- 解説一覧
- タシギ(Gallinago gallinago)について

タシギ(Gallinago gallinago)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Gallinago gallinago (Linnaeus, 1758)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:59~75 mm
・翼長:122~142 mm
・跗蹠:29~35 mm
・尾長:55~62 mm
・体重:73~153 g
・卵:長径 35~42.7 mm × 短径 26.7~30.3 mm 平均長径 39.4 mm × 短径 28.7 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 タシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 744-747.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区、エチオピア区、新北区、新熱帯区。オーストラリア区、東洋区以外の全世界に広く繁殖分布するコスモポリタンである。
冬はオーストラリア区以外の赤道周辺に渡ってすごす。日本には旅鳥として各地に現れ、本州中部以南では越冬するものもいる。
参考文献
- 中村登流 1995 タシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 116.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 学名の解説
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属名・種小名は雌鳥に似たの意。
参考文献
- 吉井正 2005 タシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 226.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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チドリ目 シギ科
参考文献
- 吉井正 2005 タシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 226.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額から頭上、後頭まで濃黒褐色の線が2列になって縦走し、その間には淡オーカー黄色またはクリーム色の頭央線がある。
眼の上にはクリーム色の眉斑があり、上嘴の基部から眼の後方まで暗褐色の過眼線が走っている。
耳羽はクリーム色で褐色の小斑点があり、頬には暗褐色の線が走っている。
腮、喉はクリーム色、後頸、前頸、頸側は淡黄褐色で黒褐色の小斑点が多数ある。
背はブロンズ様の金属光沢のある黒褐色で、赤褐色の小斑があり、外側には淡黄褐色の縦斑からなる縦線が走っている。
肩羽は黒色で、各羽には赤錆色の斑点と横斑があり、外側の各羽には淡オーカー黄色またはクリーム色の外縁がある。
胸は淡黄褐色で、褐色の縦斑があり、腹は白色、脇は白色で暗褐色の横縞が多数ある。
腰は黒褐色で汚白色の不規則な横縞があり、上尾筒は赤錆色を帯びた褐色で、黒色の横斑と軸線があり、羽端近くには白色をおびた横斑がある。
下尾筒は淡黄褐色で、褐色の横縞がある。
下雨覆は白色で、褐色の太い横縞があり、中央部は白色のものが多いが、ときには白色でないものもある。
腋羽は白色で黒色の横縞が多数あり、ときには不規則なものや矢筈形のものもある。
初列風切は黒褐色で、羽端には白色の細い縁があり、内側のもの程その幅が広い。
第2羽の外弁は大部分が白色である。次列風切は黒褐色で、羽端には白色の幅の広い縁がある。
三列風切は細長くて、初列風切と同長位のものもあり、赤錆色を帯びた褐色で、ブロンズ様の金属光沢のある黒色の大理石様斑紋からなる不規則な横縞がある。
外弁の先端は白色またはクリーム色を呈している。
大、中、小雨覆は黒褐色で、各羽の先端は黄味がかった淡赤錆色で、内側のものは肩羽と同様である。
翼縁の各羽には白色の縁がある。尾は黒色で、先端近くは赤褐色を呈し、羽端は色が淡く、クリーム色の横帯がある。
尾羽の数は14枚が常であるが、稀に12枚、16枚、18枚のものもある。
嘴色は淡褐色で、先端は黒色、下嘴は肉色で、その先端は褐色、虹彩は黒褐色、脚色は青色を帯びた角のような灰色で、緑色の光沢がある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 タシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 744-747.
- 中村登流 1995 タシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 116.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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体の上面は暗色、肩羽の外側の各羽にある淡オーカー黄色またはクリーム色の外縁は成鳥より幅が狭い。
下喉には褐色の斑が多く、脇の褐色の横縞は明瞭である。雨覆羽の先端の淡色の部分は成鳥より少ない。
孵化直後の雛は全身に幼綿羽が密生し、額から前頭まで得黒色の頭央線が走るが、その線の額の部分は白色の細い線で中断されている。
後頭および体の上面は赤錆色と黒色で斑をなし、各幼綿羽の先端は白色を呈し、後頭の両側には黒色の細い線が走る。
眼先から眼まで黒褐色の過眼線が走り、下嘴の基部から頬まで不明瞭な黒褐色の線が走り、眼の上には赤錆色の眉斑があり、眼の下には帯白色の線があり、頬は黄味がかった赤錆色、後頸は赤錆色で、各幼綿羽の基部は煤けた黒色で、所々の幼綿羽の先端は白色である。
腮は黒色、喉の両側には黒色の不規則な線があり、前頸は赤錆色で、各幼綿羽の基部は煤けた黒色である。
体の下面は黄味がかった赤錆色で、各幼綿羽の基部は灰褐色である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 タシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 744-747.
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- 卵の形質
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卵は緑黄色、オリーヴ黄緑色、淡緑色、オリーヴ褐色、赤錆色を帯びた淡褐色などの地にセピア色または黒褐色の粗大な斑紋と灰色または赤錆色をおびた淡褐色の斑点とが散在し、斑紋や斑点は鈍端の方に密在しているのが常である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 タシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 744-747.
