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ヒヨドリ(Hypsipetes amaurotis)の分類 ヒヨドリ科(Pycnonotidae)
ヒヨドリ(Hypsipetes amaurotis)の概要 ヒヨドリ属(Hypsipetes)

ヒヨドリ(Hypsipetes amaurotis)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Hypsipetes amaurotis (Temminck, 1830)

基本情報

大きさ・重さ

・全長:275 mm (249~290mm)
・自然翼長:125.9±5.7 mm (113.5~137.6, N=110)
・尾長:115.1±6.4 mm (103.0~129.5, N=106)
・全嘴峰長:30.8±1.3 mm (27.2~32.9, N=60)
・ふ蹠長:22.9±1.3 mm (19.1~31.3, N=105)
・体重:79.9±12.1 mm (54.0~110.0, N=111)
・卵:長径 27.5~33 mm × 短径 20~21 mm 平均長径 29.7 mm × 短径 20.4 mm 重量 6~6.5 g

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最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

分布

日本国外ではサハリン、朝鮮半島南部、台湾、フィリピン北部に分布する。

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学名の解説

種小名は暗色の耳のを意味する。

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亜種・品種

日本には8亜種が分布し、北海道・本州・四国・九 州・対馬・大隅諸島・伊豆諸島、屋久島、種子島などに亜種ヒヨドリ、小笠原諸島に亜種オガサワラヒヨドリ、火山列島に亜種ハシブトヒヨドリ、大東諸島に亜種ダイトウヒヨドリ、奄美諸島にアマミヒヨドリ、沖縄諸島・宮古諸島に亜種リュウキュウヒヨドリ、与那国島以外の八重山諸島に亜種イシガキヒヨドリ、与那国島に亜種タイワンヒヨドリが分布する。

ただしこれらの亜種に関しては、再検討が強く望まれている(日本鳥学会 2000)。

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分類学的位置付け

スズメ目 ヒヨドリ科

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人間との関係

ヒヨドリは農作物に被害を与える主要な害鳥とされており、農林水産省の資料によると、2003年度の被害面積は 4,400 ha(鳥類の中では6位)、被害量は 5,300 t(同,2位)、 被害金額は89,400万円(同,3位)であり、日本各地、特に果樹栽培地などで深刻な問題となっている。

環境省によると、2000年度には有害鳥獣駆除で約34,000羽、狩猟で343,000羽ものヒヨドリが捕獲されている。

しかし、ヒヨドリは夏季に昆虫(害虫)を多く食べ、農業に貢献している面もある。

被害の面のみを強調していると、大きな誤りを犯す可能性がある。

日本にヒヨドリが何羽生息するのかさえ分からない現状ではあるが、生息地管理を含む個体数管理手法をとりいれ、人間とヒヨドリの共存を図らな くてはいけない時期が来ているのではないだろうか。

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形態

成鳥の形質

【雄成鳥 冬羽】
頭上および後頸の羽毛はインディゴ青色を帯びた淡灰色で、各羽の先は尖り、先端は淡く、軸斑は暗色である。

背・腰・上尾筒は暗スレート灰色で各羽の羽縁はやや淡い。腰以下はオリーブ色を帯びている。

尾は角尾だが、わずかに凸なものと凹なものがある。外側の尾羽は通常外方に捩じれている。尾羽の色は暗褐色。

翼の各羽は暗褐色だが風切の内縁は淡褐色であり、初列風切の外縁は淡褐色、次列風切の外縁はオリーブ灰色、また小雨覆の先は暗スレート色である。

眼先は暗褐色。耳羽およびこれより前頸に達する不完全な狭い帯は栗色。腮・頬・喉は淡灰色。

胸は暗灰色で各羽の羽縁は淡く、喉および胸の羽毛の先は尖りかつ淡い。

下胸および腹の羽毛は暗灰色で先端に白斑があり、腹の中央はこれらの白斑が集まってほとんど白色を呈している。

腹側の羽毛は柔軟でバフ灰色。下尾筒は暗灰色で各羽には明らかな白色の縁がある。

【夏羽】
春季には換羽しない。7月頃のものは羽毛の摩耗によって多少淡くなるが、その以前のものは冬羽との差が少ない。

【雌成鳥】
雄よりも小型であるが、羽色の差はほとんどない。

【嘴・脚および虹彩】
嘴は角黒色、脚は小さく跗蹠は短く、色は褐色。虹彩はセピア褐色。

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最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

