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- サンコウチョウ(Terpsiphone atrocaudata)について

サンコウチョウ(Terpsiphone atrocaudata)
【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
- 【 学名 】
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Terpsiphone atrocaudata (Eyton, 1839)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:15~21.5 mm
・翼長:雄 89~96 mm 雌 83~91 mm
・跗蹠:15~17 mm
・尾長:雄 256~340 mm 雌 77~100 mm
・体重:17~22 ℊ
・卵:長径 19~22.2 mm×短径 14~16.5 mm 平均長径 20.8 mm×短径 15 mm 重量 2.2~2.5 g
参考文献
最終更新日:2020-06-16 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。日本、台湾、フィリピンで繁殖する。日本には夏鳥として5月ごろ渡来し、本州から屋久島までの各地でふつうに繁殖する。
北海道では函館で1回の観察記録があるだけである。
奄美大島以南の南西諸島には、別亜種のリュウキュウサンコウチョウ(T. a. liiex)が留鳥として生息する。
参考文献
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形態
- 成鳥の形質
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【雄成鳥 冬羽】
頭は全体ビロード光沢ある真黒色で、頭上の羽毛は 15~22 mmほどあり、毛冠を形成している。
背・肩羽・腰・上尾筒は光沢ある暗帯紫赤褐色。尾羽は黒色で12枚。
外側の4対は凸尾で長さは 80 mmくらいであるが、次の1対は長く 95~120 mmあり、中央の1対はとても長く 250~350 mmに達する。
小雨覆と中雨覆は背と同色。大雨覆・三列風切・次列風切は黒褐色で紫褐色の縁がある。
初列雨覆と初列風切は帯褐黒色。腮・喉・上胸は頭に続いて黒色。胸と脇は灰色で腹側は褐色を帯び、腹と下尾筒は白い。
この羽衣は繁殖の後に全身の換羽を行って得るものである。
【夏羽】
春季の換羽はないようである。摩耗による変色も著しいものではない。
【雌成鳥 冬羽】
頭上の羽毛は長いが、雄よりは毛冠が小さい。頭上と頭側の羽毛は灰黒色。背・腰・上尾筒は帯黄栗褐色。
尾は黄褐色に富んだ暗褐色。尾形は角尾または角尾に近い円尾で、長短尾羽の差は 7~10 mm。
小雨覆は背と同色。中雨覆・大雨覆は暗褐色で栗褐色の縁がある。三列風切と次列風切は暗褐色で黄褐色の縁がある。
小翼羽・初列雨覆・初列風切は尾羽と同色だが、やや黒味勝ちである。
頬・腮・喉・胸は黒灰色で、次第に腹および下尾筒の白色の移行する。脇は灰色を呈し、腹側は褐色を呈する。
【嘴・脚および虹彩】
嘴はやや平たくて全嘴峰は頭長とほとんど同じである。嘴毛はとても多いが鼻孔は露出している。嘴毛の中にも毛状羽が混じっている。
ヒゲは長くて嘴長の3分の2に達する。嘴色は鉛色。脚は纎弱だが爪は弯曲している。
脚の色は鉛色、虹彩は褐色。眼瞼は裸出し、滑らかで美しいコバルト青色である。
雄成鳥のこの部分の幅は、雌のものの約2倍、2 mmほどある。
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最終更新日:2020-06-16 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は肉食の裸体のままで、眼の上、後頭、上膊、前膊、背、腿などの羽域に黒色の長い初毛が生え、腹の羽域には白色の初毛が生えている。
口中は黄色、口角の縁は淡黄色である。
【幼鳥】
頭上は暗黄褐色で各羽には少し淡い軸斑がある。眉・後頭はバフ褐色。背は汚帯黄栗褐色。
尾は暗黄褐色で尾形は雌成鳥と同じ。雨覆と風切は暗褐色でバフ色の縁がある。
腮・喉・胸は淡汚バフ色で胸はわずかに暗色。腹と下尾筒は汚白色。
【第1回冬羽】
幼鳥は7月下旬から9月に体羽全部・大雨覆・中雨覆・小雨覆と三列風切を換羽する。
この羽衣で雌幼鳥は雌成鳥と区別しにくいが、雄幼鳥は雄成鳥と明らかに異なる。
すなわち外形・羽色は雌成鳥に酷似しているが、背と腰の色は濃く、わずかに紫紅色を帯び、腮および喉も黒味勝ちで、脇と下胸には栗褐色が混じることがある。
尾は雌成鳥より黒味勝ちで、特に中央対の基半部は黒色に近い。この羽衣は眼瞼は細く、蒼色で光沢がない。
