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カナヘビ科(Lacertidae)の分類 爬虫綱(Reptilia)
カナヘビ科(Lacertidae)の概要 Squamata

カナヘビ科(Lacertidae)

【 学名 】
Lacertidae

基本情報

分布

カナヘビ科は世界に200種ほどが知られ、そのうちの3属6種が日本に分布する。
カナヘビ属の二ホンカナヘビ、アオカナヘビ、ミヤコカナヘビ、アムールカナヘビと、サキシマカナヘビ属のサキシマカナヘビ、ホンカナヘビ属のコモチカナヘビである。
アフリカにもっとも種類が多く、アジアには属も種も比較的少なくて、ジャワやボルネオより東へは広がっていない。しかし、北へは広く分布し、とくにヨーロッパ北部からシベリアや樺太まで広がっているコモチカナヘビは、爬虫類のうちではもっとも北極に近い場所に達している種である。また、第三紀の始世紀には、すでにコモチカナヘビの仲間の出現が報告されている

カナヘビ科は旧大陸全体に分布し、アフリカからユーラシア全域に広がっている。

ホンカナヘビ属はヨーロッパを中心に、アフリカ北部、アジアまで分布する。ホンカナヘビ属では、胎生の種はコモチカナヘビだけで、他は卵生である。ヨーロッパ、アフリカに分布するホンカナヘビ属の種や近縁のグループは体形が比較的ずんぐりしていて、体表に光沢があり、カナヘビ属でやサキシマカナへビ属とは見た目もだいぶ異なる。そのホンカナヘビ属の中で、唯一東アジアにまで分布を広げているのはコモチカナヘビで、胎生のゆえに寒地に生息域を大きく広げることができたと考えられる。

カナヘビ属は沿海洲南部から中国東部、海南島、台湾、朝鮮半島、日本、インドシナ半島、インド・アッサム地方、マレー半島、ボルネオ島、スマトラ島、ジャワ島などに分布する。

サキシマカナヘビ属は、八重山諸島と中国に2種だけが知られる。
他に東アジアに分布する細長いカナヘビのグループとして、中国南部と台湾南部と台湾の山地から知られるヒラユビカナヘビ属がいるが、最近カナヘビ属に含める見解が出されている。

参考文献

  • 中村健司・上野俊一 1963 カナヘビ科, 中村健司、上野俊一(著) 原色日本両生爬虫類図鑑. 保育社. 127.
  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

亜種・品種

カナヘビ科(Lacertidae)

ホンカナヘビ属(Lacerta)(1)
・ニホンカナヘビ
学名:Tokydromus tachydromoides
英名:Japanese grass lizard

カナヘビ属(Tokydromus)(4)
・コモチカナヘビ
学名:Lacerta vivipara
英名:Viviparous lizard

・アムールカナヘビ
学名:Tokydromus amurensis
英名:Amur grass lizard

・アオカナヘビ
学名:Tokydromus smaragdinus
英名:Green grass lizard

・ミヤコカナヘビ
学名:Tokydromus toyamai
英名:Miyako grass lizard

サキシマカナヘビ属(Apeltonotus)(1)
・サキシマカナヘビ
学名:Apeltonotus dorsalis
英名:Sakishima grass lizard

参考文献

  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

形態

成体の形質

体形は一般にトカゲ型で、よく発達した四肢を持ち、体表は瓦状に重なり合った鱗で覆われているが、頭部以外には皮骨板がない。背面の鱗は著しく分化しているのがふつうである。頭部には左右相称の大きい鱗板があり、眼瞼の構造には変異があるが瞳孔は多少とも丸い。

舌はかなり細長くて先端が深く切れ込み、鱗状の突起か横に細長いひだかで覆われている。

頭骨は一般に細長く、眼窩の後と側頭部とに完全な橋がある。側頭窩は非常に小さいか、あるいは後額骨の延長によって完全に覆われている。左右の前顎骨は癒着して単一となり、額骨は単一であることも対をなしていることもある。後眼窩骨と後額骨とは癒合している場合があり、顴骨と涙骨とは原則として発達している。

歯は側生で、側方ではしばしば二尖形または三尖形になる。また、翼状骨にも歯のあることが多い。脊椎骨は前凹形、鎖骨の内端は拡がって、そこに孔があいている。副胸骨がない。原則として、大腿部または鼠径部に小孔の列がある。尾は特に切れやすくはないが、切れると容易に再生する。

参考文献

  • 中村健司・上野俊一 1963 カナヘビ科, 中村健司、上野俊一(著) 原色日本両生爬虫類図鑑. 保育社. 127.

