- 解説一覧
- アカアシシギ(Tringa totanus)について

アカアシシギ(Tringa totanus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Tringa totanus (Linnaeus, 1758)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:40~51 mm
・翼長:143~165 mm
・跗蹠:43~52 mm
・尾長:56~71 mm
・体重:105~157 g
・卵:長径 41.3~48.5 mm × 短径 28.5~32 mm 平均長径 44.5 mm × 短径 31.5 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカアシシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 743-744.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。ユーラシア大陸の中緯度地方に繁殖分布し、冬は紅海、ペルシャ湾から中国南部、東南アジアにかけての海域にわたってすごす。
日本には旅鳥として全土に現れ、8~10月と4~5月に見られる。
1972年に北海道の野付半島で雛がみつかり、以後道東部の風蓮湖、春国岱、温根沼、霧多布、知床五湖などでも記録されている。
野付半島には20~25番ぐらいはいる(塚本ほか, 1979)。希少種に指定されている。
参考文献
- 中村登流 1995 アカアシシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 108-109.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 学名の解説
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種小名はイタリア語のパンに由来。
参考文献
- 吉井正 2005 アカアシシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 11.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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人が近づくと鳴きながら飛び廻る習性から、番犬とか見張り人などの呼び名もある。
参考文献
- 吉井正 2005 アカアシシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 11.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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チドリ目 シギ科
参考文献
- 吉井正 2005 アカアシシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 11.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雌雄夏羽】
額・頭上・後頭は褐色で、各羽の縁は赤味を帯び、中央には黒褐色の軸斑がある。
額・腮・喉は白色で、暗褐色の小縦斑がある。背は淡赤褐色で、各羽には黒褐色の軸斑がある。肩羽もこれに類似しているが、軸斑が多少横帯をなしている。
前頸・胸は白色で、暗褐色の横斑があり、腹・脇は白色で、暗褐色の縦斑があり、中央の部分と下腹および下尾筒は白色である。
下胸と腰は白色、上尾筒は白色で黒褐色の横縞がある。下雨覆は白色で、暗褐色の斑があり、腋羽は白色である。
初列風切は黒褐色で、内弁の縁は白色である。内側のものの先端は白色、それ以外は白色で、黒褐色の斑点がある。第2羽の羽軸は白色である。
次列風切は白色かまたは白色に黒褐色の横縞があるかで、外弁の基部と内弁の羽軸付近とは暗褐色である。
三列風切は肩羽と同様である。大雨覆は淡褐色で、羽端は白色で、黒褐色の横帯がある。
中・小雨覆は淡褐色で、黒色の斑があり、小雨覆の各羽には白色の細い縁がある。
尾は白色で、黒褐色の横縞がある。嘴色は黒色で、基部の方は赤色。虹彩は褐色、脚色はオレンジ赤色、爪は黒色。
【雄雌冬羽】
体の上面は暗灰褐色、喉・前頸・上胸・胸側は灰褐色で、黒色の小縦斑がある。
体の下面は白色である。嘴色は黒褐色、基部はオレンジ黄色。脚色はオレンジ黄色。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカアシシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 743-744.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は全身に綿羽が密生し、前頭は淡黄褐色、頭上と体の上面は赤味を帯びた淡黄褐色で、各綿羽の先端は黒褐色である。
上嘴の基部から後頭まで黒色の頭央線が走り、眼先から後頸まで黒色の過眼線が走り、後頸から尾端まで黒色の縦線が走っているが、後頸付近では色がやや淡くて煤けた黒色で、各綿羽の先端は淡黄褐色である。
背の両側には黒色の線が1条ずつ走り、翼には黒色の横帯がある。腿の周囲、跗蹠の上部には煤けた黒色の斑がある。
喉以下の体の下面は白色で、上胸は淡黄褐色を帯びている。
【幼鳥】
体の上面は暗褐色で、各羽には赤錆色の縁がある。
体の下面は白色で、喉・胸・脇には暗褐色と三日月形の斑紋とがあり、前頸には同色の小縦斑がある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカアシシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 743-744.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は褐色を帯びた淡黄土色、クリーム黄色、赤錆色を帯びた淡黄土色などの地に濃赤褐色の粗大な斑点と淡青灰色の斑点が散在する。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカアシシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 743-744.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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繁殖地で分布域はたいへん広範囲で、高度では海岸低地から亜高山帯まで、地域では地中海沿岸からツンドラまでおよぶ。
いずれも開けた湿っぽい草原にすむ。野付半島では、ハマナスやセンダイハギの点在する草原や牧場の水路や沼、その周辺の湿原で見られる。
非繁殖期には干潟、河口、潟湖、池沼、ときには河川などの砂泥地の浅い水域にいる。比較的海岸地方で見られる。
参考文献
- 中村登流 1995 アカアシシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 108-109.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 食性
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浅く水につかる砂泥を歩きながら、水面や泥の表面からついばむことが多い。
水中にくちばしをなぐように打ち込んだり、くちばしを水に入れてそのまま前進したり、左右に動かしたりしながら採食する。
ガガンボやトビケラの幼虫、ミミズ、小蟹などを食料とする。
参考文献
- 中村登流 1995 アカアシシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 108-109.
- 清棲幸保 1955 アカアシシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 743-744.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は4~6月、一夫一妻で繁殖する。巣は草むらの草株の元や間につくり、草の葉で内張りをする。内装は雌がつくる。
1巣卵数は3~4個で、ほとんど4個。両親が抱卵し、22~29日ぐらいで孵化する。
雛は早成性の離巣性で、両親の世話で育ち、25~35日ぐらいで独立する。繁殖期の末期のものは雄だけが雛の世話をする。
参考文献
- 中村登流 1995 アカアシシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 108-109.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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ピーヨ、ピーヨ、ピチョ―、ピチョ―、ピチョ―、ピリー、ピリー、ピチョ、ピチョと啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 アカアシシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 743-744.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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非繁殖期には小群でいることが多く、繁殖期にはなわばり性ではない(Cramp & Simmons, 1983)。
番は集まっていて、セミコロニアルである。隣接の巣とは 4~10 mぐらい離れる。
雄は営巣場所となる特別の場所を設立して、この場所では戦闘的であるがそれ以外の場所では隣接の雄を許容する。
こういう場所は水辺から多少とも離れている。水辺は採食地や休息地となり、そこでは境界のようなものはまったくない。
また、そこで時々グラインドディスプレイが見られる。
2~8羽は地上を走り回り、追いかけるものは羽毛を伏せて尾羽を開き、追われるものは羽毛を起こして尾羽を開き、翼を幾分ずらして白い腰を見せる。
この行為は雄どうしや雌雄間で起こる(Cramp & Simmons, 1983)。雄は営巣場所に強いこだわりを持っている。
雄は雌を引きつけるために、しばしばフライトディスプレイをするが(Hale & Ashcroft, 1982)、これは Tringa シギ類の典型的なスイッチバック型のディスプレイで、上昇と下降を交互に繰り返しながら大きく旋回しつつ、キョウ、キョウとさえずる顕著なディスプレイである。
上昇のときは、両翼を浅く振動させる特殊なはばたきをする。下降のときは、両翼を少し下げ気味左右に張り、尾羽を扇のように開いて滑空する。
巣の近くに侵入者があると、隣接者がほとんど集まってきて警戒したり、空中から擬似攻撃をする。
またチドリ型のバタフライタイプの旋回飛翔をする。
参考文献
- 中村登流 1995 アカアシシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 108-109.
最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