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オオジシギ(Gallinago hardwickii)の分類 シギ科(Scolopacidae)
オオジシギ(Gallinago hardwickii)の概要 タシギ属(Gallinago)

オオジシギ(Gallinago hardwickii)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

準絶滅危惧種 (NT)

【環境省】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

【 学名 】
Gallinago hardwickii (J. E. Gray, 1831)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:64~80 mm
・翼長:141~167 mm 
・跗蹠:34~37.5 mm
・尾長:52~72 mm
・体重:113~236 g
・卵:長径 39.8~46 mm×短径 29.4~32.2 mm 平均長径 42.3 mm×短径 31.7 mm 

参考文献

最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

分布

旧北区。ユーラシア大陸極東部のサハリンと日本列島に限られて繁殖分布する遺存種で、冬はオーストラリア大陸東南部に渡ってすごす。

日本では、北海道から本州中部までに夏鳥として繁殖する。

渡り期には本州以南の各地で見られる。希少種に指定されている。

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別名・方言名

カミナリシギ

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分類学的位置付け

チドリ目 シギ科

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最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

雌雄同色。羽色は黄褐色と黒褐色の斑模様で、まっすぐ長い嘴をもつ。

タシギに似るが、大型で太った感じがし、雨覆が淡褐色のため淡色に見える。

次列風切の後縁と翼下面はタシギのように白くはない。尾羽は18(タシギは14)枚。

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卵の形質

卵は灰褐色、黄褐色を帯びた灰白色、青味がかった灰白色などの地に暗褐色の小斑点と淡紫褐色または灰紫色の小斑点とが散在し、斑点は鈍端の方に密在するのが常で、ときには黒褐色の斑紋と線紋があるものもある。

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生態

生息環境

低地から標高 1.400 mぐらいの高原までに現れ、比較的広々とした草原や荒れ地上の灌木草原にすむ。

繁殖地では、大小の池が散在する湿地草原、灌木が散在する湿原周辺の草原を好む。

渡り期には水田、ハス田、池や河川の周辺の砂泥地で見られる。

越冬地でも同じような泥地や浅い水につかる湿地草原で見られる。

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食性

河川や湖沼縁の、水につかるか湿った泥地の地上で採食する。

ゆっくり歩きながら、軟らかい地面に長いくちばしを差し込み、上下させながら虫を探りあて、くちばしの先を開閉してつかみ、地上に引きずり出して食べる。

長いくちばしの先は驚くほど大きく、先端部だけを開閉できる。

昆虫の幼虫やミミズなど、50~60%は動物質を食べる。植物質としては草の種子、草の葉・根などを食べる。

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ライフサイクル

詳しいことはわかっていない。

繁殖期は4~7月。本州中部の高原では4月中旬(中村・重盛, 1990)に、北海道では4月下旬(Fujimaki & Skira, 1984)に現れる。

番の関係は夜行性のためまだはっきりしていないが、レックディスプレイ(社会的分散の項を参照)による一夫多妻の可能性がある(中村・重盛, 1990)。

巣はよく茂った草や藪の下などの隠れた地上の窪みにつくり、湿原のふちなどを選んで枯れ草や落ち葉を敷く。

おそらく雌のみでつくる。1巣卵数はほとんど4個。雌のみが抱卵する(清棲, 1978)。

少なくとも、雄が抱卵や雛の世話にかかわる様子はなさそうである(中村・重盛, 1990)。

抱卵期や雛の世話の時期についてはまだわからない。

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鳴き声

飛立つときにはギャッ、またはリャッと一声啼き、蕃殖期にはヂーブ、ヂーブ、ヂブ、ヂブ、ヂブ、ヂーブと鋭い声で啼きつつ旋回飛翔して誇示(ディスプレー)する。

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特徴的な行動

繁殖期に見られるフライトディスプレイはカミナリシギの異名をとるほど顕著で壮観で、オオジシギがすむ地方の人々にはよく知られている。

1羽で行ったり、5~6羽ぐらいの集団で行ったりする。

群飛するときはジーブ、ジーブと繰り返しながら重複する空中を旋回したり8の字を描いて飛び回る。

1羽か数羽で相互に離れて行うときはさらに典型的な行為をとる。

地上 50~100 mぐらいの空中に舞い上がり、ジッジッという声を連呼しながら、翼を逆さ八の字形にさし上げて細かく振動させたり、翼動を止めて滑空したりを交互に行いながら、直径 150~200 mの範囲を旋回する。

そして、ときどき翼動を止めてジーブ、ジーブという発声に変え、翼角を突き出して急降下する。

このときに尾羽を精一杯開いて振動させ、大きなすさまじい音響を立てる。

数十メートルを降下して急に折り返し、再び上空に舞い上がる。これを繰り返すのがオオジシギのフライトディスプレイである。

このフライトディスプレイは4~5月にかけて盛んに見られ、とくに早朝や夕方に多いが、最盛期や薄暗い曇天の日には日中でも見られる。

飛び回る範囲は 1~4 haになり、それぞれの位置は一定であるらしいが、他方では重複しており、なわばりとは思えない節があり、雌を引きつけるためのディスプレイと考えられる。

ラジオトラッキング法で追跡すると、その行動圏とフライトディスプレイ域は必ずしも重ならない。

またフライトディスプレイをするのは雄だけで、雌はまったく参加しない。

そして雄のフライトディスプレイ地域が重複せんばかりに集まっていることや、雌の巣がフライトディスプレイ域の外にあること、雄が抱卵や雛の世話にいっさいかかわらないことなどから、オオジシギのフライトディスプレイは集団ディスプレイをして、交尾目的のためだけに雌をよび寄せるレック(p.112 エリマキシギ参照)活動ではないかと考えられる(中村・重盛, 1990)。

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最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

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