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ウトウ(Cerorhinca monocerata)の分類 ウミスズメ科(Alcidae)
ウトウ(Cerorhinca monocerata)の概要 ウトウ属(Cerorhinca)

ウトウ(Cerorhinca monocerata)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Cerorhinca monocerata (Pallas, 1811)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:32~37 mm
・翼長:172~186 mm
・跗蹠:28~32 mm
・尾長:45~62 mm
・卵:長径 63.7~78 mm × 短径 42.6~51 mm 平均長径 68.5 mm × 平均短径 46.2 mm 重量 75 ℊ位

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ウトウ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 851-852.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

分布

全北区。日本海、オホーツク海、北太平洋、カナダの太平洋側などの沿岸で繁殖し、冬は洋上に広がり、いくらか南下する。

日本では北海道の天売島・松前小島・大黒島・ユルリ島・モユルリ島・知床半島、本州北部の岩手県椿島、宮城県足島・江島などで繁殖が知られている。

冬は日本海では新潟県、富山県あたりまで、太平洋側では東北地方の沿岸まで現れる。

長崎県、対馬、伊豆大島などでも記録がある。

本州北部の繁殖地ではあまり多くないが、北海道ではまだ多く見られ、最近増加する傾向があり、18万羽はいると見積もられた(綿貫ほか, 1988)。

参考文献

  • 中村登流 1995 ウトウ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 149.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

チドリ目 ウミスズメ科

参考文献

  • 吉井正 2005 ウトウ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 67-68.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄雌夏羽】
額・頭上・後頭・後頸は黒色、頭側・眼先・耳羽・頬・エラ・喉・頸側は灰褐色である。

眼の後方と頬には白色の細長い毛のような飾羽が生えている。

背・肩羽・腰・上尾筒は黒色で、各羽の基部は淡褐色であるが、外部からは見えない。

胸・脇は灰褐色、腹・下尾筒は白色である。下雨覆、腋羽は灰褐色である。

初列風切、次列風切は黒色で、内弁は褐色を呈し、先端は黒色である。

三列風切、大・中・小雨覆、初列雨覆、小翼羽は黒色である。尾は黒色である。

嘴色はオレンジ黄色、会合線は褐色、上嘴峰線は黒色、虹彩は暗黄色、脚色は黄白色、関節は褐色、趾膜と爪は黒色。

上嘴の基部には 10 ㎜位の突起物がある。

【雄雌冬羽】
腮・喉は灰色で、頬には白色の毛の様な飾羽が生えているが、秋季の短期間中全くこれを欠く時期がある。

夏羽にある上嘴基部の突起物を欠いている。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ウトウ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 851-852.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

【雛】
孵化直後の雛は全身に暗褐色の幼綿羽が密生し、嘴は暗紅色である。

【幼鳥】
顔には成鳥にある白色の飾羽がなく、嘴は褐色で、兜形の突起を欠き、高さが少ない。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ウトウ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 851-852.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は無光沢の灰白色の地に淡褐色および灰鼠色の線斑や斑点が極く少し散在し、斑点はやや不明瞭なのが常で、ときには斑紋を欠くものもある。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ウトウ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 851-852.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

生態

生息環境

繁殖地には沿岸の孤島や岩礁に集まり、その近辺の海域にいる。

天売島では約17万羽が集まり、天売島と焼尻島の間の海域ですごしている。

集まる島や岩礁は、断崖に囲まれ、植生が存在していて巣穴を掘ることができる土壌の多い場所である。

非繁殖期は洋上にいるが、沿岸からあまり遠ざかることはない。しかし、めったに陸地から見えるほどには近づかない。

参考文献

  • 中村登流 1995 ウトウ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 149.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

食性

海上で群れ、盛んに潜水して採食する。潜って魚を集団で追い回し、魚群を水面近くに追い上げて丸めるといわれる。

雛に持ち帰る餌は、イカナゴ、カタクチイワシ、ニシンなどの魚が多い。

非繁殖期の食物としてはイカ類をかなり含み、魚や甲殻類も食べる。

参考文献

  • 中村登流 1995 ウトウ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 149.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は4~6月、一夫一妻で繁殖する。

巣は、孤島の緩やかな傾斜地の草や木の根元、あるいは岩石の下などの土壌に、深さ 1.2~2 mぐらいの穴を掘って作る。

入口の大きさは 10~23 ㎝ × 6~18 ㎝ぐらいである。

穴掘りは夜間に行われ、雌雄共同で行い、穴掘りには時間を要し、新しく堀った穴はその年の繁殖に間に合わず、多分翌年の繫殖に使うと思われる(Johnsgard, 1987)。

産座には少しばかりの枯れ草の破片があるが、まったくないものもあり、巣材集めしている証拠はない。

1巣卵数は1個で、直に地上に産む。抱卵は両親が交替で行う。交替は夜間に行われ、親は夜になってから集団で現れ、夜明け前に去る。

交替は毎日とは限らず、はじめ4日続けて抱卵した例もあれば、3日も巣を空けていた例もある。

雛は39~52日ぐらいで孵化する。雛は両親に給餌されて育ち、35~50日ぐらいで巣立つ。

給餌は夜間で、毎夜1~2回、親は1回に平均6匹くらいの魚をくわえてくる。

巣立ちのときの雛の体重は親の70%ぐらいで、夜間に歩いたり飛び降りたりして海に出る(Johnsgard, 1987)。

参考文献

  • 中村登流 1995 ウトウ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 149.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

鳴き声

繁殖期に巣のある島に帰来するときには飛翔しつつ低い声でク、ク、ク、クと啼くが常には啼かない。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ウトウ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 851-852.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

特徴的な行動

繁殖期には大きいコロニーをつくる。天売島では17万羽(綿貫ほか, 1988)。

松前小島では3000番(日本野鳥の会テクニカルチーム, 1985)、アラスカでは13000番(Johnsgard, 1987)というコロニーが知られている。

コロニー内の巣穴の密度は 1 ㎡に0.1~0.7巣ほどになる。

巣穴の入口とその周辺のわずかな場所を防衛し、防衛行動には立ってくちばしを上に向けて開くディスプレイがある。

求愛行動は水面で行われ、くちばしを触れ合うディスプレイである。非繁殖期は数千、数万羽の群れですごす。

参考文献

  • 中村登流 1995 ウトウ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 149.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

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