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ワタリアホウドリ(Diomedea exulans exulans)の分類 Diomedea
ワタリアホウドリ(Diomedea exulans exulans)の概要 Diomedea exulans

ワタリアホウドリ(Diomedea exulans exulans)

【 学名 】
Diomedea exulans exulans Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

・全長:約 115 ㎝
・翼開張:約 300 ㎝

参考文献

最終更新日:2020-05-25 キノボリトカゲ

分布

南緯30~60度の南半球の離島で繁殖し、2~10月は南緯20度以南の洋上全域に散らばり、ときに北太平洋にも迷行して日本でも沖縄で記録がある。

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生息状況

総個体数は推定で10万羽を少し超えると思われ、世界的には絶滅の危機にはないが、たとえばマッコリ―島では1羽も繁殖しない年もあるなど、地域的な絶滅は心配される。

増殖力が弱く、一度個体数を減らすとなかなか回復しないため、注意する必要がある。

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保全の取り組み

ワタリアホウドリは船の後をついて投げ捨てられるごみをあさって食べ、釣り餌や魚をとろうとして、漁具にかかってしまうこともある。

また船が流した延縄の針についた餌を沈む前に横取りしようとし、釣り針がくちばしやのどに引っかかって水中に引き込まれ溺死するものもいる。

こうした事故を防ぐために、延縄から鳥を遠ざける鳥おどしテープや、縄を速く沈めるおもりを使用する、あるいは水に浮きやすい凍った餌を使わないなどの解決策がとられている。

さらに、鳥が少ない夜間に漁を行うことや、餌をつけた縄をチューブを通して海中に流す方法もとられている。

このような保全を考慮した方法は南極海洋生物資源保存条約によって提案され、多くの船団が協力の意向を示し、海鳥の混獲は90%減少したとされる。

ただし、1994年からはクロマグロとマジェランアイナメ(ギンムツ)をねらった違法な延縄漁をする船が増加しており、新たな混獲が問題となっている。

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和名の解説

海洋にきわめてよく適応した翼は、陸上生活には向かず、離陸には飛行機のように長い助走が必要で、そのために営巣地で簡単に人に捕らえられてしまった。

それがアホウドリという和名の由来となった。

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別名・方言名

サウスジョージア島からアンチポデス諸島までの亜南極の島々で繁殖する、大型の亜種とトリスタンダクーニャ諸島、ゴーフ島で繁殖する少し小型の亜種がいる。

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分類学的位置付け

ミズナギドリ目 アホウドリ科

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形態

成鳥の形質

ロイヤルアホウドリとともに海鳥中最も体が大きい。成鳥は全身がほぼ白色で、翼の後縁と初列風切のみ黒い。

嘴と足は桃色。繁殖地によって若干の羽色の違いがある。(吉井, 2005)

体重は 10 ㎏を超えるものもいる。特に、翼は鳥類の中でもっとも長く、翼を広げると翼開長は 3.5 mにもなる。(山田ら, 2001, 114)

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幼鳥の形質

幼鳥は羽色が濃褐色で、アイマスク模様と翼の裏が白いが、羽色は年齢があがるにつれて白くなる。

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生態

生息環境

外洋や外海で、島の谷間の裸地や平地で繁殖する。

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食性

イカや魚

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ライフサイクル

繁殖期間も鳥類でもっとも長く、抱卵期間が75~85日、巣立ちまでの子育て期間が9~12か月もかかる。

そのため2年に1回しか繁殖できない。また卵の数も1つだけである。

性成熟にも9~11年もかかるが、寿命は長く、平均寿命は30~40年で、60年近く生きた記録もあり、80年以上生きるものもいると考えられる。

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活動時間帯

南インド洋のクロゼ諸島で抱卵中の雄6羽に超小型電波送信器をつけて行ったフランスの研究によると、ワタリアホウドリが長距離飛行をするのは1日のうちで昼間のほうが多く、936 ㎞も飛行したものもいる。

ただし、高気圧帯の中に入ってしまうと風がないため飛べなくなり、昼間でも 100 ㎞以下しか移動できなかった。

夜間もじっとしていることはないが、飛行距離は普通 50 ㎞以下だった。しかし満月の夜には、この飛行距離が伸びた。

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生殖行動

つがいは一生をともにし、2年ごとに繁殖する。

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産卵

巣は泥や植生を積み上げ、海の近くのさらされた岩棚の上につくる。

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子育て

フランスの研究によると、南インド洋のクロゼ諸島で抱卵中の雄が採食のために巣から出て帰るまでに移動した距離は、最短14日間で 3664 ㎞から最長33日間 1万5200 ㎞以上に及ぶ。

島を離れるときには追い風に乗って風下に飛び、そのあと側面から風を受けながら島の風上側にぐるりと回って島に帰るか、ちょうどヨットが風上に航行するのと同様に、風下からジグザグのコースをとって島に戻った。

1羽は繁殖地から約 2200 ㎞南の南極大陸周辺部の海域まで周遊して帰った。

しかし、鳥がどうして元の島の位置を知ったのか、その「超感覚」はまだわかっていない。

雛が誕生したあとは、巣から出て帰るまでの移動距離は強い風が吹いているにもかかわらず、3日間で 330~380 ㎞で、抱卵期よりはるかに短くなった。

ワタリアホウドリは雛への給餌のために、採食の仕方を変えたのである。

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特徴的な行動

陸地のほとんどない南半球の大洋を吹く強い風を利用し、ほとんど羽ばたくことなく飛翔することができる。

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その他生態

抱卵中の親鳥はきわめて堂々としており、人が巣に近づいても気にもとめずに抱卵している。

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関連情報

研究されているテーマ

ワタリアホウドリの外洋生活を明らかにするために、フランスの国立科学研究所の研究者が南インド洋のクロゼ諸島で、繁殖中の雄6羽に超小型電波送信器を装着した。

その電波を人工衛星で受信して連続的に位置を確定し、謎だった本種の飛翔能力が明らかにされた。

まず、抱卵期の雄が採食のために巣から出て帰るまでに移動した距離は最短14日間で 3664 ㎞から最長33日間 1万5200 ㎞以上に及び、繁殖地から約 2200 ㎞南の南極大陸周辺部の海域まで飛ぶものもいることがわかった。

なお、雛が誕生後の雄は遠くまで採餌に出かけることはなく、移動距離は3日間で 330~380 ㎞と短くなった。

次に、長距離飛行を行うのは昼間が多く、936 ㎞も飛行することもあることがわかった。

高気圧帯の中や夜間はあまり長距離飛行を行わないが、満月の夜には飛行距離が伸びた。

また、長距離飛行の速度は平均時速 49~58 km/hで、中には平均時速 56 ㎞/hで 808 ㎞飛行した鳥もいた。最高時速は 91 ㎞/hであった。

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種・分類一覧