- 解説一覧
- セグロアジサシ(Sterna fuscata)について

基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:39~46 mm
・翼長:277~305 mm
・跗蹠:22~25 mm
・尾長:132~196 mm
・卵:長径 46.4~58 mm×短径 34.7~38.1 mm 平均長径 52.3 mm×短径 36 mm
参考文献
- 清棲幸保 1954 セグロアジサシ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 798-799.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- 分布
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世界各国の熱帯・亜熱帯の島や沿岸で繁殖する。
日本では琉球諸島の沖縄本島・仲ノ神島、尖閣諸島の北小島・赤尾島、小笠原諸島の西之島、南鳥島などに夏鳥として渡来し、繁殖する。
繁殖地以外では、北海道、本州、四国、などに迷行の記録があり、マリアナ諸島などの南方地域から台風によって運ばれてくる個体であると考えられている(中村, 1982)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 セグロアジサシ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 243.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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チドリ目 アジサシ科
参考文献
- 吉井正 2005 セグロアジサシ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 298.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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頭頂・後頭頸から背・翼上面・尾まで黒色。額は白く、黒色の過眼線がある。
頬・喉から下面は白色。下部小雨覆は白く、初列風切・次列風切の下面は褐色みがある。
尾は長く燕尾で、外側尾羽は白色。嘴・尾は黒色。幼鳥は下尾筒が灰色、翼下面が白いほかは黒褐色で、背・翼上面の羽縁は白い。
第1回夏羽は腹が白く、羽縁の白色はなくなる。
参考文献
- 吉井正 2005 セグロアジサシ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 298.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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幼鳥1年目:頭上、後頭は黒褐色、体の上面は黒褐色で、各羽端にはクリーム色の幅の広い縁があり、雨覆羽も同様であるが、やや黒色勝ちである。
体の下面は褐色、腹、下尾筒は灰白色で下尾筒の各羽端には淡赤錆色の縁がある。嘴色は褐色、脚色は褐色。
2年目:体の上面は暗石盤色で、各羽には淡色の細い縁があり、体の下面は石盤灰色を帯びた白色で、腹、下尾筒は淡灰色である。
参考文献
- 清棲幸保 1954 セグロアジサシ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 798-799.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は純白色、クリーム色、淡紅色、オリーヴ色、褐色、赤味のあるクリーム色などの地に、暗褐色、黒褐色などの粗大な斑紋や斑点と灰鼠色の斑点とが散在する。
参考文献
- 清棲幸保 1954 セグロアジサシ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 798-799.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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海岸、洋上で生活するアジサシ類で、沿岸や島嶼の海岸や岩礁で集団繁殖する。
繁殖地として、砂浜や背の低い草が生育する開けた平坦地を好み、岩石が積み重なっているような場所や岩棚を選ぶ傾向はない。
島の周辺の比較的波の静かなところに多い。
アジサシ類のなかでもとくに外洋で採食する性質が著しく、長距離を飛び続けることができる。
繁殖期には地上に下りるが、歩くことは苦手で、もっぱら砂の上や岩の上で休息する。
羽毛に防水機能がなく、長時間水面に浮くことはできない。
参考文献
- 中村雅彦 1995 セグロアジサシ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 243.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- 食性
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海岸や洋上の上空をヒラヒラとはばたいて飛び回り、獲物を見つけると上空から直角に急降下して海の表層にいる魚やイカを捕らえる。
また、尾羽を広げて翼をバタバタと激しくはばたかせる停空飛翔を行いながら餌に狙いをつけることもある。
主に魚類やイカなどの軟体動物を食べ、雛にも同様の餌を与える(安部ほか, 1986)。
餌を丸呑みして集団繁殖地にもち帰り、吐きもどして雛に与える。
早朝、明るくなる前に繁殖地を離れ、外洋に出て採食し、夕方暗くなってからもどってくるため、繁殖期のとくに日中にはコロニー周辺の海上では見られない(安部ほか, 1986)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 セグロアジサシ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 243.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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南西諸島では4~8月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。
小笠原諸島の西之島では1月と6~7月に2回産卵する(倉田・金子, 1982)。
砂浜に窪みをつくって巣としたり、岩礁の上に直接産卵するが、いずれの場合も巣材を使用しない。
1巣卵数は1個、27~30日雌雄交替で抱卵する(Feare, 1976)。
巣は早成性で、孵化後数日で巣を離れる。雄雌共同で雛に給餌する。
雛は常に片親につき添われて成長するが、巣立ち(初飛翔時は孵化後約60日目)が近づくと営巣地には雛だけが残され、雛集団はクレイシとよばれる託児所をつくる(河野, 1991b)。
夕暮れに餌を持ち帰った親鳥たちが鳴きながら集団の上空を旋回すると、雛はすぐ自分の親鳥の鳴き声に応えて自分の存在を知らせる。
数十 ㎞の沖合で餌をとり、もち帰った餌は夜間に数回に分けて給餌する。
親鳥は巣立ち後、繁殖地を離れてもいっしょに飛び続け、雛の採食技術が完成するまで空中給餌をして世話をする。
8月下旬になると、幼鳥集団は鳴き合いながらいっせいに飛び立つ行動を繰り返し、繁殖地の上空を高く舞うようになる。
参考文献
- 中村雅彦 1995 セグロアジサシ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 243.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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クヮッ、またはキリワック、ワックと啼き、飛翔中に主として啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1954 セグロアジサシ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 798-799.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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3月の繁殖地の上空に集結し、その後4月下旬に営巣地に初めて着陸するまでの40~50日、地上に下りることも水面に浮いて休むこともなく、ただひたすら飛び続ける。
大集団になるといっせいに繁殖地に下り、コロニーをつくって繁殖する。
番は、巣を中心に半径 30 ㎝ぐらいの狭いなわばりを構えて分散する。
なわばりの中に隣の雛が迷い込んだりすると、なわばり所有者は激しくつついて攻撃する。
コロニーでは、各番の繁殖の進行は比較的同調している。
参考文献
- 中村雅彦 1995 セグロアジサシ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 243.
最終更新日:2020-06-18 キノボリトカゲ