつお節として食される。春から初夏にかけて列島沿岸を北上するところを漁獲される初物のカツオは、「初ガツオ」と呼ばれ珍重される。一方、秋に南下するカツオは「戻りガツオ」と呼ばれ、産卵準備のため脂がたっぷりと乗っているためトロガツオともいわれ、秋の味覚として人気が高い。以前は初ガツオと比べて安価に取引されていたが、近年では初ガツオを凌ぐ人気となっている。
また、釣りの対象としても人気があり、沖釣り、ルアーフィッシング、フライフィッシング、トローリングなどで釣られる。カジキを狙うトローリングでは、餌としてカツオを釣ることも多い。

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最終更新日:2020-04-28

形態

成魚の形質

体型は典型的な紡錘形で丸みが強い。背部は暗青色、腹部は銀白色。水揚げ後のカツオの腹側には縞模様が走っているが、海中にいる時にはなく、釣り上げられた後に浮き出てくる。

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最終更新日:2020-04-28

稚魚・仔魚・幼魚の形質

体はやや細長く側扁する。頭部・眼球・口裂は極めて大きい。吻は尖り上顎がやや突出し、側面から見ると吻は三角形状である。仔魚期における色素胞形成では、1) 前脳部に黒色素が出現する (体長 4.5 mm 程度から) こと、2) 尾部腹面に1個の (稀に2〜3個の) 黒色素胞が出現すること、および3) 第1背鰭の色素胞形成が弱いことが特徴である。マグロ属仔魚とは上記の1), 3)の特徴によって識別される。近縁種であるスマおよびソウダガツオ属仔魚は峡部および肛門直前の腹面に黒色素胞があることでカツオと識別される。

参考文献

  • 西川康夫 2014 カツオ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. p. 1399.

最終更新日:2020-04-28

卵の形質

卵径 0.93〜1.09 mm, 油球径 0.21〜0.25 mm。
海水より比重が小さく、海面に分布する浮性卵である。水温27℃では約25時間で孵化する。

参考文献

  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 165.
  • 2014 魚卵の解説と検索 - 書籍全体, 池田知司、平井明夫、田端重夫、大西庸介、水戸敏(著) 魚卵の解説と検索. 東海大学出版会. .

最終更新日:2020-04-28

生態

生息環境

成魚はおおむね表面水温15℃までの水域に広く分布する。
仔稚魚は全世界の温・熱帯域に分布し、日本周辺では北緯35度以南の太平洋側から出現する。若齢ほど分布の南北範囲が広い傾向にある。稚魚期の鉛直分布は表層混合層下部から水温躍層が中心で、マグロ類より深い。

参考文献

  • 西川康夫 2014 カツオ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. p. 1399.
  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 165.

最終更新日:2020-04-28

食性

仔稚魚の餌は基本的に他の魚の仔魚類であるが、カイアシ類、オキアミ類や頭足類なども捕食する。成長に伴い捕食する餌のサイズは大型化する。
成魚は主にイワシ類を捕食するようだが、成長しても胃内容物には動物プランクトン等も引き続き出現するため、基本的には餌の選択性は強くなく、周囲の餌環境と遊泳能力、口の大きさ等に見合った動物を広く捕食していると考えられている。

参考文献

  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 165.

最終更新日:2020-04-28

ライフサイクル

孵化直後は全長 2.6 mm 程度であるがその後の成長は速く、1.5ヶ月後には 10 cm を超え、6ヶ月で約 30 cm まで成長する。成熟は尾叉長 40〜45 cm になると開始される。
産卵期は熱帯水域では周年、亜熱帯水域では春〜初秋が中心となり、年2回の産卵期のピークが見られる水域もある。
回遊魚であり、太平洋・大西洋・インド洋など熱帯から温帯を大群れで回遊し、早春から晩秋にかけて日本近海に現れる。日本近海に近づく回遊ルートは2種類あり、ひとつは黒潮に乗って北上するルートで、フィリピン、台湾、南西諸島を経て日本列島の太平洋岸に現れる。2月中旬に九州南部、3月中旬に四国沖、4月に紀伊半島、5月に伊豆・房総沖と北上を続け、7~8月には三陸沖まで北上し、9月に北海道南部に達して水温が低下すると、再び南下していく。もうひとつは、小笠原海流に乗って北上するルートで、ミクロネシア近辺から小笠原海流に乗り、小笠原諸島から伊豆諸島、関東沖、三陸沖に向かい、水温が低下すると南下するものである。

参考文献

  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 165.

