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- キビタキ(Ficedula narcissina)について

キビタキ(Ficedula narcissina)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Ficedula narcissina (Temminck, 1836)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:9~11 mm
・翼長:雄 74~81.5 mm 雌 69~79 mm
・跗蹠:14~18 mm
・尾長:雄 49~54 mm 雌 45~51 mm
・体重:14~17 g
・卵:長径 16~19.5 mm × 短径 13.3~15 mm 平均長径 18 mm × 短径 14 mm 重量 1.5~2 g
参考文献
- 清棲幸保 1955 キビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 229-231.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。中国山西省東部、ウスリー、サハリン、日本などアジア東北部で繁殖し、冬はフィリピン、インドシナ半島、ボルネオ島に渡って越冬する。
日本には夏鳥として渡来し、ほぼ全国的に分布する。屋久島から琉球諸島にかけては別亜種のリュウキュウキビタキ(F. n. owstoni)が繁殖する。
またウスリーなどで繁殖するマミジロキビタキ(F. zanthopygia)が、まれな旅鳥として日本に渡来する。
参考文献
- 中村雅彦 1995 キビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 72.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 学名の解説
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種小名はスイセンのようなという意味。
参考文献
- 吉井正 2005 キビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 170-171.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ヒタキ科
参考文献
- 吉井正 2005 キビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 170-171.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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福島県の県鳥
参考文献
- 吉井正 2005 キビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 170-171.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄】
額、頭上、後頭、後頸、眼先、耳羽、頸は黒色で、ときには多少褐色またはオリーブ色を帯びているものがいる。
額側から眼の上後方まで鮮黄色の細い眉斑がある。腮、喉、上胸は黄金黄色、橙黄色、赤味を帯びた鮮黄色など種々のものがある。
腮と喉の両側は黒色である。背、肩羽、上尾筒は黒色、下背と腰は橙色を帯びた鮮黄色である。
胸、脇は鮮黄色で、胸側の各羽縁は黒色で、脇も黒色を帯びている。
腹、下尾筒は白色で、腹は淡黄色を帯びている。初列風切、次列風切は黒褐色、三列風切は黒色で、外弁の基部には白色の縁が多少ある。
大、中雨覆は外側のものは黒色、内側のものは白色で、各羽縁には黒色の斑がある。
小雨覆、初列雨覆、小翼羽は黒色、下雨覆、腋羽は白色で、各羽の基部は黒色である。
初列風切の第2羽は第6羽より長いかまたは同長である。尾は黒色。嘴色は、雄は黒色、雌は暗褐色。
虹彩は褐色、脚は褐色、脛羽は雄が黒色で雌が暗褐色。
【雌】
額、頭上、後頭はオリーブ緑褐色で、各羽の中央は暗色である。
眼先、耳羽、頬は褐色を帯びたオリーブ緑色、腮、喉は白色で、各羽縁はオリーブ灰褐色を帯びている。
腮、喉の周囲は暗オリーブ褐色である。後頸、背、肩羽はオリーブ緑褐色で、後頸は灰色を帯びる。
胸、脇は褐色を帯びたオリーブ緑色、腹、下尾筒はクリーム色を帯びた白色である。
腰はオリーブ黄緑色、上尾筒は赤褐色である。翼は暗褐色で各羽には赤褐色の外縁がある。
尾は暗褐色で、赤錆色を帯びた褐色の外縁がある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 キビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 229-231.
- 吉井正 2005 キビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 170-171.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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孵化直後の雛は肉色の裸体のままで、オリーブ褐色の初毛が眼の上、後頭、上膊、前膊、背などの羽域に生えている。
背面の羽毛の基部は灰色、先は淡い鏽色で、各羽には黒褐色の縁がある。ただし上尾筒は著しくオリーブ黄色を帯びている。
尾羽は雌成鳥と同じく暗褐色で、茶褐色の外縁がある。小雨覆および中雨覆は背と同色であるが、鏽色斑は鮮やかである。
そのほかの風切および雨覆は暗褐色でオリーブ褐色の縁があり、大雨覆と三列風切との先には淡鏽黄色斑がある。
下面はすべて汚白色で各羽には黒褐色の縁があるが、腹の中央と下尾筒はほとんど白い。
この羽衣のものの嘴は暗褐色で、下嘴の基部のみ淡褐色。
参考文献
- 清棲幸保 1955 キビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 229-231.
