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カイツブリ(Tachybaptus ruficollis)の分類 カイツブリ科(Podicipedidae)
カイツブリ(Tachybaptus ruficollis)の概要 カイツブリ属(Tachybaptus)

カイツブリ(Tachybaptus ruficollis)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Tachybaptus ruficollis (Pallas, 1764)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:19~23 mm
・翼長:94~107.5 mm  
・跗蹠:33.5~38 mm
・尾長:30~36 mm 
・体重:145~204 kℊ
・卵:長径 33~39.6 mm×短径 24~27.3 mm 平均長径37.2mm×短径24.9mm 重量 7.5~8.6 g

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最終更新日:2020-06-16 キノボリトカゲ

分布

旧北区、東洋区、エチオピア区。ユーラシア大陸の温帯・熱帯、サハラ砂漠を除くアフリカ大陸、フィリピン、ボルネオ島、ジャワ島、ソロモン諸島に分布する。

日本にはほぼ全国に分布し、北海道から九州までの各地でふつうに繁殖する。北海道と本州北部では夏鳥、本州中部以南では留鳥である。

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亜種・品種

亜種カイツブリ T. r. poggei と、南大東島のダイトウカイツブリ T. r. kunikyonis がいる。

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別名・方言名

日本では古くから鳰(にお)といい、鳰の浮き巣、鳰の海(琵琶湖の別称)などの言葉がある。

一丁モグリ・八丁モグリ・ムグッチョなど愛称が多い。

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分類学的位置付け

カイツブリ目 カイツブリ科

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人間との関係

「にほ鳥の潜く池水情あらば君にわが恋ふる情示さぬ」(『万葉集』巻4)。高井几董「野の池や氷らぬ方にかいつぶり」。

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形態

成鳥の形質

雄雌同色。

【夏羽】
額、頭上、後頭、眼先、眼の下は黒褐色、耳羽、腮、喉は赤褐色である。下嘴の基部には白色の皮膚の裸出部がある。

後頸は黒褐色、前頸、頸側は赤褐色である。

肩羽、背は油様光沢のある黒褐色、上胸は褐色、下胸、腹、脇、下尾筒は絹様光沢のある白色で褐色の斑があり、各羽は褐色で、先端には白色の縁がある。

腰、上尾筒は黒褐色である。下雨覆は白色。風切羽は暗褐色、次列風切の内弁は白色である。

大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は暗褐色である。尾は緑色を帯びたオリーヴ灰色または暗鉛灰色、爪は暗灰色、先端は白色。

【冬羽】
額、頭上、後頭は暗灰褐色、腮、喉は白色、耳羽、頸側は淡赤錆色を帯びた淡褐色である。

体の上面は光沢の多少ある暗灰褐色で、体の下面は光沢のある白色で、脇は淡赤錆色を帯びた淡褐色である。

嘴色は赤味のある灰褐色で、基部は黄色。2~5月頃までに夏羽に羽換する。

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幼鳥の形質

孵化直後の雛は全身に綿羽が密生し、頭上の前端は灰白色、眼の上には淡黄褐色の細い眉斑があり、眼の後方に走る線と頭の両側及び耳羽にある小斑などは灰白色である。

腮、喉は淡黄褐色で、黒色の2条の細い縦線が走っている。

体の上面や頸は黒褐色で、淡黄褐色の縦線が走っている。胸側及び腹、下腹などは黒色、体の下面の中央は白色である。嘴には黒色の横帯がある。

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卵の形質

卵は純白色またはクリーム色で、産卵直後は表面は白色の石灰質で覆われているが、その後水垢で次第にセピア褐色や赤褐色などに汚染するのが常である。

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生態

生息環境

主に平野部の池、湖沼、堀、河川に生息し、秋・冬には川の下流域でも見られる。

いつもはヨシが密生する水面にいるが、採餌のときには広々とした水面に現れる。

淡水域の湖沼や大小の池、ダム湖などで繁殖するが、冬はまれに海に出ることもある。

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食性

身体の後端部につく脚は非常に柔軟で、さまざまな方向に動かすことができ、足指につくひれ状の弁膜で水をかいて潜水し、体長 5~6 ㎝ぐらいのフナやタナゴなどの魚類、水生の甲殻類、昆虫、軟体動物を食べる。

ヒシの実のような植物質の餌を食べることもある。

最長30秒ほど潜ることができるが、潜水することなく頭だけ水中に入れ、水面を突進して表層の魚をくわえとることもある。

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ライフサイクル

繁殖期は2~10月と長期にわたり、年に2~3回、一夫一妻で繁殖する(小池, 1985)。

秋や冬にも繁殖活動をしているものもあり、2月ごろ幼鳥が見られることもある。

ヨシ原の中や水中に繁茂する水草の上に、たくさんの水草の葉や茎を用いて、雌雄共同で浮き巣をつくる。

巣の水面に出ている部分は皿形だが、その5~6倍の厚さがある水面下の部分は逆円錐形をしている。

番はひとつの巣だけでなく、水位変動に備えて5~14個もの補助巣を次々につくる(小池, 1985)。

1巣卵数は4~6個、1日1卵あるいは2日に1卵ずつ産卵する(Cramp & Simmons, 1977)。

雌雄交替で20~25日抱卵し、雌雄両方とも巣から離れるときは、卵の上に巣材を乗せて隠す習性をもつ。

卵は同時に孵化することはなく、最初に産卵されたものから順次孵化する。雛は早成性で、孵化後しばらくすると水面に泳ぎ出すことができる。

雛は、疲れると親鳥の背中に乗ったり、羽毛の間に入って休む。

敵が近づくと、親鳥は背中に雛を乗せたまま潜水し、難を逃れる。孵化後1週間くらいはときどき巣にもどる。

雌雄とも雛に給餌する。本種が餌にする魚類や甲殻類は動きがすばやく、捕らえるには高度な技術が必要である。

そのため、雛はなかなか独立できず、2カ月余りも親鳥から給餌を受ける(長谷川, 1991)。

自力でも餌がとれるようになると、親鳥は給餌した後に幼鳥をしつこくつついて追い回し、独立を促す。

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鳴き声

高く鋭い声で、キッ、キッ、キッ、キッ、キッ、キュルルルルーまたはキリリリリ―、キリリリリ―と鸇鳴して啼き、警戒するときにはピッ、ピッ、ピッ、クェツ、クェツ、クェツ―と鋭く啼く。

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特徴的な行動

繁殖期は番で生活し、一定の範囲の水面になわばりを構えて分散する。水位の変化でなわばりの位置は移動する(小池, 1985)。

なわばり意識は非常に強く、侵入個体がいると、番が協力して防衛する。

まず雄がキリッキリッキリッキリッと鋭い声を発しながら波をけたてて、一直線に相手に突進して威嚇し、雌もすぐそばに駆けつけて侵入者を追い出す。

春先には、雌雄が仲良く連れだって水面を羽ばたきながら直進するディスプレイや、雄が雌に小魚や水草を与える求愛給餌行動が見られる。

冬には数十羽の群れとなって水面に浮かび、夜間に盛んに啼き立てる。

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最終更新日:2020-06-16 キノボリトカゲ

種・分類一覧