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イモリ科(Salamandridae)の分類 両生綱(Amphibia)
イモリ科(Salamandridae)の概要 Caudata

イモリ科(Salamandridae)

【 学名 】
Salamandridae

基本情報

生息状況

本来身近な生きものでだったイモリも、近年のいろいろな開発や水田の圃場整備などによって、平野部ではみかけることがまれになり、地域的な絶滅が進行している。イモリの身を助けるのに役立ってきた皮ふの毒も赤い腹も、生育環境の悪化、喪失という敵の前には何の役にも立たない。

イモリがこれから身近な動物として生きのびるためには、生育する水辺の環境の保全が不可欠である。

参考文献

  • 林光武 1996 イモリ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. pp. 24-25.

最終更新日:2021-04-02 ハリリセンボン

形態

卵の形質

イモリの卵は、ほかの両生類と同様、ゼリー質に包まれており、直径 2 mm前後である。産卵場は池や緩やかな流れのある小川などで、雌は、水中の落ち葉や草の根などを後ろ足で折りたたみ、そのなかに1個ずつ卵を産みつけていく。

1度に産むのは、ふつう数個から40個程度で、繁殖期間中何度も産卵する。繁殖期を通して産む卵の数は野外では調べられていないが、飼育個体では、人為的なホルモン投与を行わなければ100~400個ほどである。

参考文献

  • 林光武 1996 イモリ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. pp. 24-25.

最終更新日:2021-04-02 ハリリセンボン

生態

天敵

マムシ、ゴイザギ、カラスなど

参考文献

  • 林光武 1996 イモリ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. pp. 24-25.

最終更新日:2021-04-02 ハリリセンボン

生殖行動

4月から7月上旬にかけてがイモリの産卵期であり、この産卵期と秋に、雄の求愛行動を観察することができる。この季節の雄の尾や胴体、頭部の側面は、婚姻色とも呼ばれる紫がかった色に変わる。

雄は、水底を歩きまわり、ほかのイモリを見つけると泳ぎ寄っていき、鼻を押しつけてにおいをかぐ。相手が雄だった場合は、さっさと離れていくだけだが、相手が雌だった場合、その進路をふさぐように雌の鼻先でさかんに尾を震わせる。このとき、総排出腔が開き、なかにある毛様突起から雌を誘惑するフェロモンを放出する。

雄はさかんに雌に求愛するが、雌がその求愛を受け入れることは少なく、たいていの場合、雄を振り切るように泳ぎ去ってしまう。

求愛を受け入れる場合、雌は雄の首や胴体を軽く鼻先でつつく。すると雄は体の向きを変えて雌に尻を向け、尾をまげてゆっくりと前進する。そして、雌は雄の後について歩き、また鼻先で雄の尾をつつく。雄は、尾を曲げたまま持ち上げて、総排出腔から精子が入った袋(精包)を水底に落として、さらに前進する。雌は雄の後ろについて歩き、精包の上を総排出腔が通るとき、総排出腔周辺部分を伸ばす。すると、精包は粘着性があるので、雌の総排出腔周辺にくっついて、内部に取り込まれる。取り込まれた精包から出た精子は、総排出腔内にある貯精のう(嚢)呼ばれるところにたくわえらえる。雌は産卵のときに、この精子を使って卵を受精させるので、カエルやサンショウウオなどとは違い、産卵の際に雄がいる必要はない。

参考文献

  • 林光武 1996 イモリ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. pp. 24-25.

最終更新日:2021-04-02 ハリリセンボン

その他生態

腹の赤さは、イモリが毒をもつことを捕食者に伝える警告色であると考えられている。

イモリは敵におそわれると、皮ふから臭くて白い液を分泌するが、この液が眼に入ったり粘膜にふれたりするとひりひりと痛む。また、口に入ると、とてもいがらっぽく苦いので、捕食者から身を守るのに十分役立っているのだろう。

アメリカ産のカリフォルニアイモリ属 Taricha のイモリでは、皮ふなどにフグ毒と同じテトロドトキシンが含まれており、日本産のイモリの毒もそれとよく似た性質のものであることが確かめられている。

このような毒をもつため、マムシ、ゴイザギ、カラスなどによる捕食例はあるものの、小動物のわりにはイモリの天敵は少ない。

卵からふ化した幼生には、外鰓とバランサー(平均体)と呼ばれる1対の棒状の期間が頭部にあるが、バランサーはふ化後5日前後で脱落してしまう。

幼生は、水中の無脊椎動物を食べて成長して、夏から秋にかけて全長 30~50 mm前後で変態し、上陸する。子イモリは、小さな無脊椎動物を捕食して陸上で生活する。

性成熟して、水中での繁殖行動に参加するようになるまで、平地では3年ほど、標高が高い山地などではそれ以上かかるものと考えられている。

参考文献

  • 林光武 1996 イモリ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. pp. 24-25.

最終更新日:2021-04-02 ハリリセンボン

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