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ビンズイ(Anthus hodgsoni)の分類 セキレイ科(Motacillidae)
ビンズイ(Anthus hodgsoni)の概要 タヒバリ属(Anthus)

ビンズイ(Anthus hodgsoni)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Anthus hodgsoni Richmond, 1907

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:11~12 mm
・翼長:77~87 mm  
・跗蹠:20~22 mm
・尾長:56~64 mm
・体重:16~30 g
・卵:長径 17.6~22.6 mm × 短径 14.5~15.9 mm 平均長径 20.5 mm × 短径 15.4 mm 重量 22.7 g

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分布

旧北区。ユーラシア大陸東部の温帯・亜寒帯で繁殖する。

生息する垂直分布域は広く、海岸近くからヒマラヤ山系では標高 4,500 mの高山帯におよぶ。

日本では本州中部の山地から北海道にかけて繁殖し、少数は四国の山地でも繁殖する。

本種はタヒバリ属(Anthus)のうち、日本で繁殖する唯一の種である。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ビンズイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 126.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

学名の解説

種小名は1830年代にネパール駐在イギリス総督であったB.H.ホジソンにちなむ。

参考文献

  • 吉井正 2005 ビンズイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 431.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

亜種・品種

カラフトビンズイ(A. h. yunnanensis)

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ビンズイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 126.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

スズメ目 セキレイ科

参考文献

  • 吉井正 2005 ビンズイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 431.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

雌雄同色。額、頭上、後頭、後頸は緑褐色で、各羽には黒褐色の軸斑があり、冬季は全体にオリーブ色を帯びている。

眼の上にはクリーム色の眉斑がある。耳羽はクリーム色またはオリーブ褐色で、黒褐色の縦斑がある。

腮、喉はやや赤味がかったクリ―ム色で、喉の両側には下嘴の基から後方に黒褐色の斑からなる顎線が走り、顎線と耳羽との間はクリ―ム色である。

背、肩羽、腰、上尾筒は緑褐色で、背、肩羽には黒褐色の軸斑があり、冬季は全体にオリーブ色を帯びている。

胸は赤味がかったクリーム色で、黒褐色の縦斑からなる幅の広い帯があり、顎線と引き続いている。

上腹は白色で、黒褐色の縦斑があり、冬季はその数が少ない。

下腹は白色、脇、下尾筒は赤味を帯びたクリーム色で、脇には黒褐色の細長い軸斑がある。

翼は暗褐色で、初列風切、次列風切、三列風切、大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽には緑褐色の縁があり、三列風切ではその幅が広く、大、中雨覆には先端に白斑がある。

尾は暗褐色で、中央の1対は緑褐色の羽縁があり、ほかの尾羽は外縁だけに同色の羽縁がある。

最外側の尾羽では内弁に楔形の細長い白斑があり、次の尾羽では内弁の先端の同形の極く小さな白斑がある。

腋羽はクリーム色、嘴色は上嘴は暗褐色、下嘴は褐色で、先端は暗色。虹彩は暗褐色、脚色は淡褐色、脛羽はクリーム色。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.
  • 吉井正 2005 ビンズイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 431.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

孵化直後の雛は肉色の裸体のままで眼の上、後頭、背、上膊、前膊、腿、脛などの羽域に暗灰色の長い初毛が豊富に生えているが、脛と腹の羽域には極くわずかに生えている。

口中は鮮紅色、口角縁は淡黄色である。

【幼鳥】
背面はオリーブ褐色で、頭上・背・肩羽には明瞭な黒褐色縦斑がある。

翼および尾は成鳥と同じ。眉斑はバフ白色で各羽の先は暗褐色。耳羽・頬・顎の各羽の先も暗褐色。

喉・胸・腹側の縦斑は成鳥のものよりも細くて数が多い。腹は白く、下腹および下尾筒はバフ色。

【第1回冬羽】
幼鳥は7月から9月に初列雨覆・初列および次列風切・尾羽以外をすべて換羽して第1回冬羽となる。

新羽は成鳥と異ならない。

【第一回夏羽】
幼鳥は第二年の春季に成鳥と同様の部分を換羽して第1回夏羽となる。

この羽衣は成鳥夏羽と同様であるが、ただ初列風切そのほか換羽しない部分の羽毛の摩耗が著しく目立つ。

【第2回冬羽】
幼鳥は第2年の秋季に風切・尾羽などをも含み全体を換羽して成鳥冬羽となる。

参考文献

  • 山階芳麿 1980 ビンズイ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 270-273.
  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は青味のある灰白色の地に紫褐色、赤褐色、暗褐色、黒褐色などの濃色の小斑と淡紫色または淡灰色の小斑とが散在するものと灰白色の地に暗褐色または紫褐色の微細な斑点が密在するものがある。

