- 解説一覧
- コチドリ(Charadrius dubius)について

コチドリ(Charadrius dubius)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Charadrius dubius Scopoli, 1786
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:11.8~14.5 mm
・翼長:106~121 mm
・跗蹠:22~26 mm
・尾長:53~63 mm
・体重:31~57 g
・卵:長径 26.9~33.1 mm×短径 20.6~23 mm 平均長径 29.3 mm×短径 21.8 mm 重量 6.5~7 g
参考文献
- 清棲幸保 1955 コチドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 769-771.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。ユーラシア大陸の低・中緯度地方に広く繁殖分布し、同大陸南部からインドやアフリカ大陸中部に渡って越冬する。
日本では北海道、本州、四国、九州などに夏鳥として渡来して繁殖する。
渡り期には各地に現れ、九州以南で少数が越冬する。比較的ふつうに見られるチドリである。
参考文献
- 中村登流 1995 コチドリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 98.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 学名の解説
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種小名は疑わしいの意。
参考文献
- 吉井正 2005 コチドリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 226.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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チドリ目 チドリ科
参考文献
- 吉井正 2005 コチドリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 226.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄雌 夏羽】
額は白色で、頭上との境には黒色の幅の広い帯があり、左右の眼の上部にわたっている。
眼先から耳羽の上部まで黒色で、幅の広い過眼線をなし、眼先から上嘴の基部まで黒色の線が走っている。
眼瞼はレモン黄色。眼の下には白色の小斑がある。額の上部にある黒色の帯および黒色の過眼線の上に沿って白色の線が走っている。
頭上、後頭は灰褐色である。頬、腮、喉は白色で、後頸まで幅の広い頸輪をなしている。
頸輪の下には前頸から後頸まで黒色の極めて幅の広い帯が走り、後頸付近では幅が狭く、色は褐色を帯びている。
背、肩羽、腰、上尾筒は灰褐色、胸、腹、脇、下尾筒は白色である。
下雨覆、腋羽は白色である。初列風切は暗褐色で、第2羽の羽軸は白色、ほかは褐色である。
次列風切は暗褐色で、羽端には白色の縁があり、内側のものの外弁の先端には白色の縁がある。
三列風切、大、中、小翼羽は灰褐色で、大雨覆の各羽には白色の細い縁がある。
初列雨覆、小翼羽は暗褐色である。尾は中央の1対は褐色で、先端近くは黒色を呈し、稀に羽端に白色の縁のあるものがある。
羽軸は褐色で、基部は白色である。
最外側の尾羽は白色で、内弁の中央には黒色の横斑があり、次の1対の尾羽は白色で、内弁の基部の中央には黒褐色の横斑がある。
ほかの尾羽は黒褐色で、羽端には白色の縁がある。嘴色は黒色、下嘴の基部には黄色の斑があり、虹彩は濃褐色、脚色はオレンジ色。
【雌雄 冬羽】
体の上面は暗色で、褐色を帯びている。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コチドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 769-771.
- 吉井正 2005 コチドリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 226.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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体の上面は砂色で、各羽には淡色の縁がある。顔、胸の黒色の斑や帯は鞣皮様の色を帯びた褐色である。
嘴は成鳥よりも細い。孵化直後の雛は全身に幼綿羽が密生し、額は白色、頭上は赤錆色を帯びたクリーム色で黒褐色の不規則な斑紋や斑点が散在する。
眼先から眼の後方まで黒褐色の過眼線が走り、左右のものは後頭部で合する。
後頸には白色の幅の広い帯があり、それ以下の体の上面は赤錆色を帯びたクリーム色で、黒褐色の斑紋や斑点が散在するが、翼の先端は白色で翼沿いおよび背の両側には黒褐色の線が走り、胸の両側には黒色斑がある。
体の下面は白色である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コチドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 769-771.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は赤褐色を帯びたクリーム色の地に、褐色または黒褐色の小斑点と小斑紋および灰色の小斑点が散在し、斑点は鈍端の方に密在するのが常で、稀には卵の地色の赤褐色が著しく濃いものもある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コチドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 769-771.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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夏季本州では標高 800~1000 mくらいの湖沼、河川敷内の中州、水辺、河口の三角州や干潟、海岸の砂浜、植生が疎らで裸出土の多い荒れ地などで見られるが、道路工事やダム、そのほか大規模に整地している工事現場などで、短期間放置されている荒れ地状のところなどでも見られる。
水辺に多く、砂泥地や砂礫地を好むが、必ずしも水辺である必要はなく、どこか近くに水域があればよいらしい。
短期的に出現する砂礫地でも、繁殖期であればすぐにすみつく。
一方、植生が茂りすぎると見られなくなり、洪水の氾濫原のような変化の激しい不安定な環境に適応している鳥である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コチドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 769-771.
