- 解説一覧
- ヤブサメ(Urosphena squameiceps)について

ヤブサメ(Urosphena squameiceps)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Urosphena squameiceps (Swinhoe, 1863)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:10~12 mm
・翼長:雄 53~55 mm 雌 51~57 mm
・跗蹠:18~20 mm
・尾長:28~32 mm
・体重:8 g位
・卵:長径 15.3~16.7 mm × 短径 12~13 mm 平均長径 16.7 mm × 短径 12.9 mm 重量 1.4 g
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤブサメ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 256-257.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区、中国東北部、シベリア、ウスリー、朝鮮半島を含む日本海周辺地域が主な繁殖地で、冬は東南アジア、台湾の南方で越冬する。
日本に夏鳥として4月ごろ渡来し、屋久島から北海道までの全国各地で繁殖する。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ヤブサメ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 73.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 学名の解説
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種小名はうろこ状の斑という意味。
参考文献
- 吉井正 2005 ヤブサメ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 519.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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英名では Asisn Stub-tail ともいう。
参考文献
- 吉井正 2005 ヤブサメ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 519.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ウグイス科
参考文献
- 吉井正 2005 ヤブサメ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 519.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額、頭上、後頭は赤褐色を帯びたオリーブ褐色で、各羽には暗色の幅の広い縁があり、全体に鱗形の斑紋を現している。
眼先から眼の後方まで黒褐色の過眼線があり、上部にはクリーム褐色の眉斑がある。
頬、喉の両側、耳羽はクリーム色で、各羽縁は褐色である。腮、喉は絹様光沢のある白色である。
後頸、背、肩羽、腰、脇、上尾筒は赤錆色を帯びたオリーブ褐色、頸側はオリーブ褐色を帯びたクリーム色である。
胸、腹は絹様光沢のある白色で、各羽の基部は石盤色であるが、外部からは見えない。
胸には褐色を帯びたクリーム色の不明瞭な帯がある。
下尾筒は赤錆色を帯びたクリーム色であり、比較的長くて、尾の4分の3または5分の3位の長さがある。
下雨覆、腋羽は褐色を帯びたクリーム白色である。
翼は暗褐色で、初列風切、次列風切には赤錆色の外縁があり、三列風切、大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽には赤褐色の羽縁がある。
尾は暗褐色で、全体に赤褐色を帯びている。
嘴色は暗褐色を帯びた角色、下嘴の基半部は褐色を帯びた肉色、虹彩は暗褐色、脚色は白色勝ちの肉色、脛羽は褐色を帯びたクリーム色。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤブサメ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 256-257.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【幼羽】
背面はすべて鏽褐色で、腰と上尾筒はやや淡い。尾も背とほとんど同じ。
風切は褐色で、その外縁は背よりも一層鏽色に富んだ鏽褐色。眉斑は帯褐バフ色。
過眼線は暗鏽褐色。腮・喉と腹の中央は帯クリームバフ色。胸は淡鏽褐色。脇はバフ灰色。下尾筒はバフ色。
【第1回冬羽】
幼鳥は秋季の換羽で成鳥に似た羽色となるが、換羽の範囲は不明である。
参考文献
- 山階芳麿 1980 ヤブサメ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 125-127.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は白色の地に赤褐色の斑点が密在し、特に鈍端に密在している。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤブサメ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 256-257.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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低山や丘陵の雑木林、スギ林などの林床に藪やササが密に生い茂った暗い林に生息する。
常緑樹林を好むようで、西南日本ではごく普通にいるが東北日本には少ない。常に林の下層で生活しているので姿を見ることは難しい。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ヤブサメ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 73.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 食性
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灌木の茂みの中や広葉樹林の下草の中を、身体を左右に活発に振りながら動き回り、植物につく昆虫の幼虫・成虫を捕食する。
地上をはね歩いて移動することもあり、この場合も昆虫を採食していると思われる。
主として、コガネムシ、ゴミムシ、カメムシ、カマドウマ、ヤスデなどを啄む。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ヤブサメ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 73.
- 清棲幸保 1955 ヤブサメ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 256-257.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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4月下旬から8月にかけて、年に1~2回繁殖する。基本的には一夫一妻で繁殖するが、継時的に一妻多夫の場合もある。
灌木林や落葉広葉樹林の地上に営巣し、巣は草または樹木の根元、倒木の下などに多い。
外装には落葉樹の落葉を主材に、内装には獣毛や菌糸束を利用して椀形の巣をつくる。
巣づくりは雌だけが行い、造巣日数は3~7日(川路, 1992)。1巣卵数は4~7個。1日1卵づつ早朝に産卵する。
抱卵は雌だけが行うが、番の雄が抱卵中の雌に対してごくまれに給餌をすることがある(大原, 1983:川路, 1992)。
抱卵日数は約13日、雌が抱卵中でも雄はよくさえずる(大原, 1983)。
雛への給餌は雌雄とも行うが、通常、雌に比べて雄のほうが給餌頻度は多く、巣立ち前日における給餌頻度は雄が平均7,8回(1時間あたり)に対して、雌は1.3回である(川路, 1992)。
育雛日数は約11日、育雛後期になると番の雄以外に1羽ないし2羽の雄がなわばりに侵入し、巣または雌に接近する(Ohara & Yamagishi, 1985)。
番の雄は雛に対して給餌だけではなく糞の除去も行うが、途中参加の雄はまれに給餌に協力する程度で、巣の近くでさかんにさえずりを繰り返す(Ohara & Yamagishi, 1985)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ヤブサメ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 73.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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シ、シ、シ、シ、シ、シまたはチ、チ、チ、チ、チと次第に後ほど高い細い虫の様な声で啼き、チィ、チィ、チィ、チ、チ、チチと地啼きする。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤブサメ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 256-257.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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繁殖に先立ち、雄は平均 4,761.9 ㎡のソングエリアを形成する(川路, 1992)。
一夫一妻で巣づくりや抱卵を行うが、巣内育雛期の中期から後期にかけての番に、番以外の雄が1羽ないし2羽加わり、3羽以上の成鳥が繁殖活動に参加する(Ohara & Yamagishi, 1985)。
これらの途中参加の雄は隣接したなわばりを持ち、番の雌が抱卵中の雄や、何らかの理由で雌を失った独身雄の場合が多い(大原, 1992)。
こうした雄は、参加した番の雛が巣立って数日たつと、その番や家族から去って行く場合が多いが、侵入した巣の番の雄に替わって雌と新しく番になり、雌の第2繁殖の雄として繁殖を進めるものもある(大原, 1992)。
こうした雄の繁殖参加は、雛が巣立って次の繁殖が可能になった雌と性関係を結ぶための戦力と考えられる。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ヤブサメ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 73.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