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- アカコッコ(Turdus celaenops)について

アカコッコ(Turdus celaenops)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
【環境省】IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
- 【 学名 】
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Turdus celaenops Stejneger, 1887
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:20~23 mm
・翼長:雄 112~129 mm 雌 110~120 mm
・跗蹠:30~36 mm
・尾長:雄 82~98 mm 雌 80~89.5 mm
・卵:長径 25.5~31.9 mm × 短径 20.4 mm 平均長径 29 mm × 短径 21 mm 重量 6~8 g
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカコッコ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 290-291.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。伊豆諸島と南西諸島北部だけで繁殖する日本固有種。
伊豆諸島では留鳥として大島から青ヶ島まで繁殖し、大島には冬として現れる。
南西諸島では吐噶喇列島の中之島で繁殖しており、この列島のほかのいくつかの島でも繁殖の可能性がある。
屋久島でも繁殖期に生息していた記録があり、以前は繁殖していたのかもしれない。
本州のアカハラに羽色が似るが、それ以上に東南アジアにすむムナグロアカハラに似ている。
隔離分布することや、最近縁種が遠く離れた東南アジアにいることから、本種は同類の中では起源の古い種であり、かつては広い地域に生息していたことを物語っている。
分布が限られている種なので天然記念物に指定され、また危急種として保護がはかられている。
参考文献
- 中村雅彦 1995 アカコッコ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 74.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ツグミ科
参考文献
- 吉井正 2005 アカコッコ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 18.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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1975年に天然記念物に指定
参考文献
- 吉井正 2005 アカコッコ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 18.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄】
頭部・後頸は黒色、背・肩羽・腰・上尾筒は暗赤褐色、胸・脇は濃赤錆色。
腹の中央は白色である。下尾筒は赤錆色を帯びたオリーブ褐色で、各羽端から軸にかけて白色の楔形の軸斑がある。
初列風切はやや褐色を帯びた黒色で、褐色の羽縁があり、次列風切、初列雨覆、小翼羽は黒褐色で、暗褐色の羽縁がある。
三列風切は黒褐色で、全体に暗赤褐色を帯びている。大・中・小雨覆は暗赤褐色である。
下雨覆、腋羽は石盤灰色で、白色の幅の細い縁がある。尾はやや褐色を帯びた黒色で、灰白色の極く細い縁がある。
嘴色は暗褐色で、上嘴と下嘴の縁は黄褐色。虹彩は褐色、脚色は淡褐色、脛羽は暗灰色。
【雌】
額、頭上、後頭、後頸、眼先、耳羽は赤色を帯びた黒褐色、腮・喉は白色で、各羽縁は暗褐色である。尾は雄より褐色勝ちである。ほかは雄と同様である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカコッコ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 290-291.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は肉色の裸体のままで、眼の上、後頭、上膊、前膊、背の羽域に黄白色の長い初毛が生えている。口内には斑紋はない。
【幼羽】
背面はオリーブ茶褐色で、上背部には黄赭色の小軸斑を有する。
この軸斑は頭・語頸・下背にも存することがあるが、上背以外にはこの軸斑がないものがある。
尾羽は暗褐色。初列風切は暗褐色で、外縁の先半は灰色を帯び、その基半はオリーブ色を帯びている。
次列風切は暗褐色で、暗茶褐色の羽縁を有する。三列風切の内弁は暗褐色、外縁は暗茶褐色。
初列雨覆は次列風切と同様。大雨覆は茶褐色で先にバフ色縁がある。中雨覆と小雨覆は茶褐色で、各羽には先がやや開いている黄赭色の軸斑がある。
眼先は暗茶褐色。黄赭色の眉斑がある。頬と耳羽は暗褐色でバフ色の軸斑がある。
腮と喉は擬白色で、各羽には黄赭色の羽縁があり、また顎線の部には暗褐色の縦斑が集まっている。
胸と腋は黄赭色で後者の方が濃く、胸には明瞭な、腋には不明瞭な暗褐色斑が散在している。
腹と下尾筒は白色。嘴は黒褐色で、嘴緑黄色。眼瞼は暗黄色。虹彩は暗褐色。
【第1回冬羽】
幼鳥は9月~10月に体羽・小雨覆・中雨覆・内側数枚の大雨覆を換羽して第1回冬羽となる。
この羽衣の場合、雄は雌成鳥に酷似した羽色となるが、頭と喉の羽毛は黒味勝ちである。
雌においては腮・喉は白色で、喉の両側には細かいオリーブ褐色の縦斑が集まって顎線を形成し、また喉の中央には少しばかりの赭色斑がある。
なお、この羽衣はアカハラの雌成鳥に似ている。
【第2回冬羽】
第2年の秋季の全身の換羽で完全な成鳥の羽色になると思われる。
しかし第1回冬羽と第2回冬羽は変化が大きく、上記標準的なものより成鳥の羽衣に近いものなどもいる。
参考文献
- 山階芳麿 1980 アカコッコ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 241-247.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は淡緑青色、淡緑褐色、淡灰褐色などの地に褐色と淡紫色の斑点が散在し、斑点の大きさは個体差があり、鈍端の方に密在するものが多い。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカコッコ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 290-291.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 似ている種 (間違えやすい種)
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アカハラ、ムナグロアカハラ
参考文献
- 中村雅彦 1995 アカコッコ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 74.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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伊豆七島に生息し、特に新島以南に多く、岸近くの林から山頂の林まで全島に生息する。
三宅島では椎、オオバヤシャブシ、ツゲ、マツ、ツバキ、珊瑚樹、竹藪などに生息するものが多く、ハマアジサイの下生えが茂るオオバヤシャブシの林や羊歯の下生えが密生する。
椎の喬木林にも生息し、特に山麓や海岸近くのオオバヤシャブシの林や竹藪、畑地などに多い。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカコッコ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 290-291.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 食性
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採食行動はアカハラと似ており、地上をはねたり歩いたりしながら餌をさがし、ミミズやゴミムシ、アリ、ヤスデ、ムカデなどの昆虫、トカゲなどの小動物を食べる。
タブノキ、イボタノキ、クワ、サンゴジュなどの実がある時期には、樹上でこれらの実を好んで食べる。
雛に与える餌としてはミミズが多いが、キイチゴやクワなどの実がたくさんある時期にはそれらも与えられる。
参考文献
- 中村雅彦 1995 アカコッコ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 74.
- 清棲幸保 1955 アカコッコ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 290-291.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は4~7月、一夫一妻で繁殖する。低木の枝上や高木の樹洞、あるいは地上の窪みなどに椀形の巣を作る。
1巣卵数は3~5個、抱卵は雌が行い、育雛は雌雄共同で行う(樋口, 1992)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 アカコッコ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 74.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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囀鳴期は4月から6月頃までである。早暁からアカハラに似たキョローン、キョローン、チュリーまたはチョロ、チリ―、チュー、チョロ、チリ―、チューと囀る。
樹頂の見通しのよい梢で囀ることが多い。警戒時にはキョッ、キョッと啼き、飛び立つときには鋭い声でツィーと啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカコッコ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 290-291.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