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生態
- 生息環境
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日本には冬鳥または旅鳥として渡来し、干潟、溜池、沼池、水田、河川などのふち、また隠れた泥沼などで見られる。
水田では畔の近くの水につかるようなところにいる。草の茂みからあまり離れたくないようである。
繁殖地では、沼沢地の湿地草原に営巣する。土壌が発達した水辺や湿地周辺の草、藪地を好む。
参考文献
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- 食性
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湿っぽいところをゆっくりと用心深く歩き、長いくちばしを泥の中に挿入し、上下にしごくようにしながら探り当てて採食する。
あまりあちこち歩き回るようなことはせず、危険を感じるとじっと静止し、急に飛び立つ。
昆虫の幼虫、ミミズ、小型の甲殻類、小型の軟体動物のほか、植物の種子などを食べる。
参考文献
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は4~7月、一夫一妻で繁殖する。番は雛が孵化すると解消される(Tuck, 1972)。
雛の世話は雄と雌で分担し、雄は早く孵化した雛をつれてさっさと巣を離れてしまい、番は二度と邂逅しない(Tuck, 1972)。
抱卵期には雄はなわばりに入ってくる雌ならどれにも求愛し、番の関係をもつ(Tuck, 1972)。
巣は地上の乾いたところの草陰や藪の下などの窪みにつくり、草片で内張りをする。
1巣卵数は3~4個で、4個の場合が多い。雌のみが抱卵し、17~20日ぐらいで孵化する。
早く孵化した雛を雄が世話し、残った者を雌がつれていく。雛は早成性の離巣性で、19~20日ぐらいで独立する。
親は初めはくちばしで餌をくわえて雛に与えるという(Cramp & Simmons, 1983)。
参考文献
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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飛び立つときにはジャーッ、またはシャーッあるいはチビー、チキーと1声または2声啼き、夜間採食地に行くときや飛翔中にも啼く。
繁殖期の誇示の飛翔中にはヂープ、ヂープ、ヂープと鋭い声で啼き、ときには飛翔中でなく地上の棒杭の上などにとまって啼くこともある。
参考文献
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- 特徴的な行動
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非繁殖期は小群ですごす。繁殖期にはなわばりで分散する。雄は3~4羽ぐらいで広い範囲をフライトディスプレイし、30~60 mの上空をジッジッ―コールをしながら飛び回る。
そして、しばしば尾羽を開いて音響を立てながら 45 °ぐらいの角度で急降下する(Tuck, 1972)。
雌がくると、雄たちは雌のまわりに集まり、雌を交えて盛んに追いかけ合いをする。
雄は初めのころにはかなりの広範囲を飛び回ってフライトディスプレイをするが、徐々に範囲を狭め、自分のなわばりに限られるようになる(Tuck, 1972)。
フライトディスプレイは雌に向かって上下する飛び方で、雌を引きつけ、自分のなわばりに入っては下りて見せる。
雌は初めはいくつかの雄のなわばりをめぐり、数羽の雄と乱婚的に交尾するが、最後にひとつのなわばりに長く留まるようになり、その所有雄と一夫一妻の番の結合をもつようになる(Tuck, 1972)。
番の結合はまだ弱く、巣の場所が決まり、産卵が始まると堅くなる。
抱卵が始まると、雄は自分のなわばりに入ってくるすべての雌に番の形成を迫り、一夫多妻に振舞い、空いている雌を求めてなわばりから出ることさえある(Tuck, 1972)。
抱卵中の雌も、常に1~2羽、ときには3~4羽ぐらいの雄によって地上や空中から注目されている(Tuck, 1972)。
こういう番の関係も、雛が孵化しはじめると、先に孵化した雛を分担する雄から離れていく(Tuck, 1972)。
参考文献
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- その他生態
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渡来初期には大群で、沼沢、水田などに降りて、葦原や稲株中、刈りとった跡の稲株の根元、田圃の畔などに潜み、特にアオウキクサの浮く水田に多い。
初猟が過ぎ銃猟者にたびたび追われると2~3羽位ずつに離れて水田、沼沢、湖畔の葦原などに散在して潜むが、保護色のため地上に潜むものは中々発見し難い。
飛翔は迅速で飛び立ってある距離の間低くジグザグを描いて飛翔した後に空高く舞い上がって直飛し、友鳥の降りた附近に落下する様に急降下する。
初猟日には比較的に飛び立ちが遅く、群をなして舞い降りるときには2~3回旋回飛翔してから静かに降りるのが常である。
猟者に追われたことの少ない鳥は近くまで近寄せ、ときには人が通り過ぎた跡の稲株の根元などから飛出すことがあるが、何回か追われたものでは遥か遠くから飛び立つのが常である。
頻繁に猟者に追い立てられると桑畑そのほかの畑に隠れることがある。
主として夜間に餌を摂り、日没後の薄闇時に三々五々潜伏地を離れて啼きながら湿地、泥沼、泥田などの採食地に飛翔していく。
採餌時には長い嘴を泥中に深く挿入し、上嘴端を上下に自由に動かし蚯蚓を引き出して啄む。
繁殖期にはオオジシギと同様に、啼きながら旋回飛翔、滑翔、急降下飛翔などして誇示し、時折り翼を半開きにし尾を扇形に開き、最外側のものを45 °位に開いて尾端から急降下飛翔して翼と尾でドドドドと凄まじい羽音を立てる。
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最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