【第2回冬羽】
幼鳥は第2年の7月より換羽に入り、全身の換羽を行って第2回冬羽となる。
雌はこの羽衣で全く成鳥と区別しにくくなるが、雄は成鳥と明らかに異なる。
すなわち体羽は成鳥と第1回冬羽との中間の色を呈し、背は第1回冬羽より黒味勝ちであるが成鳥よりは赤褐色味が強い。
尾羽は変化に富み、ある個体は中央2対の尾羽が著しく伸長し、それぞれ 105~180 ㎜に達するが、ほかの個体は外側尾羽との差、冬羽の場合と大差ない。
眼瞼はこの羽衣でコバルト色を呈する。この羽衣で、第3年の夏には繁殖するものがある。
この場合、雄が短尾であると雌2羽で繁殖しているかと思われるが、詳細に羽色を観察すれば雄雌を区別することができる。
【第3回冬羽】
第3年の7月頃より換羽に入り、全身を換羽して第3回冬羽となる。
この羽衣で体羽と翼羽は成鳥と同様で、尾羽も通常成鳥と同様に伸長する。
しかし、この羽衣でもなお長さの短いものや、幼羽と同様の尾形のもののあることは、次種においても発見されている通りであるが、野生の場合は成鳥と同様に伸長するのが普通で、短いのは異例のように思われる。
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生態
- 生息環境
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平地から標高 1.000 m以下の山地の暗い林に生息する。
もともとは常緑広葉樹林を主な生活場所にしていた種と思われるが、暗いという条件が共通するためか、今日ではスギの植樹林でもよく見かける。
沢沿いの谷や傾斜のある山地に多く、スギやヒノキの人口林、雑木林や落葉広葉樹の密林に営巣する。
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- 食性
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飛翔する昆虫をフィライングキャッチ方法で捕獲し、再び元の止まり木にもどる。低い灌木の間や、林の中・下層の空間を採食のために飛翔する。
雛に給餌する餌もハエ、ハチ、チョウといった飛翔性昆虫がほとんどである(小林, 1985)。樹上生活が主で、地上に下りることはまれである。
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- ライフサイクル
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繁殖期は5~8月、年に1~2回、一夫一妻で繁殖する(秋山, 1968)。
雄のほうが雌に比べて1週間ほど早く繁殖地に渡来し、フィチィーヒーチィー、フィチィーチュー、ホイホイホイと独特の声でさえずり、なわばりを形成する。
巣には周りに葉のない枝の2叉か3叉の部分に、スギの皮やアカマツの葉やコケ類などをクモの糸で丹念にからませて、円錐を逆さにした形につくる。
巣の高さは地上 1.5~16 mぐらい。巣づくりは雌雄共同で行い、巣材運搬は雌雄ともほとんど同じ割合だが、造巣後期は雌だけが行う(秋山, 1968 : 小林, 1985)。
1巣卵数は3~5個、1日1卵ずつ産卵し、第2産卵日から雌雄交替で抱卵を始める(秋山, 1968)。
産卵期には雄のさえずり頻度は減少する(秋山, 1968 : 小林. 1985)。
抱卵日数は12~14日(秋山, 1968)、日中の雌雄の抱卵時間の割合は、雌が7割に対し雄が3割と、雌のほうが多く、夜間の抱卵は雌だけが行う(小林. 1985)。
雌は巣づくり前から家族期まで低頻度ながらもさえずるが、時期的には抱卵期に最も多く、それも約90%が抱卵中の巣の中でさえずる(小林. 1985)。
雌は巣外にいる雄の鳴き声に応えて鳴く場合が多く、雌がさえずった場合には雄が巣にやってきて抱卵を交替する。
雌のさえずりは雄に比べて1回のさえずり時間が短い。育雛も雌雄共同で行い、雄も雌も同じくらいの割合で雛に給餌する(秋山, 1968)。
育雛日数は10~12日、育雛の初期には雌雄とも抱雛する。巣立ち後はしばらく家族群で行動し、ときどきカラ類の混群に混じることがある。
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- 特徴的な行動
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繁殖期には番ごとになわばりをもって分散する。
雄のさえずりはなわばり防衛の機能もつくらしく、テープレコーダーによるほかの雄の再生音に雄は強く反応する(小林, 1985)。家族群以外で群れることはない。
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