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ハリオアマツバメ(Hirundapus caudacutus)の分類 アマツバメ科(Apodidae)
ハリオアマツバメ(Hirundapus caudacutus)の概要 ハリオアマツバメ属(Hirundapus)

ハリオアマツバメ(Hirundapus caudacutus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Hirundapus caudacutus (Latham, 1802)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:8~10 mm
・翼長:196~214 mm  
・跗蹠:16~18 mm
・尾長:47~54 mm
・針状の羽軸:3~6 mm 
・体重:122~132 g
・卵:長径 27.5~31 mm × 短径 21~22.4 mm 平均長径 29.9 mm × 短径 18.8 mm

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最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分布

旧北区。ヒマラヤから中国南部(留鳥)、ウスリー、朝鮮半島、千島列島、日本で繁殖する。

アジア東部のものは、ニューギニア島、オーストラリア大陸、ニュージーランド、タスマニア島に渡って越冬する。

アマツバメよりも大型で、体は太く、翼は長いが、先にいくほど細くなるいわゆる鎌形ではない。

尾羽の先端から針状の羽軸が突き出ているが、飛翔中は近くでも見えないことが多い。

日本には夏鳥として4月ごろ渡来し、北海道および本州中部以北で局地的に繁殖する。

本州では関東地方以北に分布が集中しているが、北海道では道央部を中心にほぼ全域に生息する(環境庁, 1981)。

兵庫県の山中でも繁殖の可能性があるといわれている。

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最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

アマツバメ目 アマツバメ科

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人間との関係

『日光山志』に記される岩燕はこの鳥である。

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形態

成鳥の形質

雌雄同色。前額は白色または褐白色、頭上、後頭、後頸は黒褐色で藍緑色の金属光沢がある。

眼先は黒色、耳羽は暗褐色で、各羽縁には緑色の金属光沢がある。頬、腮、喉は白色である。

背、肩羽、腰は褐色であるが、背と腰の中央はときに淡褐色で、各羽縁が白色のものもある。

胸、腹、脇は褐色で、脇の一部は線をなして白色である。

上尾筒は黒色で藍緑色の金属光沢があり、下尾筒は白色で、各羽端に黒色の縁のあるものとこれを欠くものがある。

下雨覆、腋羽は黒色で藍緑色の金属光沢がある。

風切羽は黒色で、初列風切、次列風切には藍緑色の金属光沢があり、内弁の緑は灰褐色である。

三列風切には緑色の金属光沢があり、内側のものの内弁はときには全部、またときには一部だけ白色である。

大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は黒色で、藍緑色の金属光沢がある。

尾は緑色または藍色の金属光沢のある黒色である。各羽軸は羽端から長く針のように突出している。

嘴色は黒色、虹彩は暗褐色、脚色は暗褐色を帯びた肉色、脛羽は緑色の金属光沢のある黒褐色。

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最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

成鳥と極めて似ているが、前額はクリーム白色ではなく暗褐色で、眼先は淡褐色を呈する。

頭上および後頭は少し緑色を帯び、翼および尾の光沢はオリーブ緑色を呈する。

また下腹および下尾筒の白色の羽毛の先には細い褐色の縁がある。尾羽には成鳥と同様の針がある。

第1回冬羽は8月から10月に体羽を換羽するが、翼羽および尾羽は換羽しない。

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卵の形質

卵は純白色で斑紋を欠いている。

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生態

生息環境

北海道では平地にも生息するが、本州では低山帯から高山帯を主とする山岳地帯に生息する。

北海道では、森林や草原の上空を飛ぶのを見かけるのがふつうである。

夏季は山岳地方の岩壁のある附近や亜高山帯の針葉樹林または山毛欅、岳樺などの落葉濶葉樹の喬木林附近の上空を飛翔することが多い。

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食性

たいてい小群をつくって飛翔し、上昇気流に吹き上げられて空中に漂うスズメバチ、イトアメンボ、甲虫、アブ、ガガンボなどの昆虫を大きな口を開けて捕食する。

本州中部の山岳地帯では谷川に沿って滑翔し、上流、下流を往復することから、羽化した水生昆虫も食べていると考えられる。

天候が悪化すると低空域に集中する。飛翔はアマツバメよりさらに速く、全鳥類のなかで最高速度をもつといわれる。

滑空を主とし、浅いが力強いはばたきを交えて、広範囲を飛び回る。

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ライフサイクル

繁殖期は5~9月、一夫一妻で繁殖する。抱卵から巣立ちまでの期間が長いため、年に1回の繁殖と考えられる。

山地の断崖の亀裂の中や森林の高木の高さ 5~7 mの樹道の中に、空中に漂う枯れ草などを集めて、ゼラチン状の唾液で粘着させて椀形の巣をつくる。

雌は純白の卵を3~4個(清棲, 1978)、あるいは2~3個(Deme-nt’ev et sl, 1966)産卵するというが、北海道十勝地方の繁殖例では1巣卵数は4~7個(米川, 私信)である。

雌雄交替で17~21日抱卵し、孵化した雛は巣立つまでに40~50日を要する。

雛は巣立ちと同時に飛行できるように、樹洞内で盛んに飛び回るはばたき練習を2週間以上も続ける(米川, 私信)。

雌雄共同で育雛し、親は1日に6~12回しか給餌しない。

親は空中で採集した昆虫を嗉嚢に貯え、1回の給餌で複数の雛に吐き戻して与える。

巣立ち直後の若鳥は自力で昆虫を採食するが、空中で親から給餌されることもあるらしい。

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特徴的な行動

上空を飛び回る姿はよく見るが、人が近づけない断崖や樹洞に営巣するため、詳しい婚姻システムはほとんどわかっていない。

渡来初期に上空を乱舞する際、個体どうしが接触したり、求愛給餌を行うらしい(米川, 私信)。

春や秋の渡りの時期には、市街地や海岸、河川の上空で群れているのが各地で見られるが、本州ではアマツバメより見る機会は少ない。

アマツバメ、あるいはイワツバメと混群をなして飛翔することもある。飛翔中に、ジュリリリとアマツバメより濁った声で啼く。

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その他生態

飛翔しつつ忙しげに餌を捜し、我々が観察するのは飛んでいるときが主である。

鎌形の翼を左右に充分に延ばし翼を5~8回位激しく羽搏いてはスーと滑翔を続け、ややアマツバメに似ているが、アマツバメより雄大な飛び方で体はそれより太く大きく、翼の幅が広くて、鎌形の曲がりは少なく、尾は著しく短い角形である点が異なる。

雄雌または小群(30羽位)で飛翔することが多いが、ときには大群(200羽位)をなすこともある。

樹洞や崖などに趾によって懸垂する。

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関連情報

飼育方法

餌はハヤ粉2匁5分・ヌカ2匁5分・牛肉6匁を摺り混ぜたものが最もよかった。

しかし自分で餌を食べることはできず、団子のように丸めた餌を口を割って与えなければならなかった。

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種・分類一覧