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ルリビタキ(Tarsiger cyanurus)の分類 ヒタキ科(Muscicapidae)
ルリビタキ(Tarsiger cyanurus)の概要 ルリビタキ属(Tarsiger)

ルリビタキ(Tarsiger cyanurus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Tarsiger cyanurus (Pallas, 1773)

基本情報

大きさ・重さ

・全長:約 14 cm
・翼長:雄 75.5~84.0 mm 雌 72.0~79.0 mm
・尾長:雄 55.0~63.0 mm 雌 51.5~58.5 mm
・嘴峰長:雄 10.0~11.5 mm 雌 10.0~11.5 mm
・ふ蹠長:雄 21.1~24.0 mm 雌 21.0~24.1 mm
・体重:雄 11.0~15.2 g 雌 10.0~17.8 g
・卵:長径 16.6~19 mm×短径 13.3~14.4 mm 平均長径 17.8 mm×短径 13.8 mm 重量 1.6~1.7 g

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ルリビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 307~309.

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

分布

日本では全国的に生息している。本州においては漂鳥であるが、北海道や東北地方などでは夏鳥である。

越冬期には本州中部以南の低地にて普通に見られ、四国、九州、伊豆諸島、小笠原諸島、奄美大島、台湾などでも越冬する(日本鳥学会 2000)。

生息環境:本州では標高約 1,500 m以上の亜高山~高山帯の森林で繁殖する。

北海道を含む国内高緯度地域では、植相の垂直分布に伴い繁殖標高は低下する。

繁殖環境は森林限界域の針葉樹低木林から亜高山域の針広混交林まで幅広い。

越冬期は低地の低木や薮がある、やや開けた環境で越冬する。

参考文献

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

学名の解説

種小名は青い尾の意味。

参考文献

  • 吉井正 2005 ルリビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 537.

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

亜種・品種

ルリビタキには2亜種があり、T. c. rufilatus はヒマラヤ地区と中国西部に分布する。短距離の移動を行い、越冬期には南下し、インド、ミャンマー、タイ北部に至るとされている。

一方、T. c. cyanurus は日本、中国、モンゴル、ロシアなどで繁殖し、この中でも北方の個体群は越冬期は南下、拡散する。

東ヨーロッパとロシアの境界(フィンランドなど)まで移動することは稀だが、少数の観察例がある(Cramp, 1988)。

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分類学的位置付け

スズメ目 ツグミ科

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最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄】
額、頭上、後頭、後頸、眼先、耳羽、頬は暗青藍色で、秋季は各羽に赤錆色を帯びた褐色の羽縁がある。

眼の上には白色の眉斑があり、眼より後方は青藍色を呈し、この部分の各羽は基部白色で、羽縁だけ青藍色である。

腮、喉、胸、腹、下尾筒はクリーム白色で、喉の両側は暗青藍色を帯び、胸側と脇はオレンジ色である。

背、肩羽は頭上と同様で、腰、上尾筒は美しい青藍色である。

風切羽は暗褐色で、初列風切、次列風切には暗青藍色の幅の狭い外縁がある。

三列風切の外弁は暗青藍色を帯びている。

大、中雨覆は暗褐色で、羽縁は暗青藍色を帯び、小雨覆は美しい青藍色である。

初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、暗青藍色の幅の狭い外縁がある。下雨覆、腋羽はクリーム色。

尾は暗褐色で、外弁は暗青藍色を帯びている。

嘴色は黒色、虹彩は褐色、脚色は暗褐色、脛羽は雄が灰青色、雌が灰オリーブ色。

【雌】
額、頭上、後頭、後頸、眼先、耳羽、頬はオリーブ褐色、眼の周囲は褐色を帯びた白色である。

背、肩羽、上腰はオリーブ褐色。

下腰、上尾筒は暗青藍色を帯びたオリーブ褐色である。

胸はオリーブ褐色を帯びたクリーム白色、脇はオリーブ褐色を帯びたオレンジ色である。

風切羽は暗褐色で、初列風切、次列風切には赤錆色を帯びた褐色の外縁があり、三列風切の外弁は赤錆色を帯びた褐色である。

大、中雨覆は暗褐色で、羽縁は赤錆色を帯びた褐色である。

小雨覆はオリーブ褐色、初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、赤錆色を帯びた褐色の幅の狭い外縁がある。

下雨覆、腋羽はクリーム色である。ほかは雄と同じである。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ルリビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 307~309.

