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タチウオ(Trichiurus lepturus)の分類 Trichiuridae
タチウオ(Trichiurus lepturus)の概要 Trichiurus

タチウオ(Trichiurus lepturus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Trichiurus lepturus Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長 1.5 m

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 247.

最終更新日:2020-05-12 En

分布

北海道以南の日本各地沿岸に分布する。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 247.

最終更新日:2020-05-12 En

和名の解説

① 体が太刀のように平たく、長いことから。
② 『新釈魚名考』によると、タチウオの語源は頭を上にして立ち泳ぎをすることからとある。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 247.

最終更新日:2020-05-12 En

別名・方言名

ダツ(秋田)、ハクナギ(宮城)、サワベル(福島)、シラガ(新潟)、ハクイオ(鳥取)、タチイオ(愛媛)、タチヌイユ(沖縄)

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 247.

最終更新日:2020-05-12 En

分類学的位置付け

これまで日本近海のタチウオの学名には、松原(1955)によって Trichiurus lepturus が充てられてきたが、最近の研究から中坊(1993)は日本近海のタチウオ属をタチウオとテンジクタチの2種に分け、それぞれの学名に Trichiurus japonicus と Trichiurus lepturus を充てた。
現在、タチウオ類の分類については多少の混乱が見られ、今後の研究によってさらに学名が変更される可能性もある。

参考文献

  • 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 479.

最終更新日:2020-05-12 En

人間との関係

鎌倉時代、新田義貞が稲村ヶ崎に投げた太刀が魚に化けたという伝説がある。
『大和本草』に「味不好骨多クアフラアリ腥(なまぐさ)シ性不好食フヘカラス」とある。
『和漢三才図会』に「煎炙り、あるいは鮓にして食べる<中略>烹煮するとそれほどでもない」とある。
大野麦風『大日本魚類画集』によると、タチウオが夜、底から浮上してくる姿は、白刃を持った平知盛の幽霊だと信じられていた。須磨浦沖では「幽霊の剣」と言われる。

季題は<秋>。「太刀魚の 銀剥がれけり 切られるる 徳永夏川女」「たちうをに 塩ふる宵の 姫路城 藤村克明」「太刀魚や 見知らぬ町の 夕景色 飯田真穂」

加工食品としては高級練り製品の材料に使用される。とれたてのタチウオから取れるグアニン箔(タチ箔)をガラス玉に塗って模造真珠をつくる。このほか、タチ箔は銀色の粉として、セルロイドの下敷き、塗料などに利用される。グアニンが剥離するとすぐに死んでしまうので飼育は難しいとされたが、最近は水族館での飼育が盛ん。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 247-248.

最終更新日:2020-05-12 En

形態

成魚の形質

体は細長く延長し、側扁する。背鰭は1基で体に沿って長く、3棘122〜142軟条。胸鰭は10〜12軟条。腹鰭はなく、臀鰭も痕跡的でほとんど皮下に埋没する。
尾鰭はなく、尾部はひも状に長く延びる。口は大きく、下顎は上顎より突出する。両顎に鋭い犬歯状の歯を備える。
体にうろこはない。側線はえらぶた後縁の上方から始まるが、胸鰭の後方から腹方に下降し、体の後半部では体側中央部より下方を直線状に走る。体色は体全体が銀色で、ライトを当てるとまばゆく輝く。

参考文献

  • 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 479.

最終更新日:2020-05-12 En

似ている種 (間違えやすい種)

テンジクタチの背鰭は生時黄緑色だが、タチウオの背鰭は生時銀白色を呈している。

参考文献

  • 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 479.

最終更新日:2020-05-12 En

生態

食性

仔稚魚はアミなどの小型甲殻類を摂食するが、成長するにつれてイカ類、イワシやイカナゴなどの魚類を食べるようになる。
摂餌は主に夜間、表層近くで行われる。魚などを捕食するときは、背鰭を波打たせ下層から一直線に獲物めがけて移動し、鋭い歯で噛み付いて捕まえる。

参考文献

  • 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 480.

最終更新日:2020-05-12 En

ライフサイクル

日本近海での産卵期は春から秋。館山湾や駿河湾では7〜11月、熊野灘では5〜11月、九州近海では8〜10月。
卵は球形で、直径 1.7 ㎜ 前後の分離浮性卵。産卵された卵は水深 20 m 層を浮遊する。産卵から孵化するまでの時間は、水温16℃で約100時間前後。
孵化直後の仔魚は全長 5.5〜6.0 ㎜ で、卵黄は小さい。胸鰭はすでに形成され初めている。全長 7 ㎜ 前後で卵黄を吸収する。全長 13 ㎜ 前後で胸鰭の鰭条が、全長 40 ㎜ 前後背鰭の鰭条が成魚と同数になる。
仔稚魚は水深 10〜50 m 層に多く、昼間は下層、夜間は上層に鉛直移動しているらしい。
吻部から肛門までの長さは、生後1年で 12 ㎝ 前後、2年で 20 ㎝ 前後、3年で 30 ㎝ 前後、4年で 35 ㎝ 前後、5年で 40 ㎝ 前後、6年で 45 ㎝ 前後、7年で 50 ㎝ 前後になる。生後2年前後から成熟し始める。

参考文献

  • 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 479-480.

最終更新日:2020-05-12 En

産卵

産卵期の水温は20℃前後。産卵場所は沿岸の砂泥域。産卵数は吻部から肛門までの長さが 25 ㎝ の個体で約1万粒、30 ㎝ で約3万粒、40 ㎝ で約9万粒である。

参考文献

  • 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 479.

最終更新日:2020-05-12 En

特徴的な行動

口を半開きにしてせわしなく泳ぐため、水中で見るとまるで溺れかかっているような印象を受けることがある。無論そんなことはなく、そのままの泳ぎ方でもかなり速い速度で移動することができる。
立ち泳ぎの群れは上を通過する小魚を捕食するための待ち伏せと言われている。しかし、NHKの映像によると群れで水平に泳いでおり、おそらくこれが小魚を捕食するときの活動であろう。自然状態の立ち泳ぎの群れが撮影されており、タチウオは後ろ向きに一気に、体操選手が着地をするようにストンと立ち泳ぎの姿勢になる。この姿勢は休息であろう。この映像を撮影した方の話では、潮が止まったとき、立ち泳ぎの群れを形成、その上のタチウオ釣り遊漁船では食いが止まったという。これは待ち伏せ捕食説の誤りを示している。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 247.
  • 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 479.
  • 中坊徹次 2018 , 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. 444-445.

最終更新日:2020-05-12 En

関連情報

漁獲方法

底引き網、刺網、一本釣りなど。瀬戸内海、朝鮮半島近海で大量に漁獲される。体表は傷つきやすく、一本釣りで漁獲されたものは高値がつき、専門店に回される。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 248.

最終更新日:2020-05-12 En

味や食感

鮮度が落ちると銀色も剥げる。一年を通して味はほとんど変わらないが、特に味が良いのは秋。
肉は白身で柔らかい。新鮮なものは刺身にする。脂ののったものは塩焼き、照り焼きに向く。唐揚げ、ムニエルにも良い。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 248.

最終更新日:2020-05-12 En

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