最終更新日:2020-04-28

産卵

個体の産卵期間は不明であるが、複数回の産卵を行う。1回の産卵数はサイズにより変動し、30万〜100万粒以上とされる。産卵は表面水温24℃以上の水域で広く行われ、量の多少はあるものの特定の限定された産卵域は形成されない。

参考文献

  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 165.

最終更新日:2020-04-28

特徴的な行動

最高時速 50 km のスピードで回遊する。カツオは一生休まず泳ぎ続けるが、これは鰓蓋が動かないので、泳ぎながら海水を鰓孔に流入させて酸素を取り込んでいるためであり、止まると窒息死する。
また、群れて泳ぐ習性があり、群れの種類は以下のように分類される。
・素群
カツオだけで他の随伴物のない群れ。
・鳥付
エサを横取りしようと海鳥が上を舞っている群れ。漁船がカツオ群の存在を知る手がかりとなる。海鳥の種類はハワイ水域では、オナガミズナギドリ・セグロアジサシ・クロアジサシで、陸地に近くなるとカツオドリ・グンカンドリが多い。
・鮫付・鯨付
ジンベイザメと一緒に泳いでいる群を鮫付、クジラと行動をともにしているのを鯨付という。
・木付
流木などの漂流物の下にいる群れを木付という。この習性を利用して、パヤオという人工の漂流物を流し、それにつくカツオを漁獲する漁法がある。
・瀬付
海潮流がよく、水温が高く、天然のエサが豊富な離島や礁 (海面付近、あるいは水深 20 m より浅い岩石または珊瑚礁) の周りに、一年中にわたって生息する。日本近海では、南西諸島・豆南・小笠原諸島の周りに見ることができる。

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最終更新日:2020-04-28

関連情報

漁獲方法

一本釣り漁、引き縄漁、定置網漁、巻き網漁など。
各国の巻き網船による熱帯水域漁場の開発により漁獲量が増大傾向にあり、1970年代まで30万 t 台であった全世界のカツオ漁獲量は1990年代には150万 t を超え、2000年には189万 t 、2007年には251万 t とさらに増加している。北緯20度以北の日本近海での漁獲量は1970年代以降、9万〜21万 t で推移している。

参考文献

  • 小倉未基 2010 カツオ, 竹内俊郎、中田英昭、和田時夫、上田宏、有元貴文、渡部終五、中前明(編) 水産海洋ハンドブック. 生物研究社. p. 166.

最終更新日:2020-04-28

味や食感

初ガツオは鮮烈な赤身と血の匂いを含んだ酸味が、戻りガツオはマグロの中トロにも似た脂の乗りと身肉の旨さが特徴。迷いカツオは脂が霜降り状に乗り、芳醇な甘みと香りを持っている。
本来は太平洋を回遊しているカツオが、日本海側に迷いこみ、冬季に日本海でメジマグロやブリ漁で水揚げされる中に混じることがある。これを「迷いカツオ」といい、常時冷たい日本海を泳いでいるために身が引き締まり、脂の乗りも香りも素晴らしい味わいを持つ。

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最終更新日:2020-04-28

その他

カツオのたんぱく質量は魚の中でもトップクラスで、マグロの赤身に匹敵する。身肉はタウリンを豊富に含有し、血合部分にはビタミンやミネラルを、筋肉中に筋肉色素ミオグロビンを多く含んでいる。鉄や銅、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシンなどのビタミンB群も豊富。ヒスチジンが多いため、古いものはヒスタミンに変わり、アレルギーを起こすことがある。

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最終更新日:2020-04-28

種・分類一覧