- 中村登流 1995 コチドリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 98.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 食性
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砂泥地の表面から、鞘翅目、双翅目、鱗翅目、直翅目などの昆虫の成虫・幼虫をくわえとる。
砂地を急速に走って急停止し、思いがけない方向にくちばしを突き出して虫をとるという、虫に不意打ちをくわせて急襲するタイプの採食である。
走る方向を急に変えて進むので、ジグザグに進行するように見える。
濡れた泥の表面を片脚で叩いて虫を追い出して食べる行動もとる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コチドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 769-771.
- 中村登流 1995 コチドリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 98.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は4~7月、一夫一妻で繁殖する。巣は砂地に雌雄で浅い窪みを掘り、内装に小石や貝殻の破片、あるいは植物片などを敷く。
1巣卵数は3~5個で、ほとんど4個の場合が多く、巣の中に4個が十文字に並べられている。
雌雄交替で抱卵し、雛は22~25日ぐらいで孵化する。雛は早成性の離巣性である。
初めのころの抱雛は雄も雌も行う。雛は自分で採食し、両親の世話で育ち、25~27日ぐらいで独立する。雌雄とも激しい擬傷行為をする。
参考文献
- 中村登流 1995 コチドリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 98.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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地上に降りているときや飛翔中にはピヨ、ピヨ、ピイーヨ、ピイーヨまたはピュー、ピュー、あるいはピウ、ピウと啼き、繁殖期にはピピ、ピピ、ピピ、ピピ、ピピ、又はピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッと啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 コチドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 769-771.
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- 特徴的な行動
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繁殖期になわばり分散をする。巣の周りの直径 10 mぐらいの狭い範囲に、雄どうしの脅しのディスプレイがある(阿山, 1975)。
雄は、それより広い範囲の上空をピウー、ピウーと発声しつつチョウ型の飛翔で旋回するフライトディスプレイをする。
地上での対立行動は、体を水平位にして平行に走ったり相手に突進したりする。
背面の羽毛を撫でつけ、脇の羽毛を水平に逆立てる、異様な形態をしたディスプレイである。
体を起こしてにらみあうときは首や頭頂の羽毛を逆立てる。番の形成には華やかなディスプレイが見られる。
繁殖地に到着するとすぐに始めるが、当初は雄も雌も複数の相手と会合する。
雄は自分の場所にとどまっていくらかの雌を誘い、雌はいくつかの雄の場所を訪れる(高橋, 1986)。
雄は雌にいくつかの雄の場所を紹介するスクレイピングディスプレイをする。
それは、紹介する地点に走ってうずくまり、胸を地上に押しつけ、脚で砂を蹴とばし、体を回転させて窪み(スクレイプ)をつくる。
この行動をしながら、ピッピッピッ…と雌を呼ぶ。雌が動かないと地点を変えて繰り返す。
雌が近くにくると、つくった窪みのふちにつまさき立ちになり、体を水平位にして、尾羽を扇のように窪みの上に開く。
雌はその尾羽の傘の下に入って窪みにうずくまったり、ときには脚で掘るしぐさをする。
番の形成や交尾、巣づくりにこのディスプレイが使われる。
参考文献
- 中村登流 1995 コチドリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 98.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