アカアシガメ(Chelonoidis carbonarius)の解説トップに戻る
アカアシガメ(Chelonoidis carbonarius)の分類 Testudinidae
アカアシガメ(Chelonoidis carbonarius)の概要 Chelonoidis

アカアシガメ(Chelonoidis carbonarius)

【 学名 】
Chelonoidis carbonarius (Spix, 1824)

基本情報

大きさ・重さ

甲長:35 cm前後 最大甲長 51 cm 

参考文献

  • 大谷勉 2018 アカアシガメ, 大谷勉(著) 川添宣広(編) 世界のカメ類. 文一総合出版. 28.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

分布

パナマ南東部、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル、ボリビア西部、ガイアナ、スリナム、仏領ギアナ、パラグアイ、アルゼンチン北部に分布する。トリニダード・トバゴの個体群は在来の可能性があるが、それ以外にカリブ海の大アンティル諸島、バルバドス諸島のセント・クロイ島にも移入され、定着している。

このうち、小アンティル諸島北部のアングイラ島(英国領)から本種の更新世化石が見つかっており、本種はかつて小アンティル諸島まで漂流分散などにより分布を広げたが、その後この諸島内では絶滅し、17世紀以降に再び移入された個体が定着したとされている。

参考文献

  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

和名の解説

和名の「アカアシガメ」はキアシガメの場合と同様、前肢の一部の鱗が赤味を帯びることが多いことに由来する。

参考文献

  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

分類学的位置付け

リクガメ属 リクガメ科

参考文献

  • マーク・オシー, ティム・ハリデイ 2001 アカアシガメ, マーク・オシー、ティム・ハリデイ(著) 太田英利(監修) 爬虫類と両生類の写真図鑑. 日本ヴォーグ社. 53.
  • 大谷勉 2018 アカアシガメ, 大谷勉(著) 川添宣広(編) 世界のカメ類. 文一総合出版. 28.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

人間との関係

現時点で、アカアシガメの野生個体群が種の存続を脅かすほど各個体群が減少している証拠はなく、本種は多くの南米の国々で最も個体数の多いリクガメとされる。

キアシガメ程ではないが比較的大型で、開けた場所に生息するため、本種については食用としての採集が古くから活発に行われてきた。かつて採集個体の多くは自家消費または、採集地付近の市場で販売されていた。

しかし最近は訓練した犬を用い、大量採集された本種が、生息国の大都市に食用として出荷され(ベネズエラ島では商業目的での本種の野生個体の採取は違法)、中国や南米のほかの国々に向けて大規模に違法輸出される例が増え、問題となっている。

キアシガメについても食用の採集は行われるが、既に個体数が減少しているのに加え、熱帯雨林内の多数をまとめて採集するのが難しい地域に生息するため、こうした大規模な採集の主たる対象は最近ではアカアシガメとなっている。

1980年頃までペット用の採集が盛んに行われたコロンビアやボリビアでは一時的に個体数は減少したが、近縁は比較的安定した状態にある。現在もペット用の野生個体の採集が行われているスリナムやガイアナでも、本種は未だ個体数の多い普通種とされている。

アルゼンチンでは野生個体の輸出は減少したが、国内向けのペット市場への出荷のための採集は続いているため、個体数の減少が問題となっている。

これらの国々ではペット用以外に食用としての国内向けの採集も多い。ベネズエラ、仏領ギアナ、ブラジル、パラグアイではWC個体の輸出目的での本種の採集は厳重に規制されているが、国内消費のための採集は行われている。

多くの国々で、現時点では比較的個体数は多いが、減少傾向にあり、明らかに個体密度は低下し、大型個体は少なくなっている。今後、過度の採集が続けば、現在もペット用の野生個体の採集が行われている国々だけでなく、ほかの国々でも悪影響が出る恐れがある。

同時に、本種の主たる生息地である南アメリカ大陸のサバンナは、南米の各地で農業開発や都市開発の対象とされて消失・縮小し、また、過度の放牧や度重なる野火などによって環境の悪化が起き、本種の生息状況の悪化のもう1つの原因となっている。

参考文献

  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

形態

成体の形質

甲はドーム状で細長く、頭部は凸状となり、水平にならない。成体では側面のラインが明瞭に内側にへこみ(真上から見るとひょうたん型となる)、外縁部の縁甲板は全体にほとんど反り返らない。背甲後縁に鋸歯を欠く。背甲の前端には明瞭な湾入があるが、後端に湾入はない。項甲板はもたない。

