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マヒワ(Spinus spinus)の分類 アトリ科(Fringillidae)
マヒワ(Spinus spinus)の概要 Spinus

マヒワ(Spinus spinus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Spinus spinus (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:10~12 mm 
・翼長:66~76 mm  
・跗蹠:12~16 mm
・尾長:39~49 mm 
・体重:9~17 g
・卵:長径 14.7~18.5 mm×短径 11.1~13.5 mm 平均長径 16.4 mm×短径 12.3 mm

参考文献

  • 清棲幸保 1955 マヒワ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 52-54.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

分布

旧北区。ユーラシア大陸の亜寒帯に広く分布し、日本には大陸から冬鳥として多数が全国に渡来する。

北海道では大雪山(清棲, 1978)、十勝地方(藤巻ほか, 1980)や根室(高田ほか, 1981)で繁殖するものが少数知られるが、本州以南での繁殖記録はきわめてまれで、巣立ち後の幼鳥が福島県(湯浅, 1953)、能登半島(美馬, 1985)で観察されたり、青森県での交尾の観察例(墨田, 1948)があるにすぎない。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 マヒワ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 118.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

スズメ目 アトリ科

参考文献

  • 吉井正 2005 マヒワ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 468.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

人間との関係

畑にて穀類を食することがその害であるが、しかしその程度はあまり著しいものではない。

益としては夏季害虫、特に蚜虫の類を多く食することである。

参考文献

  • 山階芳麿 1980 マヒワ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 110-113.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄】
額、頭上、後頭、喉の中央は黒色で、各羽縁は灰色である。眼の上には緑色を帯びた黄色の眉斑がある。

眼先、耳羽は暗緑色、頬、喉、頸側は緑色を帯びた黄色、後頭は暗緑色である。

肩羽と背は暗緑色で、各羽には暗色の不明瞭な軸斑がある。

胸は多少緑色を帯びた黄色、腹は黄白色で、下腹ほど白色勝ちである。

脇と下尾筒は黄白色で、各羽には黒色の軸斑がある。腰は黄色で、各羽端は緑色を帯び、上尾筒は黄色で、各羽端は灰色または緑色を帯びている。

風切羽は黒褐色で、初列風切の外弁には黄色の細い縁があり、羽端は灰白色である。

第5羽から第9羽までの外弁の基部は鮮黄色、内弁の基部は黄白色、第2羽には細い縁がない。

次列風切と三列風切の外弁の基部は黄色、内弁の基部は黄白色で、次列風切の羽端は灰白色、外弁には黄色の細い縁があり、三列風切の羽端と外縁とは黄味を帯びた灰白色である。

大、中雨覆は黒褐色で、先端はやや緑色を帯びた黄色である。

小雨覆は暗緑色、初列雨覆の中央と小翼羽は黒褐色、腋羽は灰色を帯びた緑黄色である。

尾は中央の1対は黄色を帯びた黒褐色で、各羽縁は灰色である。

ほかの尾羽は黄色で、羽軸は黒褐色、羽端には幅 10 mm位の黒褐色の帯がある。外側の尾羽の外縁は黒褐色である。

嘴色は肉色で、先端は暗褐色。虹彩は暗褐色、脚色は褐色、脛羽は白色。

【雌】
頭上、後頭、背は黄色を帯びた灰褐色で、各羽には黒褐色の軸斑がある。

耳羽、頬、頸側は黄色を帯びた灰白色で、各羽には褐色の軸斑がある。

腹、脇は灰白色で、各羽には黒色の軸斑があり、腰は黄白色で、各羽には黒褐色の軸斑がある。

上尾筒は黄色を帯びた灰褐色で、羽縁は灰色、下尾筒は白色である。ほかは雄と同じである。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 マヒワ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 52-54.
  • 吉井正 2005 マヒワ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 468.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

背面は雌成鳥に似るも淡褐色味に富み、後頸と腰とはバフ色を帯びている。

眼の後方の斑・頸側・喉および胸は微かに黄色を帯びているに過ぎない。

下面の軸は多い。翼は成鳥と同様であるが、内側次列風切と雨覆とにはバフ色の縁がある。

また風切の基部の黄色部の範囲は狭い。

【第一回冬羽】
幼鳥は8月および9月頃に体羽・雨覆(初列雨覆を除く)および三列風切を換羽して、第1回冬羽となる。

この新羽は成鳥と同様であるが、雄においては背の縦斑明らかであり、雌においては頭および背が褐色に富んでいる。

【第2回冬羽】
幼鳥は第2年の秋季に風切・初列雨覆および尾羽をも含み全体を換羽して第2回冬羽となる。この羽衣は成羽と同じ。

参考文献

  • 山階芳麿 1980 マヒワ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 110-113.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は淡青色で、赤錆色の斑点と線形の斑があり、ときには暗褐色の斑があるものもある。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 マヒワ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 52-54.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

生態

生息環境

本州には主に冬鳥として渡来し、渡来初期には、亜高山帯のシラビソ、コメツガなどの針葉樹林で大群が見られる。

積雪期の11月下旬頃には次第に山を下って、山麓のカラマツ林や落葉広葉樹林、雑木林などに生息するようになる。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 マヒワ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 52-54.
  • 中村雅彦 1995 マヒワ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 118.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

食性

越冬期にはハンノキ類、マツ、ダケカンバ、ヤシャブシ、アカマツ、モミ、スギなどの植物の実をついばむ。

ダケカンバの堅果にとりつき、太目のピンセットのようなくちばしを鱗片の間に入れ、こじあけながら種子をとり出す。

実を食べている間は全く無言であるため、気づかないでうっかりその下を通りすぎてしまう。

農作物ではイネ、ムギ、キビ、ソバなどの地上に落ちた種子もついばむ。

数十羽の群れで採餌することが多く、群れのまとまりはよい。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 マヒワ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 118.
  • 清棲幸保 1955 マヒワ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 52-54.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は5~7月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。

カバノキ、モミ、マツなどの林に営巣し、主に枯れ草や枯れ茎を用いて椀形の巣をつくる。

1巣卵数は6~7個、雛は2週間足らずで孵化し、雛はさらに2週間前後で巣立つ(清棲, 1978)。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 マヒワ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 118.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

鳴き声

チュゥイーン、チュゥイーンまたはヂュイーン、ヂュイーンなどと啼き、小声でぐぜりを繰り返すことがある。

群飛中に啼き、見通しのよい樹梢にとまって啼くことが多い。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 マヒワ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 52-54.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

特徴的な行動

2~3番でルーズコロニーを形成して(場所によってはさらに大きなルーズコロニーにもなる)、狭いなわばりを防衛する(Newton, 1972)。

繁殖様式はアトリ類と異なり、まず番を形成し、巣場所を選択してからなわばりを確立する。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 マヒワ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 118.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

その他生態

渡来や渡去期には10羽位から数100羽で群れ、特に渡りのときは密集して高く低く飛翔する。

針葉樹の樹梢に群れるのが常で、枝葉の間を活発に枝移りしつつ種子を啄んでいる。

樹上生活が主であるが、ときには地上でも餌を捜し求め、春季アカマツ林などで地上に落ちた種子をあちこちと跳ね歩きつつ啄んでいることがある。

ときには小川の畔などに降りて水飲みをすることがある。飛翔時には波形に飛翔する。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 マヒワ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 52-54.

最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ

種・分類一覧