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

【幼鳥 幼羽】
頭上は暗褐色で、細かい淡バフ色の斑点がある。

背・肩はオリーブ褐色で、やや粗い淡バフ色の斑点があり、各羽の先は暗褐色である。

腰および上尾筒はオリーブ灰色で不明瞭な淡バフ色の斑があり、各羽の先はわずかに暗色である。

尾は淡い暗褐色で、中央対とこれに続く3対の尾羽の外弁は灰青色。

しかし外側の2側の外縁は淡オリーブ色を帯びている。

翼は雌成鳥のものと同様であるが初列風切の外縁はオリーブ灰色、大雨覆の先はやや淡く、中雨覆および小雨覆の各羽の先には不明瞭なバフ色の小斑がある。

眼先、頬、耳羽は暗褐色で各羽にはバフ色の軸斑がある。

腮、喉、腹、下尾筒は淡バフ色で、下尾筒以外は淡い暗褐色の縁があり、胸は帯クリームバフ色で、各羽にはやや濃い暗褐色の縁がある。

嘴および脚は褐色。

【第1回冬羽】
幼鳥は8月から10月に体羽全部・中雨覆・小雨覆・内側大雨覆を換羽して第1回冬羽となる。

この羽衣は雄雌とも雌成鳥に似ており、ときに雌は雌成鳥と区別しにくい。

ただし雄は雌成鳥とくらべて腰と小雨覆が青色をおびており、上尾筒と尾羽の青色が鮮やかである。

また脇の橙色は雌のものよりも美しく、範囲の広いものが多い。

なお、この羽衣の雄は雌と比べて多少大きい。

【第2回冬羽】
第2年秋季に風切りおよび尾羽を含む全身の換羽で第2回冬羽となることは明らかであるが、これが成鳥冬羽であるか、あるいは第1回冬羽と同様なのかははっきりと分かっていない。

【雛】
初毛は煤灰色で長く、羽域は内眼上域・後頭域・背域・上膊域。

口の内面は橙黄色、舌と口縁は淡黄色。舌の基部両側に不明瞭な暗色の斑点が1個づつあるものと、ないものがある。

上嘴の上面は帯灰角色、脚は帯紅淡黄色。

参考文献

  • 山階芳麿 1980 ルリビタキ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 302~308.

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は白色の地に淡赤褐色と淡紫色の微小斑が散在する。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ルリビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 307~309.

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生態

生息環境

繁殖期には、四国や本州では亜高山針葉樹林、北海道では亜寒帯針葉樹林にすむ。

とくに北海道では幅広く生息し、大雪山などではハイマツ帯でふつうに見られ、道東部では海岸に近い針葉樹林にもいる。

本州中部の山岳地帯ではハイマツ林でも見られる。

冬は本州中部以南の低山帯のマツ林や針広混交林で見られる。

参考文献

  • 中村登流 1995 ルリビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 177.

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食性

食物はおもにガの幼虫などの昆虫、ハチ、クモ、ヤスデなどで、親鳥は林内の地上近くを移動しながら食物を探したり、やや高い枝から地面がにさっと降りて獲物を捕らえたりすることが多い。

植物の実も好んで食物とする。

参考文献

  • 岩崎文紀 2006 ルリビタキ, 日高敏隆(監修) 樋口広芳、森岡弘之、山岸哲(編) 日本動物大百科 4:鳥類Ⅱ. 平凡社. .

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ライフサイクル

繁殖期は5~8月、一夫一妻で繁殖する。

繁殖地へは必ず早い時期の4月下旬から5月上旬に現れ、盛んにさえずる。

巣は、岩の間や下、樹林の根の間や下などの穴蔵のような隠れたところを選ぶ。

雌のみがつくり、雄はその雌について回りガードする。

巣は椀形で、外装は蘇類、地衣類、草など、内装は落ち葉、シダ類の仮根、獣毛などでつくる。

1巣卵数は3~6個、抱卵日数は16日ぐらい、抱卵は雌のみが行い、雄は巣内の雌に給餌しない(緑川、1976)。

初期幼鳥の抱雛は雌のみが行い、雛は両親の給餌を受けて14日ぐらいで巣立つ(緑川、1976)。

しばしば雌型の雄が繁殖しているのが見られるが、まだ生殖羽にならない1年鳥とされる(Dement’ev et al., 1968)。

同じ繁殖期に第2繁殖をするものがある(緑川, 1976)。

しばしばツツドリとジュウイチの卵や雛の寄生を受け、それらの仮親となる。

参考文献

  • 中村登流 1995 ルリビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 177.

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

鳴き声

繁殖期のオスは、早朝より夕方まで1日中さえずり、天候が崩れても比較的よく鳴く。

樹冠部でさえずることが多く、澄んだ笛のような声で「ヒュロロ ピュロリロチュロリッ」という短めのフレーズを繰り返しさえずる。

地鳴きは雌雄ともに 「ヒッ、ヒッ」、「カッ、カッ」と少し濁った声で鳴く。

参考文献

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

特徴的な行動

ヒナを捕食するオコジョなどの動物や人間が巣に近づくと、親鳥は雌雄ともに「ヒッヒッ」「グッグッ」などと声を発しながら周囲を飛び回って警戒するようになる。

参考文献

  • 岩崎文紀 2006 ルリビタキ, 日高敏隆(監修) 樋口広芳、森岡弘之、山岸哲(編) 日本動物大百科 4:鳥類Ⅱ. 平凡社. 97~98.

最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ

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