背甲の椎甲板および肋甲板にはキールがなく、各椎甲板は長さより幅が大きい。左右の第12縁甲板は癒合して1枚の甲板となる。椎甲板と肋甲板には初生甲板(孵化時の甲板)の周囲に成長輪が発達するのが普通だが、老成個体の成長輪は不明瞭となる。

背甲の初生甲板とその周辺はオレンジ色、黄色ないし淡黄褐色で、ほかは全体に濃い暗褐色ないし黒色となるが、地域個体群によっては灰褐色や淡褐色となることがある。背甲の表面の摩耗が進んだ老成個体は、明色斑はかなり小型化するが、消失することは稀である。

腹甲は比較的大型で、蝶番を欠く。腹甲の前縁部は中央部に湾入がなく、肥厚して背側にやや反り返る。腹甲の後縁部中央は明瞭な湾入がある。腹甲の各甲板の形態はキアシガメによく似ているが、キアシガメで間股甲板長(左右の股甲板のシームの長さ)は間肩甲板長(左右の肩甲板のシームの長さ)より短いのに対し、アカアシガメでは間股甲板長は間肩甲板長より長いかほぼ等しくなる。

橋はよく発達し、中型の液下甲板と小型の鼠蹊甲板がそれぞれ1対ずつある。腹甲の色彩は変異が大きく、通常、黄褐色の地に暗褐色ないし黒色の模様があるが、地域個体群によって、あるいは個体変異も著しく、左右の腹甲板と股甲板の中央付近だけが黒いもの、各甲板のシーム付近の部分と初生甲板とその周囲が明色でほかは暗色のもの、初生甲板の周囲のみ明色のものなど、さまざまなタイプが存在する。

頭部は小型で、吻端部は丸く、上顎の先端は鈎状となっている。頭部の地色は褐色ないし暗褐色で、頭頂部や側頭部に赤色、黄色ないしオレンジ色の斑紋があるが、その色彩の変異は著しい。四肢は棍棒状で、指はない。四肢の地は暗褐色で、前肢の大型鱗の周囲のみ黄色またはオレンジ色である。尾の先端には鉤爪状の鱗はない。

雄は雌よりやや大型となる。アカアシガメの成体は真上から見ると中央付近でくびれた背甲を持つが、それが成体の雄では雌に比べて顕著である(個体群によっては雌雄ともくびれが不明瞭だが、雄ではわずかにくびれるのが普通である)。また、雄は甲が低く全体に細長くなり、第7・8椎甲板付近が大きく外側に張り出し、腹甲は胸甲板、腹甲板、股甲板にかけて中央部付近で明瞭に凹む。

一方、雌の甲はより高くドーム状に盛り上がり、背甲後部がほとんど外側に張り出さず、腹甲は平らか、腹甲板の中央付近でごく浅く凹むのみである。雄の尾は雌に比べて長くて太く、尾の付け根から総排泄孔までの距離が長い。

参考文献

  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

卵の形質

卵は堅い鶏卵状の卵殻をもち、サイズは直径 40~59 mm、短径 34~48 mm の長卵形、ないし直径 40~50 mm 程度のほぼ球形である。

参考文献

  • 大谷勉 2018 アカアシガメ, 大谷勉(著) 川添宣広(編) 世界のカメ類. 文一総合出版. 28.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

似ている種 (間違えやすい種)

キアシガメ(Geochelone denticulata)

参考文献

  • マーク・オシー, ティム・ハリデイ 2001 アカアシガメ, マーク・オシー、ティム・ハリデイ(著) 太田英利(監修) 爬虫類と両生類の写真図鑑. 日本ヴォーグ社. 53.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

生態

生息環境

比較的湿度の高い林縁部を主に、多湿なサバンナに生息する。サバンナの中でも比較的湿った環境を好む傾向があり、乾季のサバンナでは乾燥の進んだ環境からは姿を消す。

また、キアシガメが生息しない地域(パナマ南部、コロンビア北東部やベネズエラ西部の一部)では、熱帯雨林などの比較的湿った環境にも本種は生息している。ただし、本種の分布域内で、キアシガメの生息しない熱帯雨林はごく限られている。

