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- ヤイロチョウ(Pitta nympha)について

ヤイロチョウ(Pitta nympha)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Pitta nympha Temminck & Schlegel, 1850
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:22~27 mm
・翼長:118~127 mm
・跗蹠:38~42 mm
・尾長:35~44 mm
・卵:長径 25~27.5 mm×短径 19.7~22.5 mm 重量 5.2 g位
参考文献
最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ
- 分布
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東洋区、旧北区。ヤイロチョウ科のなかでは唯一旧北区まで分布を広げた種である。
ユーラシア大陸東南部、中国中南部、台湾、朝鮮半島南部、日本中南部で繁殖し、中国南部、東南アジア、ボルネオ島で越冬する。
インドヤイロチョウ(Pitta brachyura)と同種とし、ヤイロチョウをその一地方亜種とする見解があり、これによる分布範囲はインドから東南アジアを経て、マレー半島、スマトラ島に至る。
日本では本州中部から、四国、九州に夏鳥として見られる。
最も北の記録は秋田県、また、高知県西部では1937年に繁殖が確認され(石原, 1982)、1965年以後毎年繁殖が認められている(沢田.1984)。
柿田周造氏により長崎県雲仙岳、対馬で巣が見つかっている(清棲, 1978)。
1982年に長崎県南部の天龍川流域で宮沢勝美氏により営巣が確認され(林, 1982)、以後1992年まで毎年繁殖が認められている(宮沢, 私信)。
絶滅危惧種に指定されている。
参考文献
最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額、頭上、後頭は栗色で、中央には黒色の幅の広い頭央線がある。
眼の上にはクリーム黄色の眉斑がある。眼先、耳羽、眼の後方、腮は黒色で過眼線をなし、喉、頸側はクリーム白色である。
背、肩羽はエメラルド緑色で、ときには背の各羽端に黒色の幅の狭い三角形の斑があるものもある。
胸、腹はクリーム色で、胸側は緑色を帯び、下腹の中央は鮮紅色である。
腰、上尾筒はコバルト青色、下尾筒は鮮紅色である。
風切羽は黒褐色で、初列風切の外側の2枚は内弁の中央に白色の斑があり、次の4枚は内外弁の中央に白色斑があり、次のものは外弁の中央に白色の斑があり、羽端は色が淡く多少コバルト青色を帯びている。
次列風切の羽端近くにはエメラルド青緑色の外縁がある。
三列風切の羽端と外縁とはエメラルド青緑色である。
大雨覆は黒褐色で、エメラルド青緑色の羽縁があり、中雨覆はエメラルド緑色、小雨覆はコバルト青色、初列雨覆、小翼羽、下雨覆、腋羽は黒褐色である。
尾は黒色で、羽端はコバルト青色である。嘴色は黒色、虹彩は暗褐色、脚色は黄褐色、脛羽はクリーム黄色。
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- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は肉色の裸体のままで、初毛を欠いている。
【幼鳥】
頭上の羽毛は黄褐色で、各羽は明らかなる黒褐色の縁を有する。ただし頭央線は暗褐色である。
眉斑はクリームバフ色で各羽は狭い暗褐色の縁を有する。眼先・頬・耳羽から後頸に続く帯状部は黒褐色。
背・肩・腰の上部はオリーヴ褐色で、少し緑色を帯びる。
腰の下部は鈍い青色。上尾筒は暗褐色。尾の先半は暗青色、基半は黒褐色で、その境は不明瞭である。
風切は成鳥に似るが、その色は淡く鈍い。大雨覆はオリーヴ褐色であるが、外側のものは青色を帯びている。
中雨覆はクリーム白色で、オリーヴ褐色の狭い縁がある。小雨覆はオリーヴ褐色。
腮は淡い暗褐色。喉はクリーム白色。胸と脇は汚帯黄褐色。下腹と下尾筒は淡薔薇灰色。
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生態
- 生息環境
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シイ、カシあるいはタブノキなどの常緑広葉樹林、人工的なスギ・ヒノキ林、また急峻な渓谷や沢筋に沿う常緑広葉樹林、マツ林、針広混交林などにすむ。
林床はむしろ湿っぽくて藪が茂り、落葉が豊富な林を好む。
巣を置く場所は南面した40~45度ぐらいの傾斜地(沢田, 1984)や急斜面、あるいは崖の斜面などで樹林に覆われた薄暗い場所であるが、藪の場合はむしろ疎らで見通しのよいところである。
本邦では四国:高知県幡多郡山奈村の上大物川の山林および、高岡郡大正村折合大郷山の山林で繁殖することが確実に知られている。
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- 食性
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地上で採食する。軽々とホッピングで移動し、急に静止して脚やくちばしで落葉や腐食土をひっかいたり、ほじくったりする。
こうしてミミズ、蝸牛、地虫、鞘翅目の昆虫などをとる(沢田, 1984)。
ミミズにパッと飛びついてくわえると、グイグイと引っ張って引きずり出す(宮沢, 私信)。
雛の餌としてはミミズが多いが、成長してくるとサワガニやアカガニ、昆虫も与え(沢田, 1984)、ときどきムカデをもってくるが、ミミズが圧倒的に多い(宮沢, 私信)。
胃の内容物には木の実、木の芽が混じっていた(沢田, 1984)。
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- ライフサイクル
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繁殖期は6~7月、一夫一妻で繁殖する。
さえずりはキョホイー、キョホイーと聞こえ、5月中旬から6月上旬にかけて盛んに行い、ときには樹木の梢で歌い、2~3羽が鳴き合う(宮沢, 私信)。
巣はドーム状で、入口は横向きにつくり急斜面から出入りしやすい。
樹上のこともあるが、大部分(51例中94%)は地上に置く(沢田, 1984)。
雌雄共同でつくり、外装には枯れ枝、苔類などを、内装にはマツ葉を敷く。1巣卵数は14~16日、抱卵は雌雄交替で行う(沢田, 1984)。
育雛も雌雄共同で行い、14~16日で巣立つ(沢田, 1984)。巣の近くで警戒するときギョォー、ギョォーと鳴く。
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- 鳴き声
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ポポピィ―、ポポピィ―と笛の様な声で2声づつ啼く。
5月中から6月上旬ころまで栂、樅などの、とくに一際高い喬木の梢の横枝にとまって、尾を上下にビクビク動かし、体を振りながら啼き、聞き方に依ってはシロベン、クロベン、あるいはカアヘイイ、カアヘイイとも聴こえる。
7月下旬頃にも盛んに啼く。
参考文献
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- 特徴的な行動
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主に単独で生活し、地上生活を主として跳ね歩きつつ餌を捜し求める。
樹上にもとまるが、その形はカワセミのとまっているときの姿に似ている。短い尾を上下にビクビク動かす習性がある。
参考文献
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