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- エゾムシクイ(Phylloscopus tenellipes)について

エゾムシクイ(Phylloscopus tenellipes)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Phylloscopus tenellipes Swinhoe, 1860
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:9~12.5 mm
・翼長:61~68 mm
・跗蹠:18~20 mm
・尾長:42~53 mm
・体重:8~11 g位
・卵:長径 15~16 mm×短径 12~12.5 mm 平均長径 15.4 mm×短径 12.2 mm 重量 0.9~1.5 g
参考文献
最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。ユーラシア大陸極東部のウスリーと日本で繁殖し、冬は東南アジアに渡って越冬する。
日本には北海道、本州中部以北、四国に夏鳥として渡来して繁殖する。
四国では徳島県で1986年に繁殖が確認された(日本野鳥の会徳島県支部, 1987)。
参考文献
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形態
- 成鳥の形質
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上面は茶褐色で、腰は赤みがある。眉斑は黄白色。中雨覆と大雨覆の先端に不明瞭な淡褐色の翼帯がでる。
下面は白っぽく、脇と下尾筒は淡褐色、上嘴は褐色。下嘴は淡い。足は淡肉色。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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亜高山針葉樹林で繁殖し、四国では標高 1.300~1.800 mぐらい、本州では 1.000~1.900 mぐらい、北海道では 500~1.500 mぐらいのよく茂った針葉樹林に多い。
谷間に近い急斜面の樹林を好む。
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- 食性
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樹林内の樹木の下枝や藪の小枝から小枝へと渡り歩き、枝の下側、葉の裏などに空間を利用して飛びついて虫を捕らえる。
飛びついたあと元の枝にもどらずに枝を変えていくが、本質的にはフライングキャッチ法と共通の採食である。
枝から踏み切って飛び立ち、くちばしを虫に近づけていく。この点でメボソムシクイと同じである。
本種は亜高山針葉樹林でメボソムシクイと共存しているのにもかかわらず、採食方法や採食場所がよく似ていて区別がつかない。
唯一ちがう点は、針葉樹の中での採食位置で、メボソムシクイが中層の内部に片寄っているのに対して、エゾムシクイは下層と上層に分かれている(Nakamura, 1980)。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は5~7月、おそらく一夫一妻で繁殖する。8月には低地に現れるので、早々と繁殖を終えて立ち去るらしい。
巣は地表につくるというよりは、地下といってもよいかも知れない。
山地の急斜面の小さい崩れ跡の岩の間や、樹木の根の下側、あるいは崩れの上に張り出してきた土壌層の下側など、オーバーハングのある芭蕉の下面の、薄暗い奥のほうの窪みや根の間につくる。
外装は蘚類や葉などで球形に、出入口は側面につくり、内装には細い根、シダ類の根状体などを用いる。
雌のみが巣づくりを行い、巣づくりの中に雄は雌について回り、雌が巣に入っている間、その上方でさえずる(松沢, 1976)。
1巣卵数は4~6個。抱卵日数は14日ぐらいで、雌のみが行う(松沢, 1976)。
育雛は両親で行い、雛初期の抱雛は雌のみが行い、雛は15日ぐらいで巣立つ(松沢, 1976)。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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囀鳴期は5月から7月までで、細く搾るような声でヒッ、ツーキーヒー、ヒッ、ツーキーヒーまたはヒッ―、チィー、ピー、ヒッ―、チィー、ピーなどと静かに繰返し繰返し囀る。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッと金属性の声で地啼きし、遠くでカン、カン、カンと金属を叩く様な声に聴こえる。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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単独でいることが多い。なわばり分散をしており、境界での戦い行動は渡来当初の5月下旬によくみられる(Nakamura, 1976)。
このころの行動圏は直径 200 mぐらいである(松沢, 1976)。さえずり期間は5~7月で、6月上旬にピークがある。
同じ樹林に共存しているメボソムシクイのさえずり期が著しく長いのに比べて、エゾムシクイは対照的に短い(Nakamura, 1976)。
雌に対する雄のディスプレイや雄どうしの争い会合はメボソムシクイとまったく同じで、翼をゆっくり上下させたり、モスタイプの飛翔をする。
ちがいはそのときに使うさえずりのパターンだけである(Naka-mura, 1979)。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