- 解説一覧
- コサメビタキ(Muscicapa latirostris)について

コサメビタキ(Muscicapa latirostris)
- 【 学名 】
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Muscicapa latirostris Raffles, 1822
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:9~11 mm
・翼長:雄 68~76.5 mm 雌 66~73 mm
・跗蹠:12~14 mm
・尾長:42~53 mm
・体重:10~16 g
・卵:長径 15.3~18 mm×短径 9.5~14 mm 平均長径 16.6 mm×短径 12.9 mm 重量 1~2 g
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。ヒマラヤ、シベリア南部から中国東北部や朝鮮半島などで繁殖し、インドから中国南部、ボルネオ島などに渡って越冬する。
日本には夏鳥として4月ごろ渡来し、北海道から九州までの全国各地で繁殖する。
参考文献
- 中村雅彦 1995 コサメビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 130.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 学名の解説
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種小名は広い嘴の意。
参考文献
- 吉井正 2005 コサメビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 218-219.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ヒタキ科
参考文献
- 吉井正 2005 コサメビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 218-219.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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成鳥雄の冬羽は、額より上尾筒まではすべて帯褐灰色であるが、頭上は濃く腰以下はやや淡い。
尾は暗灰褐色にて外縁は淡い。小雨覆・中雨覆は背と同色。
大雨覆・初列雨覆・風切は暗灰褐色で、大雨覆および次列風切には狭い淡色縁があり、三列風切にはやや広いバフ灰色の縁がある。
眼先は灰白色。眼瞼には白色羽があり、顕著な白色環を現している。頬・耳羽・頸側・胸側・脇は帯褐灰色。
腮・喉の上下部・胸の中央は淡い汚灰色。喉の下部・腹・下尾筒は白色。
夏羽は、羽縁の摩耗により頭上は多少暗色の軸斑を現し、翼の淡色縁は狭くなる。
雌の成鳥は、雄成鳥に酷似するも、下面は一般に灰色を帯び、胸および脇の帯褐灰色の範囲は広く、かつ濃い。
しかし中には雄と区別し難いものもある。嘴は扁平で、上方より見れば二等辺三角形をなす。嘴毛には灰白色が多く、ほとんど鼻孔を覆う。
ひげはやや細くて長いが嘴中央付近でとまる。
上嘴と下嘴の先端は黒褐色、下嘴の大部は煙灰色またはバフ色。足は黒褐色、虹彩は褐色。
参考文献
- 吉井正 2005 コサメビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 218-219.
- 山階芳麿 1980 コサメビタキ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 17-21.
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- 幼鳥の形質
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孵化直後の雛は肉色の裸体のままで、眼の上、後頭、背、上膊、前膊、腿などの羽域の白色の初毛が生えている。
口中は黄色、口角の縁は淡黄色である。
幼鳥は、頭上は黒褐色にて各羽には鮮明な、淡バフ色の円形中央斑がある。
背の同様であるが、円形班は一層大きくかつ不鮮明である。腰は淡バフ色で不鮮明な暗色縦斑がある。
上尾筒はバフ灰色で先にはバフ色の円形斑がある。尾は淡黒色。中雨覆および小雨覆は背と同色。
大雨覆は帯褐黒色で先端に三角形のバフ色斑があり、風切は帯褐黒色で内側の次列風切および三列風切にはバフ色の縁がある。
眼先および耳羽は淡バフ色で暗褐色の縁がある。眼瞼の羽毛は帯バフ白色。
腮以下の下面はすべて白色だが、胸には不鮮明な黒褐色の小縦斑がある。
嘴は暗褐色なるも、下嘴の基部はストレートバフ色。足は暗褐色。
【第1回冬羽】
幼鳥は8月および9月に体羽・小雨覆・中雨覆のみを換羽して第1回冬羽となる。
新たに生じた羽毛は成鳥冬羽よりもやや濃く、かつ褐色味に富む。
第2回冬羽。幼鳥は第2年秋季の全身の換羽で成鳥冬羽となる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
- 山階芳麿 1980 コサメビタキ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 17-21.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は青味のある灰白色または褐色を帯びた灰白色で斑紋を欠くものが多いが、ときには地色よりやや濃色の不明瞭な斑紋が一面にあるものもある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
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生態
- 生息環境
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夏鳥として渡来し、平地から標高 1,000 mぐらいまでの落葉広葉樹林、雑木林、カラマツ林に生息し、密生した林より明るい林を好む。
一般には、同属のサメビタキよりも標高の低い山に生息し、両種はすみ分けている。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
- 中村雅彦 1995 コサメビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 130.