ときには淡赤褐色の地に赤褐色の微細な斑点が密在し、一様に赤褐色であるものがあるが、斑点は鈍端の方に密在するものが多い。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

生態

生息環境

北海道や東北地方北部では、海岸近くから山地までふつうに見られるが、そのほかの地方では繁殖は山地に限られる。

本州中部では、比較的標高の高い山地の明るい林、灌木の散在する草原、林縁、木が疎らに生えた草原、夏のスキー場などに生息する。

低山帯の上部から亜高山帯、高山帯のハイマツ林や岩石が露出するお花畑にも生息し、亜高山帯の樹林が破壊されると直ちに入ってくる。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.
  • 中村雅彦 1995 ビンズイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 126.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

食性

夏は動物質の昆虫を主要食にし、雛にも鱗翅類の幼虫、直翅類の成虫、ヒシバッタ、コオロギ、ムカデ、ハチ、ハエ、ガガンボ、甲虫などを給餌する(羽田・長谷川, 1970)。

冬には主に植物の種子をついばむ。地上で両脚を交互にして、足早に歩行しながら採食することが多く、はね歩くことはない。

驚くと飛び立ってすぐ樹梢に止まり、ほかのセキレイ類と同様によく尾を上下に振る。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.
  • 中村雅彦 1995 ビンズイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 126.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

ライフサイクル

4月下旬に繁殖地に渡来し、5~8月までに年に2回、一夫一妻で繁殖する。

巣づくりはすべて雌が行い、雄は巣材をくわえることはあるが、巣へは運ばない(羽田・長谷川, 1970)。

巣は林緑の草の根元、崖、土手の窪みなどにある例が多く、皿形か浅い椀形である。

外装はイネ科の枯れた茎や葉を主材にしてつくり、内装にはヤマドリゼンマイの綿毛や植物の細根、または菌糸束を利用する。

1巣卵数は3~5個で、平均4.2個、1日1卵づつ早朝に産卵する(羽田・長谷川, 1970)。

しばしばカッコウに托卵される。抱卵は雌だけが行い、抱卵日数は12~13日(羽田・長谷川, 1970)。

雄は抱卵中の雌に1日に1~3回餌をくわえて訪巣するが、雌がそれを必ず受け取るとは限らない。

また、巣外での雄から雌への給餌も見られない(羽田・長谷川, 1970)。

雛への給餌は雌雄共同で行い、育雛日数は約10日。巣立ち雛の体重と翼長は、成鳥のそれぞれ70%と45%に満たないのにもかかわらず巣立つ。

しかし、歩くことさえできれば雛は巣から出ていく(羽田・長谷川, 1970)。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ビンズイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 126.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

鳴き声

ツィー、ツィーと細く鋭い声で地啼きし、警戒時にもこの声で啼く。

囀鳴時には雲雀にやや類似したチチチュ、チチチチ、スカ、スカ、スカ、スカまたはピピ、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ、スカ、スカ、スカ、スカまたはチチチョ、チチチチ、チイチイリヨロ、プイ、プイ、プイ、ピリリリーと、とても美しい声で囀鳴続ける。

囀るときには灌木の頂や喬木の高い頂などにとまり、ときにはグゼリを混じえることもある。

時折り樹梢から翼を羽搏いて垂直に上昇しつつ囀鳴し、また元の梢に舞降り、雲雀の囀鳴時の飛翔に類似しているが、雲雀ほど高空に舞い上がることはない。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

特徴的な行動

繁殖期には番ごとになわばりをもって分散する。

繁殖前期に樹梢からさえずりながら翼を細かくはばたかせて垂直に上昇し、尾羽を高く上げてゆっくり舞い下りる行動が見られる。

ヒバリの空中さえずりに似るが、ヒバリほど高空に舞い上がることはない。冬にマツ林などの明るい林の地上で小群をつくって採食しているのをよく見かける。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ビンズイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 126.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

その他生態

夏季は雄雌で生活し、繁殖期には雄はある一定の生息領域を持っている。春秋の候には群棲していることが多い。

地上で餌を漁ることが多いが、樹梢に殆どとまらないタヒバリの習性とは著しく異なり、驚くと飛び立って直ぐ樹梢にとまり、枝上で尾を絶えず上下に振る。

地上を歩むときには、両脚を交互にして速足に歩行し、跳ね歩くことはない。

飛翔時には翼を迅速に羽搏いて波形に飛ぶ。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ビンズイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 126-129.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

種・分類一覧