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オヤニラミ(Coreoperca kawamebari)の分類 Percichthyidae
オヤニラミ(Coreoperca kawamebari)の概要 Coreoperca

オヤニラミ(Coreoperca kawamebari)

絶滅危惧IB類 (EN)

【環境省】IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

【 学名 】
Coreoperca kawamebari (Temminck & Schlegel, 1843)

基本情報

大きさ・重さ

全長:10 cm程度

参考文献

  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-09-02 ハリリセンボン

分布

京都府桂川・由良川水系以西の本州、四国北東部、九州北部および朝鮮半島南部に分布する。

参考文献

  • 中山耕至 2018 オヤニラミ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 226.

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学名の解説

種小名 kawamebari は海産のメバル類に似た様子から由来する。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

最終更新日:2020-09-02 ハリリセンボン

別名・方言名

地方名:ヨツメ(関西、中国地方、九州)、ミコノマイ・ネコノマイ(中国地方)、ミズクリセイベイ(筑後川)、カワメバル(長崎県)

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

最終更新日:2020-09-02 ハリリセンボン

分類学的位置付け

スズキ目 ケツギョ科 カワメバル属

参考文献

  • 中山耕至 2018 オヤニラミ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 226.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

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人間との関係

岐阜県では、1992年頃に根尾村(現本巣市)において中学生が発見し、珍しい魚ということで根尾村の天然記念物にされている(岐阜県博物館, 1995; 一柳ほか, 1997)。
しかし、本種は1980年代から観賞魚店で販売されており、「珍しい魚だから増やして放流したい」と語るマニアが当時は各地にいた。

さらに、1980年代に岐阜県でオヤニラミ類の化石が発見されたことで、岐阜県内にオヤニラミを放流しようとした人もいたようである。そのため、おそらくは各地に放流された中で、たまたま県内で最初に定着したのが根尾村だったと考えられる。

川魚の漁師も、網にからまるこの魚を嫌う。食用にはされていない。

近年各地で減少しており、小魚の保護対策が望まれる。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

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形態

成魚の形質

カワメバルという地方名から分かるように、海産のメバル類に似た印象を与える。またヨツメという地方名が示すように、えらぶたの後端に本物の眼より大きい縦長の眼状紋があるのが最大の特徴である。本物の眼から放射状に暗朱色の条が広がる。これらの模様はこの魚の体側に偽の魚模様を描きだしている。

体側後半には6~7本の横縞を持つが、体色の変化が激しく、縞が判別されにくいことも多い。全身が黒色になることもあるが、そのときでも口端から背鰭の前端部にかけての頭頂に明白色の帯をあらわすことが多い。眼の前後と眼状紋の前部に朱色斑がある。

雌雄は外見からは判別できない。しかし産卵期には、行動を観察すれば雌雄の識別も可能であり、またこの時期に腹部が膨れている個体は雌である確率が高い。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

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生態

生息環境

大河川の中流や下流の本流・支流に生息するが、川底がほとんど砂というような河相の貧弱な支流にはいない。大河川の中流では、平瀬でも淵でもなく、水深 50 cm前後の岸近くに多い。ほかにも河川の岸際のヨシの根元や、石の陰などの障害物がある場所に生息する。

流れの緩やかな場所を好む。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-09-02 ハリリセンボン

食性

肉食性で、小型の水生昆虫や小魚など丸のみにできるものを食べる。

飼育する場合は、生き餌でなくとも慣らすことができる。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

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天敵

オヤニラミの捕食者として考えられるのは、ナマズやカムルチーなどの魚か、カワセミなどの鳥であるが、それらもオヤニラミを敬遠しているようである。

オヤニラミが捕まえられると、体を曲げ鰭を広げて、鰭やえらぶたの棘を立てるのは、捕食者に食べられにくくする行動であろう。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

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ライフサイクル

卵は2週間ほどで孵化し、仔魚は1~2日は植物の陰などに群れ隠れて雄親に守ってもらう。卵黄を吸収して自分で餌をとるようになると散っていく。稚魚はミジンコのような生きて動くものしか食べない。

よい場所になわばりを持つ強い雄は、この産卵育児の過程を1産卵期に数回繰り返す。稚魚はよく育つと翌年の産卵期には 5~6 cmに成長し、少数の卵を産む。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

