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クマタカ(Nisaetus nipalensis)の分類 タカ科(Accipitridae)
クマタカ(Nisaetus nipalensis)の概要 クマタカ属(Nisaetus)

クマタカ(Nisaetus nipalensis)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Nisaetus nipalensis Hodgson, 1836

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:32~36 mm
・全嘴峰:44~56 mm
・翼長:雄 470~518 mm 雌 500~540 mm 
・跗蹠:104~126 mm
・尾長:雄 325~359 mm 雌 335~395 mm 
・体重:1650~2256 ℊ
・卵:長径 69~73 mm × 短径 55~56 mm 重量 9.97 g位

参考文献

  • 清棲幸保 1955 クマタカ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 464-466.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

生息状況

1984年に特殊鳥に指定。

参考文献

  • 吉井正 2005 クマタカ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 189.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

タカ目 タカ科

参考文献

  • 吉井正 2005 クマタカ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 189.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

人間との関係

尾羽が弓矢の矢羽に用いられていた。

参考文献

  • 山階芳麿 1980 クマタカ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 788-792.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄成鳥 冬羽】
額および頭頂は暗褐色。後頭および後頸の羽毛は暗焦茶色でバフ色の広い羽縁をもつ。

この部分の羽毛はやや長く、多少毛冠状となっている。背・肩・腰は焦褐色で、各羽の中央はやや暗色である。

上尾筒は褐色で腰に近い部分の羽毛は基部にのみ白色横斑があり、先に近い羽毛は全体に白色横斑を有する。

尾は暗褐色で6~7本の灰褐色横帯があり、先端は白い。角尾であるが外側のものは 2 ㎝くらい短い。尾羽の数は12枚。

次列風切は比較的長く、初列風切との差は 10 ㎝内外に過ぎない。風切は暗褐色と灰褐色との縞よりなる。

ただし内部の基部に近いところでは淡色部は白色の地に褐色の虫蠧斑を現している。

雨覆はすべて焦褐色。眼先の羽毛は黒色毛状。頬および耳羽は灰バフ色で各羽の先は暗褐色。

顎にはやや不鮮明なる黒色顎線がある。腮・喉はバフ白色で暗褐色の軸斑がある。

上胸はバフ白色で黄褐色の軸斑がある。ただし軸は暗褐色。下胸・腹・下尾筒および脛の羽毛は淡褐色で白色横斑がある。

跗蹠と趾の基部とを覆う羽毛の内跗蹠の上半のものは脛と同様であるが、そのほかはバフ色で微かに細い白色横斑を現しているのみである。

この羽衣はおそらく年1回の完全な換羽により得られるものと思われる。

【雌成鳥】
雄成鳥と羽色に変化はない。ただ雄成鳥より大型である点が区別するポイントになっている。

【嘴・脚および虹彩】
嘴はあまり大きくなく、比較的短く、嘴峰は全体が弧状をなしている。蝋膜はあまり発達しない。

鼻孔は楕円形。嘴色は帯青角黒色。蝋膜は頃灰色。趾は暗黄色。爪は黒色。虹彩は黄色。

参考文献

  • 吉井正 2005 クマタカ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 189.
  • 山階芳麿 1980 クマタカ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 788-792.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

【幼鳥】
頭上および後頸はバフ色で、各羽は暗褐色の小中央斑を有する。後頭および後頸の羽毛は成鳥よりも遥かに短い。

背・肩・腰は暗褐色で、かなり広い淡色縁がある。尾は暗褐色で成鳥のものより狭く、かつ不規則な淡色横帯がある。

しかし淡色部分の色は、暗色部よりわずかに淡いのみで不明瞭である。翼は成鳥と同様。ただし雨覆にはやや広い淡色羽縁がある。

下面はほとんど一様に濃いバフ色で、頸側と上胸に少しばかりの褐色縦斑があるのみである。ただし下尾筒には微かな褐色横斑がある。

虹彩はこの時代にはオリーブバフ色であり、趾もオリーブバフ色である。

参考文献

  • 山階芳麿 1980 クマタカ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 788-792.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は灰白色または帯青白色で無光沢粗面。鈍半部に淡い灰白色の斑点があることがあるが、全く斑点がないものもある。

参考文献

  • 山階芳麿 1980 クマタカ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 788-792.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