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- 食性
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木の枝にじっと止まり、空中を飛ぶチョウ、ガ、ウンカ、アブなどの昆虫をフライングキャッチ法で捕獲する。
林の中で飛翔性昆虫を見つけると枝からパッと飛び立ち、瞬間的に空中の一点で停止飛翔をして、虫をすばやくくちばしで捕えて再び元の枝に戻る。
虫を捕えるとき、くちばしで昆虫をはさむパチッという音がする。
どちらかというと、止まり場より下方に飛び立つことが多い。
まれに木についている青虫も食べ、ほかにもゴミムシ、ゾウビムシ、コガネムシなどの昆虫も食する。
林の中の空地を好み、大木の下枝に止まり場を構えることが多い。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
- 中村雅彦 1995 コサメビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 130.
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- ライフサイクル
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繁殖期は5~7月、年に1回の繁殖がふつうで、一夫一妻で繁殖する。
高木の葉がない水平な枝の上に樹皮などで椀形の巣をつくり、外装をウメノキゴケで覆う。
下から見ると、巣は木のこぶのように見える。
雌雄共同で巣をつくり、多量のコケ類、樹皮、鳥類の羽毛、クモの糸を運び、産座には哺乳類の毛、イネ科の細根、鳥の羽毛を敷く。
1巣卵数は4~5個、1日1卵づつ産卵する(清棲, 1978)。
抱卵日数は12~14日(吉田, 1976)、抱卵はほとんど雌が行い、雄は抱卵中の雌に停空飛翔しながら瞬間的に給餌することがある。
雛が孵化すると雌雄共同で雛に給餌し、雌が抱卵中は、雄は雌に餌を渡して雌が雛に給餌する(吉田, 1976)。
雛は12~14日ぐらいで巣立つ。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
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- 鳴き声
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5月から6月頃にだけ囀り、他の時期には幼鳥に警戒を与えるとき以外にはほとんど鳴かない。
5月から6月頃には樹梢の見通しのよい頂にとまってぐぜりに似た小声でクチョ、クチョ、クチョ、チチ、チチまたはピピ、ピイ、ピイ、ピイ、ピチピチ、ピチ、ピチ、ピチ、ピチと可憐な声で囀り続け、ほかの鳥の啼き声をもときどき真似る。
著者はしばしばジュウイチ、ホトトギス、ヒガラなどの啼き声を真似るのを聞いたが、本物より遥かに小声である。
警戒時にはチッ、チッと鋭い金属性の声で啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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番ごとになわばりを構えて分散する。なわばりの広さは半径 50 ㎝ぐらい(吉田, 1976)。
渡りの途中や渡来直後にはぐぜるような小さな声でさえずるが、番になるとさえずらなくなる。
ほかの鳥の泣き声をまねることもある。雌雄または単独で生活することが多く、渡りのときも群れることはまれである。
参考文献
- 中村雅彦 1995 コサメビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 130.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- その他生態
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雄雌または単独で生活することが多く、渡りのときにも群棲することは稀である。
樹上生活が主で、樹梢にとまることが多いが、稀には地上に降りて餌を漁ることもある。
見通しのよい樹梢にとまり、附近に飛来する昆虫類を飛び上がって啄み、また元の樹梢に舞戻る習性がある。
ときには電線に止まることもある。
繁殖を終えた頃には幼鳥をつれた家族群をなし、ほかの鳥類などが幼鳥に近づくとパチ、パチと嘴で音を立てて威嚇し、チッ、チッと鋭い金属性の声で絶えず警戒を与える。
飛翔時には翼を迅速に羽搏いてパッ、パッと電光的に枝から枝に舞移る。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コサメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 220-222.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