孵化直後の雛は肉色の裸体のままで初毛を欠く。幼鳥は頭の羽毛は尖ることなく尋常の形でかつ柔らかい。

頭より上尾筒までは帯褐汚灰色で、腰以下は少し淡く、かつ一層褐色を帯びている。

尾羽には淡褐色の縁がある。翼の各羽にも淡褐色の縁がある。

耳羽は暗褐色でわずかに栗色を帯びるが、前頸の栗色帯は全くこれを欠き、腮・喉は淡灰色、胸以下は帯褐色灰色で白斑は不鮮明である。

【第1回冬羽】
幼鳥は9月および10月に風切および尾羽をも含み、全身を換羽して成鳥冬羽となる。

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卵の形質

卵は淡薔薇色の地に赤褐色と淡紫色との斑紋が散在する。

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生態

生息環境

平野からかなり標高の高い山地まで生息し、林だけでなく農耕地や市街地など木のあるさまざまな環境に生息する。

かつては市街地では冬鳥であったが、東京では1968年頃から春になっても市街地に留まるようになり、1980年代には東京の都心部全域で繁殖するようになった(唐沢 1997)。

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食性

ヒヨドリの食性は多岐に渡り、果実、花蜜、花弁、葉、新芽といった植物食のものから、爬虫類、昆虫、クモ、カタツムリといった動物食、さらに人の与えるパンも食べる。

茨城県つくば市でヒヨドリが採食していた植物は木本では32科74種、草本では7科8種、農作物では6科12種におよぶ(山口 2004)。

主に液果(ベリー)を好むが乾果も採食し、ありとあらゆる種類の木の実を食べていると言ってよい。

また冬期にはコマツナやキャベツなどの葉菜類も食害する。

春から夏にかけては昆虫類が多く出てくるため、動物食を食べる割合が増え、セミなどを追いかけ回す姿をよくみかける。

ヒナには動物食を多く与える。

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ライフサイクル

繁殖期は5~9月と長く、一夫一妻で繁殖し、同一ペアが1繁殖期に3回繁殖した記録もあるが、捕食などによる繁殖失敗のための繰り返し繁殖が多く、繁殖が成功するのは7月以降であることが多い。

巣は腕型、葉のよく繁った樹木の枝分かれしたところに乗せるように、地上 1~5 mの高さにつくる。

巣材は外装に小枝やツタ、内装に草の細い茎や細根を使う。市街地の巣ではほぼ全てビニール紐が外装に使われている。

内径 6~10 cm、深さ 3~6 cmでヒヨドリの体サイズの割には小さな巣である。 

抱卵期間は12~14日で主に雌のみが行い、育雛は雌雄で行う。

ヒナは羽が生えそろう前の孵化後約10日で巣立つが、上手に飛べないので数日は巣の近くにいる。

その後も1~2ヶ月は親の世話を受ける(羽田・ 小林 1967、掃部 1995)。

つくば市での10つがいの観察では1つがいあたり年に平均2.3回繁殖を試み、全体では23回中11回成功し、10つがい中8つがいが雛を巣立たせた。

繁殖失敗の原因はほとんどが捕食によるものであった(掃部 1995,田中 2000)。

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鳴き声

ピイ―ヨ、ピイ―ヨ、ピ、ヒィーヨ、ヒィーヨと啼き、ときにはまたピッ、ピッ、ピィ―またはピュルルルル、ピィーヨとも啼く。

飛翔中にもよく啼き、1羽が啼き立てると次々に集まって来る習性がある。周年よく啼く鳥である。

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特徴的な行動

繁殖期にはなわばり分散をする。なわばりの広さは約 14,000 ㎡ぐらい(羽田・小林, 1967)。

なわばり分散の過程は不明だが、早春に集合して大騒ぎを演ずる行動があり、その集合に2羽連れが出入りするのが見られる。

なわばりの重複部ではしばしば長い戦いが見られる。巣づくり期から雛が巣立つころまで、雄は早朝に大声で叫びつつ、なわばりのパトロールをする(羽田・小林, 1967)。

北部の個体群は秋に十~数百羽の群れで南下する。10~11月に留鳥の領域をこえて大量に移動する。

春の5~6月ごろに群れで北上する。

群れは比較的コンパクトで森から森へとリープ状に飛び、水田、湖沼、海など広々としたところを通るときには、小声でよび交わしながら密集していく。

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