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- アホウドリ(Phoebastria albatrus)について

アホウドリ(Phoebastria albatrus)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Phoebastria albatrus (Pallas, 1769)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:131~143 mm
・翼長:503~580 mm
・跗蹠:92~107 mm
・尾長:143~190 mm
・体重:7.5 kℊ
・卵:長径 110~127 mm×短径 70~78 mm 平均長径 118.9 mm×短径 74.4 mm
参考文献
最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
- 生息状況
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北半球で繁殖する最大の海洋島で、かつては日本の南方の島々でふつうに見られる鳥だったが、19世紀末より羽毛採集のための濫獲が始まり、絶滅に瀕した。
一時、絶滅したと報じられたが、1951年に伊豆諸島の鳥島で生き残っていることが確認され、1971年には尖閣諸島の南小島でも生存が確認された。
現時点での繁殖地は、世界的に見ても鳥島と南小島の2島だけで、個体数は約500羽と推定されている。
現在は、営巣地にススキを植えるなどの環境改善工事を行い、個体数は徐々に増加している。
世界で最も個体数の少ない鳥の1種で、国際保護鳥、特別天然記念物、絶滅危惧種に指定されている。
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最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
- 保全の取り組み
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1886~1902年の間に羽毛採取のため年間20万羽以上も乱獲された。
その後も数度におよび火山の噴火、保護鳥に指定(1906年)された以降も密猟により減り続け、1932年には30~50羽と報告された。
1949年にはアメリカの鳥学者 O. L. オースチン により絶滅が宣言されたが、1951年に鳥島測候所の所長が再発見。
1965年に噴火の危険のために測候所が撤退したが、保護の手が断続的に加えられ、1980年代には約300羽まで回復した。
その後継続的に営巣環境を整える作業が続けられるようになり、成鳥が1000羽以上になるまで回復した。
特別天然記念物・国際保護鳥に指定されている貴重な海鳥。
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最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。頭上、後頭、後頸は麦藁色の淡黄色である。額、眼先、耳羽、頬、腮、喉はクリーム白色である。
前頸、背、胸、腹、脇、腰、上尾筒、下尾筒は白色である。肩羽は暗石盤褐色で各羽の基部は白色である。
下雨覆、腋羽は白色。初列風切は濃黒褐色で、内縁は褐白色で、羽軸は麦藁色の淡黄色である。
次列風切は濃灰色を帯びた黒褐色で、内弁の大部分と基部は白色である。
三列風切の基部は白色、先端の部分は濃灰色を帯びた黒褐色である。
大、中、小雨覆は暗灰褐色で、大雨覆の内側のものは白色である。初列雨覆、小翼羽は濃黒褐色である。
尾は黒褐色で、基部は白色、羽軸の大部分は麦藁色の淡黄色である。
嘴色は淡赤色を帯びた紫色、先端は白色。虹彩は暗褐色、脚色は灰青色、趾膜は黒色。
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最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は全身に淡黒色の初毛が密生する。
【幼鳥】
体の上面は煤けた濃暗褐色で、頭上は黒色に近い色である。体の下面は煤けた褐色である。
嘴色は暗薔薇色で、暗色の斑があり、先端には青色または緑灰色である。
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- 卵の形質
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卵は淡黄褐色を帯びた灰白色の地に、暗褐色の微細な斑点が鈍端の方にだけ散在している。
ときには地色が淡褐色を帯びた灰白色のものや、暗褐色のやや粗い斑点のあるものや、地色がほとんど白色で斑点を欠くものなどがある。
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生態
- 生息環境
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繁殖地は常に風に吹かれている外洋の無人島で、中腹以上に営巣する。
適度の植生が存在し、地面が安定している場所や平坦地が巣場所として好まれる。
地上捕食者がいないことも条件である。
6~9月の非繁殖期には、北部北太平洋のベーリング海やアリューシャン列島近海、アラスカ湾に渡ることが足環標識によって明らかにされている(長谷川, 1987)。
また、鳥島で標識された個体が、繁殖期にミッドウェー海域で回収されている(吉井・叶内, 1979)。
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- 食性
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イカ類、トビウオ類、甲殻類を餌とする。奥の海洋生物が水面に浮上する夜間でも採食する。
外洋を帆翔し、餌を発見すると水面でくわえとったり、水面に浮かんで採食する。
雛には、未消化の海洋動物と消化した食物から出た脂肪を多量に含む油とからなる餌を口移しで与える。
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最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は10月から翌年の6月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。多くの番は毎年繁殖するが、一部は隔年繁殖である(長谷川, 1991)。
火山砂が堆積した傾斜地の地面に浅い窪みを掘り、周囲から枯れ草や砂をくわえこんで皿形の巣をつくる。
10月下旬から11月中旬までが産卵期で、1巣につき1卵だけが産卵し、雌雄交替で64~65日抱卵する(Hasegawa & DeGange, 1982)。
まだよくわかっていないが、雄は1回につき2~3週間連続して抱卵し、雌に替わる(長谷川, 1991)。
雛は半晩成性で、約5カ月間雌雄共同の給餌を受ける(長谷川, 1991)。
雛が大きくなると親鳥は雛を巣に残して海に餌集めに出かけ、3~4日に1度帰ってきて給餌する。
5月初旬になると、親鳥は雛への給餌を打ち切り、繁殖地を離れて渡りの旅に出る。
雛は絶食状態で飛翔訓練を繰り返し、親より約1カ月遅れて繁殖地を去る。
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- 特徴的な行動
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10月上旬に繁殖地に渡来する。先に帰ってくるのは雄で、営巣地内に自分の巣場所を確保し、数日遅れて帰還する雌と交尾する(長谷川, 1991)。
繁殖地ではコロニーをつくって集団で繁殖する。巣立った雛が成長し、生まれた島に最初に帰還するのは早くて2歳。
たいていは3~4歳で、これらの若鳥はたいてい繁殖期の半ばごろから営巣地に出現する(長谷川, 1991)。
若鳥は番の相手を見つけるために、くちばしをカタカタカタと鳴らしながら儀式化された求愛ダンスを繰り返す。
初めは未婚の若鳥に相手かまわず求愛するが、2~3年後には相手がしぼられて番となる。
参考文献
最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