最終更新日:2020-11-30 ハリリセンボン

生態

食性

昆虫類やクモなどの小型の節足動物を主に捕食し、動く獲物は見逃すことが多いが、飼育下では蛹になったミールワームも食べるため、動くものを視覚で認識するというわけではないようである。また飼育下では果実の小片も食べる。臭い匂いを出す虫は好まないため、カメムシ、テントウムシ、アリなどは避ける。

参考文献

  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

天敵

天敵はヘビ類や捕食性の鳥類、哺乳類である。幼体では、クモ類やカマキリ、ニホントカゲなどさらに広い範囲の天敵が加わる。

参考文献

  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

活動時間帯

昼行性で主に地上性である。日照のある時に日光浴を行い、日射や温まった石などを利用して体温調節をしながら、体温を30℃以上になる程度まで上昇させてから活発に行動する。気温が低めで日光浴に時間がかかるときなどは、腹側部の皮膚を横に広げて、できるだけ日光に当たる面積を広げようとする。夜間は、穴に潜るタイプではない種は、草や木の葉の間や先端の地面から離れた位置、あるいは落ち葉の間に隠れて眠る。

参考文献

  • 高田榮一・大谷勉 2011 カナヘビ科, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 17.
  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

生殖行動

コモチカナヘビは胎生で年1回繁殖であるが、そのほかの種は卵生で春から夏にかけて複数回産卵する。南に住むものほど1回の産卵数が少なく、産卵回数が多くなる傾向がある。

卵は白色で、卵殻は柔軟性があり、湿ったところに産み落とされる。水分をまわりから吸収して、孵化直前までに長さが1.5倍ほどに膨らむ。周辺の温度によって変化するが、一般的には1ヵ月ほどで孵化する。親は産卵すると、まったく卵の世話をすることなく立ち去る。
幼体は孵化の時、吻端にある卵歯を使って卵殻を切り開いて外に出て、その後も自力で生活する。

アムールカナヘビは土を掘って産卵してから埋めるが、ニホンカナヘビなどは湿った場所の石や朽ち木の下、草の根元などに産みこむだけのことが多い。腐敗しにくく、安定して湿り気が保たれる場所は多くないため、多数の雌が同じ場所に産卵することもある。アリは卵の天敵で、噛んで穴をあけてしまうことがある。

卵生のカナヘビ類は、繁殖期間中に何回も交尾をするため、下腹部の左右から交尾の際に雄が噛んだV字形の痕がいくつも残っている。雄は交尾の姿勢に入ると、下腹部を横から噛んで位置を固定し、体をU字に曲げ総排出孔を合わせる姿勢をとる。交尾は数十分も続くことがある。

幼体は夏から秋にかけて孵化する。ニホンカナヘビの多くの個体群や、アオカナヘビ、ミヤコカナヘビ、サキシマカナヘビでは翌年に成熟して成体となる。二ホンカナヘビの北海道の個体群では成熟は2年目であり、そのほかの北部の個体群や山岳地域の個体群でも成熟するのが2年目になることがある。
また、アムールカナヘビとコモチカナヘビも成熟は2年目である。冬には、ニホンカナヘビ、アムールカナヘビ、コモチカナヘビが土中で完全に冬眠に入る。アオカナヘビ、ミヤコカナヘビ、サキシマカナヘビについては、冬でも暖かい日には出てくることがあり、完全に冬眠に入る時期があるかどうかはっきりしていない。いずれも秋、冬は生殖活動は完全に停止し、春になってから卵の発達などが始まる。

参考文献

  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

特徴的な行動

アムールカナヘビは地面の穴に潜って逃げるが、それ以外の種は草木のあいだをぬうようにして行動する。落ち葉の隙間に隠れているかと思うと、草木に登り渡るといったように、活発な動きによって敵を欺いて逃げる。捕食者に捕まえられそうになったときは、尾を自切する。切れた尾は激しく動くので、捕食者の目を切れた尾の方にそらす効果がある。尾は再生するが、再生初期は黒い柔らかい皮膚で覆われているため、すぐに区別がつく。

参考文献

  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

その他生態

日本に分布する6種では、とくに社会的な個体関係は見られず、なわばりや順位のようなものは知られていない。限られた空間の中で飼育しても、個体間の闘争のような行動はほとんど見られない。ただ野外において同種の足音に敏感に反応することや、雄が雌よりもがっちりとした頭をもつことなどを考えると、まったく個体間の闘争がないとは断定できない。

各個体はある程度の広さの行動圏をもつが、広さは数 m 内外からもっと広い場合まで、個体のおかれた状況によって変化する。逃避行動などのパターンが決まっていることがあり、サキシマカナヘビでは、枝から枝へと同じルートを循環して逃げ回ることがある。ニホンカナヘビでは、一旦音をたてて勢いよく直進して逃げた後回転して静止し、こっそりと元の位置に戻るといった逃避行動をとることがある。いずれの場合も、体色が保護色として背景に溶け込むことが、その効果を助けている。行動圏を大きく移動させることがあり、とくに幼体が成長する過程では移動がよく起きるようである。

参考文献

  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

関連情報

その他

寄生虫は目立つものとして、ニホンカナヘビの体側について吸血するタネガタマダニがいる。アオカナヘビでは内部に寄生虫としてカイチュウの1種が体腔内に高い頻度で現れ、卵巣内に侵入することもある。目立つ病気としては、コモチカナヘビの頭部にできる腫瘍がある。

参考文献

  • 竹中践 1996 カナヘビ類, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 78₋82.

最終更新日:2020-05-01 ハリリセンボン

種・分類一覧