生態

生息環境

本州中部の北アルプス地方では留鳥として標高 1500 m以上の亜高山帯の森林に生息し、時折りそれ以下の山麓の上空に飛来する。

低山帯や亜高山帯の針葉樹林、広葉樹林にすみ、とくに高木の多い原生林を好む。

急峻な山腹のある、深い渓谷でよく見られる。巨木の巣に出入りしやすい条件が必要である。しばしばハイマツ帯にも現れる。

ゆっくり上空を旋回する姿が、山奥の深い谷間や尾根から見通せる谷の源頭にあたる樹海などでよく見られる。

タカ類の渡りの流れの中に入っていることがある。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 クマタカ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 464-466.
  • 中村登流 1995 クマタカ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 182.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

食性

樹林地帯の上空を帆翔で旋回し、少しづつ位置を変えて。首をめぐらしつつ獲物を探す。

また巨木が並ぶ林内をはばたいて飛ぶこともある。上空から獲物に向かって飛びつき、脚を伸ばして足指でつかみ、握りつぶす。

あるいは谷間の底のほうで樹上にじっと止まって獲物を待っていて飛びかかる(上馬, 私信)。

このために広い空間のある大木の林、林縁、林内のギャップ(空き地)などが狩り場となる。

イヌワシと異なり、クマタカの翼は比較的幅広く、先が丸いので林内でもよく行動がとれる。

食物はノウサギ、タヌキ、アナグマ、テン、リス、アカネズミ、ヒミズモグラなどの中・小型の哺乳動物、ヤマドリ、カケスなどの中・大型の鳥類、ヘビ類など、イヌワシに比べて最初口の多様性にともなって多種であるが(山崎, 1985)、主要食物はノウサギ、キジ、ヤマドリで、ハイマツ帯のライチョウも含まれる。

参考文献

  • 中村登流 1995 クマタカ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 182.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は4~7月ごろ、一夫一妻で繁殖する。巣は大木の叉の上に枯れ枝を重ねてつくる。

アカマツ、モミ、コメツガなどの針葉樹の中層から上層部の幹寄を使うことが多いが、枝先や樹頂につくることもある。ブナの大枝の叉を使うこともある。

巣は、直径 80~150 ㎝、厚さ 25~85 ㎝にもなる大きなものである。

古巣を使うこともあり、近畿地方では31%ぐらいになる(西垣外ほか, 1971)。

1番が複数の巣をもっており、5巣の例があるが(中村, 1989)、繁殖にはそのうち1巣を使う。

巣づくりには30日ぐらいを要する(西垣外ほか, 1971)。巣づくりや求愛行動は1~2月ごろ(西垣外ほか, 1971)、あるいは前年の11月ごろ(中村, 1989)から始まる。

1巣卵数は1~2個、雌のみが抱卵し、雄はもっぱら獲物を運んでくる。

雛は1カ月、あるいは1カ月半ぐらいかかって孵化する。雛の世話は雌が行い、雄は近くで見張っている。

餌を運んでくるのは雄の役割で、雌がそれをくちばしで引きちぎって雛に与える。

初期雛は白い幼綿羽に覆われる。約2カ月から2カ月半を要して雛は巣立ち、その後3カ月近くも親のなわばり内ですごす。

参考文献

  • 中村登流 1995 クマタカ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 182.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

鳴き声

極めて稀にピイ―、ピイ―と啼く。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 クマタカ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 464-466.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

特徴的な行動

単独または番ですごす。繁殖期には強いなわばりをもって分散する。

近畿地方での調査によると、隣りの番との巣間距離は 600~1,500 mである(西垣外ほか, 1971)。

参考文献

  • 中村登流 1995 クマタカ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 182.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

その他生態

湿地または草原の上 1~2 m位の高さを翼を緩慢に数回羽搏いた後に翼を半ば上方に上げたままで滑翔する。

繁殖期には円を描いて帆翔する。

地上または草の上にとまるのが常で、ときには棒杭、石の上、湿地にある朽木の上などにも休むが、高い樹枝上にとまることはない。

湿地や草原の上を飛びながら獲物を探し、獲物を発見すると突然に掴みかかって趾で捕らえる。

獲物を捕らえると地上に降りて嘴で引き裂いて食し、嚥下した後に不消化物だけをペリットとして吐き出すのが常である。

夜間は地上または茂みなどを塒とする。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 クマタカ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 464-466.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

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