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キノボリトカゲ(Japalura polygonata)の分類 Agamidae
キノボリトカゲ(Japalura polygonata)の概要 Japalura

キノボリトカゲ(Japalura polygonata)

【 学名 】
Japalura polygonata (Hallowell, 1861)

基本情報

大きさ・重さ

・全長:20~25 cm。尾はその約3分の2を占める。

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

分布

琉球列島固有の亜種で、喜界島や奄美大島から与那国島までのほとんどの各島に分布している。

本種は日本に分布するアガマ科唯一のトカゲで、近縁種は台湾や南アジアに分布している。

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

亜種・品種

3亜種に分けられる。

基亜種
・オキナワキノボリトカゲ(J. p. polygonata)
・サキシマキノボリトカゲ(J. p. ishigakiensis)
上記2亜種は南西諸島に分布している。

・キグチキノボリトカゲ
台湾北部に分布している。

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

キノボリトカゲ科(アガマ科)(Agamidae)

2020年現在はDiploderma属

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

人間との関係

近年、爬虫類をペットとして飼育するのが流行したためか、沖縄や周辺の島々ではここ数年、おびただしい数のキノボリトカゲが乱獲され、東京や福岡などに向けて出荷された。

その結果、これらの島々では個体数が目に見えて減少し、以前は高密度で見られたにも関わらず、現在は全くいなくなってしまった場所も少なくない。

沖縄では現在、開発に伴う生息環境の破壊が保全生物学上の問題としてクローズアップされているが、このような種を特定した卵殻も、特に小島嶼という限られた場所に生息する生物個体群には、壊滅的な打撃を与えうることを忘れてはならない。

捕獲や売買を厳しく規制するなどの保護策が急務である。

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

形態

成体の形質

背面の基部は、鮮明な緑色から褐色まで著しく変化する。

頭部には黒褐色の斑紋を散布し、胴の背面には同じ色の幅広い横帯をそなえていることが多いが、これらの周縁は一般に明瞭ではない。

四肢の背面には黒褐色の横帯をそなえ、南方の島の個体群ほどその数も多くなり境も明瞭になる傾向がある。

腹面は緑色を帯びた灰色、灰褐色、また黄褐色で、咽頭部に黒点を散布していることや赤褐色の短い条線をそなえていることもある。

掌部と蹠部とは普通黄褐色。尾には10個内外の長い黒色環帯をそなえている。

なお、八重山群島産の個体では、眼の下側に白い条線をそなえていることが少なくない。

頭部は大きくて幅が広く、また非常に背が高い。

吻はほぼ三角形で、背面がほぼ平坦。眼鼻線は鋭い隆条になって側方へ突出し、上睫板に続いて眼の上側を限っている。

吻端板は低くて幅が広く、背縁が4~5枚の小鱗に接しているが。鼻孔は1枚の小鱗で隔てられている。

眼は大きくて、その長径が鼻孔から眼の前端までの距離にほぼ等しく、後端の背側には明瞭な切れ込みがあって、隆条になった上睫板列の後端を限っている。

頭部背面の鱗には、隆条をそなえているものと放射状のしわのあるものとがあり、後頭部両側では多角錐状になって明瞭な放射状の溝をそなえている。

鼓膜は細かい鱗におおわれ、表面に現れていない。

上唇板は6~8枚、第1枚目以外はいずれも細長い。下唇板は7~8枚ある。

副下唇板は、前方の5枚ぐらいがつねに明瞭、左右の第1下唇板は普通頣板の後側で互いに接し合っている。咽頭部には袋がない。

頸部の背中線上には、扁平な三角形の鱗が縦に6~10枚ぐらい並んで、たてがみ状になっている。

胴は多少とも側扁し、背中線上に鋸歯状の鱗列をそなえている。

背面の鱗は細かくて敷石状に並び、とくに小さいものを除けば、明瞭な隆条をそなえている。

また、著しい隆条を備えとがった後端の多少反上した大形の鱗が多数混在する。

これらの体鱗は、体側では瓦状に重なり合うようになる。腹面の鱗は瓦状に並び、いずれも著しい隆条をそなえている。

四肢はよく発達しているが、台湾などの亜種に比較するとやや短く、後肢の全長が眼の後端から肛門までの距離よりも明らかに小さい。

第4趾は第3趾よりも明らかに長く、下面に23~28枚ぐらいの趾下板をそなえている。

尾は一般に頭胴部よりもはるかに長く、基方では背中線上に弱い鋸歯状の鱗列をそなえている。

この鱗列以外の鱗にも明瞭な隆条があり、腹面では、これらが前後につながり合って、ほぼ平行な連続した隆条を形成している。

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

幼生の形質

孵化したばかりの幼体は、頭胴長 2.3~2.4 cm、尾長 4.2~4.4 cmで、成体に比べて地上性の傾向が強い。

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卵の形質

卵は直径約 1.4 cm、短径 1~1.1 cmの回転楕円体である。

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似ている種 (間違えやすい種)

グリーンアノール

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生態

生息環境

樹上性が強いが、地上に降りることも決して少なくない。

その一方で、比較的開けた環境を好み、うっそうとした原生林の中よりも集落の周辺の藪や林縁部などに多い。

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食性

小型の無脊椎動物を食べ、特にアリを多く食べているようであるが、セミなどの大型の昆虫や、地表にはい出てきたミミズを襲うこともある。

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天敵

主な天敵はサシバなど肉食性の鳥類やアカマタ、ハブなどのヘビ類であるが、このほか人為的に持ち込まれたネコやマングース、イタチ、さらにはニワトリなどもキノボリトカゲにとっては油断のならない捕食者である。

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生殖行動

雌は雄が接近するとたいていの場合、表面にへばりつくような姿勢をとりつつ幹をらせん状に回り込んで隠れてしまうが、雄を受け入れる場合は、その場に静止して体を少し持ち上げ、交尾に入る。

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

産卵

産卵期は4~8月で、この期間に雌は地上の落ち葉などの下に1~4個の卵を産む。1~2ヵ月ほどで孵化する。

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特徴的な行動

雄は縄張りをつくることが知られている。

縄張りの雄は、冬季を除きしばしば縄張りの中の比較的太い木の幹に垂直に静止している。

これは縄張りを見張っている状態と考えられ、このようなときほかの雄が縄張り内に侵入すると、素早く排除にかかる。

視覚は非常に発達しており、数 m先の葉陰でのわずかな動きにも敏感に反応する。

ふつう侵入者は縄張りの持ち主が接近すると地上に降りて一目散に逃げるが、時折気の強い個体がいて逃げない場合には、腕立て伏せのように体を小刻みに上下させ、さらに接近し口を開け、伸び上がって身体の側面を見せ合う。

尾の付け根を咬み合う儀式的な闘争に発展することもある。

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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ

種・分類一覧