- 山階芳麿 1980 キビタキ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 44-47.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は淡薔薇色の地に赤褐色と淡紫色の斑点のあるものと、青緑色の地に赤褐色と淡紫色の斑点のあるものとがあり、地色および斑点の濃度と斑点の大きさなどは、個体によっていろいろである。
参考文献
- 清棲幸保 1955 キビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 229-231.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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丘陵や山地の常緑樹林、落葉樹林、針広混交林に生息する。北海道では平地の林にも生息する。
薄暗い林を好み、木がある程度大きくて樹冠の下に空間があり、中層から下層がある程度茂っている林内に生息する。
春や秋の渡りの時期には、市街地の公園でもよく見かける。
参考文献
- 中村雅彦 1995 キビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 72.
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- 食性
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フライングキャッチ法が主な採餌方法で、ゴミムシ、テントウムシ、コガネムシ、ガの幼虫などを食す。
林の中層の枝に止まり、木の葉の裏面にいる虫や空中を飛翔する昆虫を狙う。
餌をくわえると、元いた枝やその近くの枝にもどる。盛んに止まり場である枝を変え、採食場所を移動する。
秋の渡りの記事には液果も食べる。
参考文献
- 中村雅彦 1995 キビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 72.
- 清棲幸保 1955 キビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 229-231.
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- ライフサイクル
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繁殖期は5~8月、年に1~2回(鈴木ほか, 1992)、一夫一妻で繁殖する。
巣は樹洞や樹木の裂け目、茂った葉や蔓の間などに、落葉広葉樹の枯れ葉、枯れ草、コケ類や細根などを用いて深い椀形につくる。
キツツキ類の古巣穴や前が開いた巣箱を利用することもある。
巣づくりはすべてが雌だけが行い、雄は巣づくり中の雌に対して追尾行動を行う(江崎, 1970)。
1巣卵数は4~5個、1日1卵ずつ産卵し、雌だけが12~13日抱卵し、1回の抱卵持続時間は1~2時間におよぶ(江崎, 1970)。
1回の離巣時間は平均16.4分で、この間に雌は採食する。雌が抱卵中、雄はなわばり防衛をおこなっているようである。
雛への給餌は雌雄共同で行い、育雛の初期には、雄は抱雛中の雌に餌を与え、雌がそれを受け取って雛に給餌する。
育雛期の餌運び回数の割合は、雄51%、雌94%とほぼ同率である(江崎, 1970)。雛は約12日で巣立つ。
参考文献
- 中村雅彦 1995 キビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 72.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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囀鳴期には高い梢の頂にとまって囀ることが多い。
5月から6月の囀鳴期には雄はピーピ、ピョコピー、ピリヒョコピー、チッチリリ、チッチリリ、ツクツクオーシ、ツクツクオーシと美しく優しい声で囀り続け、雌はヒヒ、ヒヒと鳴くだけである。
渡りのときや幼鳥をつれているときにはヒヒ、ヒヒ、ヒヒ、キョロロ、キョロロと啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 キビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 229-231.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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番ごとになわばりをもって分散する(江崎, 1970)。
4月下旬から5月初旬にかけて渡来し、繁殖地で雄は盛んにさえずり、なわばりを形成する。
雄はヤシの中層の枯れ枝などに止まってさえずることが多く、オオルリのように木の梢に現れることはない。
巣材採集や採食、繁殖はすべてなわばりの中で行われ、争い行動には鋭い羽音やパチパチパチとくちばしを鳴らす音をともなう。
枝の上で 10~30 ㎝の間隔でにらみ合ったり、6~7の枝の上から地上まで垂直的に追い込み、地上でつつき合う激しい行為もある(江崎, 1970)。
巣の周辺での争いには雌も参加する。家族群以外に群れをつくることはない。渡りの時期には単独でいることが多い。
参考文献
- 中村雅彦 1995 キビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 72.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