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- シマセンニュウ(Locustella ochotensis)について
シマセンニュウ(Locustella ochotensis)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Locustella ochotensis (Middendorff, 1853)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:11-16.5 mm
・翼長:62-76 mm
・跗蹠:20-26 mm
・尾長:48-64.5 mm
・卵:長径 19-21.5 mm × 短径 14-15.1 mm 平均長径 19.4 mm × 短径 14.7 mm
参考文献
最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。オホーツク海、日本海沿岸に繁殖地をもつ。日本には夏鳥として渡来し、主に北海道の沿岸で繁殖する。
シマセンニュウのシマは北海道を意味し、道東と道北では比較的数が多い。
稚内周辺の平野からオホーツク沿岸の平野、根室一帯、十勝川河口、石狩平野など、海岸の草原を中心に分布する。
繫殖を終えると8月下旬に姿を消し、フィリピン、ボルネオ島、セレベス島などに渡って越冬する。
希少種に指定。近縁種のウチヤマセンニュウは、朝鮮半島の南部、玄海灘、日向名だおよび三重県の尾鷲海岸のいくつかの小島と伊豆七島で繁殖する。
この2種は、はじめシベリアセンニュウの亜種として記録された。
その後、両者はシベリアセンニュウから独立し、一つの種として扱われてきたが、最近は別種として扱うこともある。
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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雌雄同色】
額・頭上・後頭・後頸は赤錆色を帯びたオリーブ褐色で、秋季は赤錆色を帯びた褐色勝ちである。
羽換したときには明瞭な淡色の羽縁がある。眼の上には灰白色の短い眉斑があり、眼先から眼の後方までオリーブ褐色の過眼線がある。
耳羽はオリーブ褐色で、羽軸は淡色である。腮・喉は白色、頬・喉の両側、下喉は白色で、各羽縁はオリーブ褐色である。
背・肩羽・腰・上尾筒は赤錆色を帯びたオリーブ褐色で、秋季は赤錆色を帯びた褐色勝ちである。
羽換したときには明瞭な淡色の羽縁がある。上胸と胸側はオリーブ褐色を帯びた白色、下胸と腹は白色、下腹はややクリーム色を帯びている。
脇は赤錆色を帯びたオリーブ褐色、下尾筒は淡褐色で、各羽端には幅の広い白色の縁があり、秋季は下面は黄色勝ちである。
下雨覆・腋羽はクリーム白色。
風切羽は暗褐色で、初列風切、次列風切には赤錆色を帯びたオリーブ褐色の外縁があり、内弁の縁は褐色を帯びたクリーム色である。
三列風切には同色の羽縁があり、大・中雨覆、初列雨覆・小翼羽は暗褐色で、オリーブ褐色の羽縁がある。
小雨覆はオリーブ褐色、尾は中央の1対は赤錆色を帯びたオリーブ褐色、他の尾羽は羽端に白斑があり、外弁は赤錆色を帯びたオリーブ褐色、内弁は暗褐色で濃色の不明瞭な横縞が多数ある。
下面は煤け色で、暗色の横縞が明瞭にあり、羽端の白斑は幅が広い。
嘴色は上嘴は暗褐色を帯びた角色、下嘴は黄色を帯びた角色。虹彩は暗黄褐色。脚色は淡黄褐色。脛羽はオリーブ褐色。
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- 幼鳥の形質
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背面の羽毛は褐色で、各羽は広いオリーブ褐色の縁を有する。
背面は縦斑状を呈するが、個体によっては一様なオリーブ褐色のものもある。
背面の内でも頭上は鏽色味が少ないが、腰と上尾筒は鏽色に富む。尾は成鳥のものに似るが、横縞は不鮮明である。
翼は成鳥と同様。眉斑は黄バフ色。腮・喉・腹の中央は淡黄色。
胸はバフ黄色で、オリーブバフ色の斑点を有する(多いものは集まって暗色帯をつくる)。脇はオリーブバフ色、下尾筒はバフ色。
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- 卵の形質
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卵は淡黄色、淡薔薇色で、暗紫色、淡紫褐色、紫灰色などの微細な小斑点が一面に密在する。
ときには斑点が鈍端の方に密在するものや、暗紫色の短い曲線が鈍端にあるものなどがある。
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生態
- 生息環境
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平地の草原に生息するが、北海道では海岸の草原に生息し、内陸では少ない。
センニュウは漢字で「仙入」と書くが、「潜入」という字をあてたほうがよいと思えるほど、草地や藪の中に潜って生活する。
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- 食性
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草から草へと敏捷に移動しながら、ムカデ、ヤスデ、ワラジムシなどの土壌無脊椎動物やアブラムシ、カメムシ、キリギリス、バッタなどの昆虫を捕らえて餌にする。
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- ライフサイクル
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繁殖期は6~8月、年に1回の繫殖がふつうで、一夫一妻で繁殖する(中田, 1976)。
イネ科の葉や茎を主材にして、草原の地上や草本類の低い枝の上に巣をつくる。巣づくりは雌雄とも行う(中田, 1976)。
1巣卵数は2~5個で、4個がもっとも多く(平均3.8個)、1日1卵ずつ産卵し(中田, 1976)、抱卵は雌だけが行う。雄はこの間なわばり内でさえずったり採餌する。
抱卵日数は最終卵の産卵日から数えて13~14日、育雛は雌雄共同で行い、雛は11~14日で巣立つ(中田, 1976)。
雛は巣立ち後10~14日は飛ぶことができず、親の給餌を受ける。
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- 鳴き声
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チッ、チッ、チッ、チュルルルルーまたは、チュルルルル―チュカ、チュカ、チュカ、あるいはピッ、ピッ、ピー、チョイ、チョイ、チョイ、またはチチチ、チー、チビ、チビ、チビなどと早口に囀り、時折り垂直に舞い上がって囀る。
地啼きはチッ、チッ、チッまたはジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッと細い声である。5月から7月頃まで盛んにさえずり、最盛期には夜間にも囀る。
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- 特徴的な行動
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雄は6月初旬に渡来し、雌は雄より1~9日遅れて渡来する(中田, 1976)。
渡来した雄は、縄張り内のソングポストにとまり、胸をはってチッチッチュピイチュピィチュピィとさえずったり(静止さえずり)、なわばり内の草地から勢いよく 5~10 mの高さまで急角度で上昇し、それから翼の動きを止めて滑空しながらさえずる飛翔さえずりを行い、なわばりを宣伝する(中田, 1976)。
飛行さえずりは繁殖期を通じて見られ、1800 ㎡程度のなわばりを防衛する(中田, 1976)。
造巣期に交尾が見られ、交尾直前には半開きに広げて垂らした翼を、一定のリズムで上下に動かす翼振行動が見られる(中田, 1976)。
翼振行動は、番の形成時や、なわばり争いでも観察される。雌雄とも毎年同じ地域に帰還する。
雄はほとんど同じ場所になわばりをもつが、雌は同じ場所に定着しないため、年ごとに番の更新が起こる(中田, 1976)。
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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