サバンナに隣接した森林の林縁部も本種の生息地であり、こうした場所は、キアシガメが同地的に生息している場合もある。しかし、キアシガメは林縁部で活動することは少なく、主に森林内に生息するため、むしろアカアシガメの生息地となる。また本種はキアシガメに比べ、農耕地や牧草地などの人為的に開かれた場所で発見されることが多く、開けた環境を好む傾向がかなり強い。

参考文献

  • 大谷勉 2018 アカアシガメ, 大谷勉(著) 川添宣広(編) 世界のカメ類. 文一総合出版. 28.
  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

食性

本種はキアシガメ同様に、雨季は果実食が多くなり(キアシガメに比べ、乾季にもある程度の量の果実を食べている個体が多い)、乾季はさまざまな植物の花が主な食物となる。

そのほか、樹木の葉、根、樹皮、草本、キノコなどのさまざまな植物質や、シロアリなどの昆虫、陸生の巻貝、爬虫類、鳥類、哺乳類の死体、土や腐植、砂礫などを食べる。

本種もキアシガメ同様、発酵したアルコール臭を発した果実などの植物質を好む傾向がある。

参考文献

  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

活動時間帯

昼行性

参考文献

  • マーク・オシー, ティム・ハリデイ 2001 アカアシガメ, マーク・オシー、ティム・ハリデイ(著) 太田英利(監修) 爬虫類と両生類の写真図鑑. 日本ヴォーグ社. 53.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

生殖行動

アカアシガメの挑戦行動では、同じ方向を向いて並んで行う場合もあるが、正面から向かい合ってこの行動を行うことが多く、その際の伸ばした頸を小刻みに何度かに分けて1方向に曲げる動作を素早く繰り返す。

参考文献

  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

産卵

産卵は6~9月に行われ、一度に4~15卵を産む。孵化日数は150日前後である。29~31℃で人工孵化させ、117~158日で孵化した例がある。孵化仔の前方の縁甲板にはキアシガメの孵化仔に見られるような歯状の突起はない。

雌は深さ 20 cm 程度の穴を掘り、そこに1度に2~7卵を産む。ほとんどの雌は年に複数回産卵する。飼育下では年に6回産卵した例もある。

参考文献

  • 越河暁洋 1996 アカアシガメ, 長坂拓也、松本通範、富田京一、越河暁洋、池田純(著) 千石正一(監修) 長坂拓也(編) 爬虫類・両生類800種図鑑. ピーシーズ. 195.
  • マーク・オシー, ティム・ハリデイ 2001 アカアシガメ, マーク・オシー、ティム・ハリデイ(著) 太田英利(監修) 爬虫類と両生類の写真図鑑. 日本ヴォーグ社. 53.
  • 大谷勉 2018 アカアシガメ, 大谷勉(著) 川添宣広(編) 世界のカメ類. 文一総合出版. 28.
  • 安川雄一郎 2000 アカアシガメ, 安川雄一郎(著) クリーパーNo.61:旧リクガメ属の分類と自然史3. クリーパー社. 18₋26.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

関連情報

飼育方法

気温の高い多湿な地域に生息しており、幼体は飼育下でも低温と乾燥に弱いため注意する。成体になると乾燥には強くなるが、低温には非常に弱く、ケージ内の温度は28~30℃位と高めに設定する。床材は常時ある程度湿らせ、体が充分に浸かれる大きめの水入れも常設したい。

雑食傾向が強いため、餌は葉野菜や野草を中心に、栄養価の高い果物や人工飼料を多めに混ぜて与えたい。

また極端に強い光と多様な紫外線を嫌い、飼育下でも朝方や夕暮れ時の薄暗い時間帯に行動する傾向があるくらいである。強い光と多量の紫外線を照射するような照明器具の使用は避けた方がいい。他種との混育のためやむなくこれらを使用する場合には、身を隠せるシェルターを設置する。

参考文献

  • 山田和久 2008 アカアシガメ, 山田和久(著) 爬虫・両生類ビジュアルガイド:リクガメ. 誠文堂新光社. 24₋27.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

その他

依然普通に見られるが、食料としての過度な採集も続いている。また農地化を目的とした野焼きの際、しばしば捕獲される。

参考文献

  • マーク・オシー, ティム・ハリデイ 2001 アカアシガメ, マーク・オシー、ティム・ハリデイ(著) 太田英利(監修) 爬虫類と両生類の写真図鑑. 日本ヴォーグ社. 53.

最終更新日:2020-10-09 ハリリセンボン

種・分類一覧