最終更新日:2020-09-02 ハリリセンボン

産卵

産卵期は4月下旬に始まり9月まで続くが、ほとんどの産卵は5月に集中する。飼育下では早まる傾向があり、1月に産卵することもある。

雌雄とも年中なわばり性を示すが、特に産卵期には雄が産卵基質を中心に顕著ななわばり性を示す。産卵基質としては、ヨシなどの植物のしっかりした茎や葉が選ばれる。雄はなわばりを守る合間に、産卵基質に腹をあてがい体をゆすって、その表面を掃除する。産卵の邪魔になるささくれや枯れ葉があれば、口で咥えて引きちぎる。

雄は攻撃的な体色をしていることが多い。産卵期間中も雌は餌を漁っているようであるが、卵が充分に成熟すると、雄のなわばりに入り、雄の求愛を受け入れる。

雄の求愛行動は、はじめ主にえらぶたを広げるいわゆる¨正面誇示¨の威嚇行動と産卵基質への誘導とからなり、のちには産卵基質の掃除の¨体ゆすり¨と雌の体への穏やかなつつき及び正面誇示、¨尾打ち¨などの威嚇行動が繰り返される。求愛を受け入れると、雌は体色を変え上向き姿勢をとる。そして雄の誘導に従って産卵気質にいたる。雄と交互に体ゆすりを行い、それが数十分から数時間続く。このときの雌は、頭頂及び尾柄上部の白帯以外は黒色となる。

産卵間際になると、雌雄の体ゆすりは細かな振動になる。雌が2~3列に計約80粒ほどの卵を下から上に産み付けていくと、雄が精子をかけていく。全長が 10 cmくらいの雌では2~3日ほどの間に約500粒の卵を産む。雌は特定の雄とだけ番になって卵を産むわけではない。しかし、だいたいにおいて自分より大きい雄を選ぶ傾向がある。

卵を守り世話をするのは雄で、産卵を終えた雌は追い払われる。大きく強い雄は、雌が次々に産卵にくるので1000粒以上の卵を守ることもある。雄は警戒遊泳の合間に卵のところへ戻り、上向きの姿勢で胸鰭を動かして卵に水を送る(ファンニングという)。死卵があれば口で取り除く。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

最終更新日:2020-09-02 ハリリセンボン

その他生態

性質は非常に攻撃的で、群れて泳ぐのは仔魚の時期以外にない。卵を守る雄は特に攻撃的で、卵を食べにくる他種の魚などはもちろんのこと、魚網や人の手に対してまで攻撃してくる。産卵期以外でも、同種個体に対して雌雄ともに攻撃的である。

大形個体がなわばりを持ち、小形個体はその間に大形個体の眼を盗むように生きている。個体間になわばりや順位が既にできているので、川では軽い威嚇行動が見られる程度であるが、水槽に2尾を入れると激しく噛みつき合い、隠れ場が少なければ翌日には片方がたいてい殺されている。

攻撃的なときには、体側の縞や頭頂の白帯が消え全身黄褐色になる。体の黄褐色の明暗の程度は川底の色の明暗に左右される。また眼状紋は近距離から非常に目立つようになる。この眼状紋は、正面誇示などの威嚇行動の効果を増すほか、敵が噛みついてきたときには、本物の眼から攻撃をそらす効果を持つと考えられる。弱い方は敵が威嚇してくると縞や白帯をはっきりさせ、間もなく逃げ出す。

オヤニラミの示すさまざまな体色は、同種の個体に対してはさまざまな信号として機能し、他種の動物に対しては隠蔽色となっている。強い個体の黄褐色の地色はまわりの石や砂、枯れ草の色に似ているし、弱い魚の白帯や黒い縞は魚の姿を分断して見つかりにくくする。

水槽での実験により、この魚には体側の縞と同じ垂直の縞模様のある場所に隠れようとする傾向のあることがわかった。求愛中の雌は黒色なので色自体は比較的目立ちやすいが、黒すぎる白や頭を上にした姿勢のために魚らしく見えない。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

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関連情報

その他

主に朝鮮半島に分布するコウライオヤニラミ C. herzi は、本種より大型で、全長 20 cm以上になる。本種より流れの速い場所に生息し、岩の壁面などに卵を産み付ける。

参考文献

  • 香田康年@渡辺宗孝 1989 オヤニラミ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 486-489.

最終更新日:2020-09-02 ハリリセンボン

種・分類一覧