- 解説一覧
- タマシギ(Rostratula benghalensis)について

タマシギ(Rostratula benghalensis)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
-
Rostratula benghalensis (Linnaeus, 1758)
基本情報
- 分布
-
旧北区、東洋区、エチオピア区。ユーラシア大陸東南部の中国東部から東南アジア、インドを経て、アフリカ大陸中・南部、さらにマレーシアからオーストラリア大陸まで分布する。
日本では、本州中部から南西諸島に至る各地に留鳥として繁殖する。
本州中部では新潟県、長野県、茨城県あたりまでみられ、繁殖記録の北限は宮城県である。
とくに福井県、兵庫県以南によく見られるが、個体数は多いとはいえない。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
-
【雄】
額から頭上、後頭まで褐色を帯びた黄色の幅の広い頭央線が走り、その両側は暗オリーヴ色で、各羽には白色の細い縁がある。
眼の上はそれより淡色で、やや褐色を帯びている。
眼の周囲には淡黄褐色を帯びた白色の輪になった斑紋があり、眼の後方に短い線が走っている。
眼先は暗褐色、顔は暗褐色で、白色の小斑がある。腮、喉は汚白色を呈している。
後頸は灰褐色で、黒褐色の細い横縞があり、頸側は淡褐色で各羽縁には白色の小斑がある。
背、肩羽は緑色光沢を帯びたオリーヴ褐色、白色の細い横斑と暗オリーヴ色および黄褐色の斑紋があり、背の両側には暗褐色と黄褐色の縦斑からなる1列の線があって肩羽に引き続き、内側肩羽では2列の不規則な線をなしている。
上胸は淡褐色で、各羽には白色の縁があり、下胸は白色である。
両胸側には白色の幅の広い帯があり、前端には暗オリーヴ褐色の帯があり、後端には暗褐色の帯があるが、後端の帯には淡黄褐色の斑がある。
腹、脇、下尾筒は白色、腰はわずかに淡黄褐色を帯びた灰鼠色で、黒色の細い横縞があり、白色の小斑が散在している。
上尾筒はわずかに淡黄褐色を帯びた灰鼠色で、黒色の横縞と黄褐色の楕円形の大きな斑紋がある。
腋羽は白色。初列風切、次列風切は灰色で、外弁には黄褐色の楕円形の大きな斑が横縞のようにあり、基部は黒色を呈している。
内弁には黒色の不規則な横縞があり、淡黄褐色を帯びた白色の斑がある。三列風切は肩羽に類似している。
大、中、小雨覆は緑色の金属光沢のある黄褐色で黒色の不規則な横縞と黄褐色の丸い斑紋があり、各羽の基部は灰鼠色を呈している。
初列雨覆、小翼羽は灰色で、黒色の不規則な横縞と黄褐色の丸い斑紋がある。
尾は灰鼠色で、黒色の不規則な横縞があり、黄褐色の横斑が3層になっている。羽端には黄褐色の細い縁がある。
嘴色は赤色で、先端は黒色、基部はオリーヴ緑色。虹彩は暗褐色、脚色は褐色を帯びた石盤灰色、または緑色を帯びたオリーヴ色。
【雌】
眼の周囲の輪になった斑紋は雄よりも幅が広く、眼の後方に出た部分は白色である。
この輪になった斑の周囲には黒色の線になった斑がある。
腮、喉は白色を帯びた赤褐色、下喉、上胸、頸側、後頸は赤褐色、下胸の白色部との境には黒褐色の幅の広い帯があり、胸側の白色の帯の前後前後にも黒褐色の幅の広い帯がある。
体の上面は暗緑色の金属光沢のあるオリーヴ灰色で、黒色の密な横縞がある。
背の両側から肩羽まで黄褐色の縦線が走り、肩羽の下には白色の細長い羽が数枚あるが、この中2枚は長く、3枚は短いのが常である。
この羽は常に肩羽で覆われて外部から見えない。下胸以下の体の下面は白色である。
翼、腰、尾は雄と類似しているが、色がやや濃い。
雨覆羽は暗緑色の金属光沢のあるオリーヴ褐色で、黒色の細い横縞がある。下雨覆、腋羽は雄と同様である。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
-
孵化直後の雛は全身に幼綿羽が密生し、全身暗灰色またはクリーム灰色で、頭上には黒褐色の幅の広い頭央線があり、眼先からは黒褐色の過眼線が走る。
背の中央は濃赤錆色で、両側には黒色の縦線が走り、翼と腿には紫褐色の横帯がある。
幼鳥は雄成鳥に類似している。雌の幼鳥は形が大きい。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
-
湿地、沼地、湿地の多い河川敷や湖畔、水田など、イやヨシの茂る水湿地にすむ。最近は休耕田に多い(上木, 1986)。
あまりに草が繁茂するところは好まない(小林, 1954)。冬季も留鳥として生息する。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ
- 食性
-
たいへん用心深い習性をもち、早朝や夕暮れの薄暗い時間帯に採食する。多分、夜間にも採食すると思われる。
浅い水の中にくちばしを入れて左右にゆすりながら採食したり、泥の中にくちばしを入れて探ったりする。
雑食性で、植物食としてはイネ科やタデ科などの種子をついばんだり、直接つみとったりする。イネの種子も食べる。
動物食としては、ユスリカや水生昆虫の幼虫、バッタやコオロギ類、ミミズ、カワニナなどの貝類、甲殻類などである。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
-
繁殖期は4~10月(上木, 1985)と長く、一夫一妻で繁殖する。
雌は雄の巣に産卵をすませると番の雄を離れ、別の雄を探して求愛する。
雌が継続的に番となる雄の数についてはわかっていない。巣は湿地の突出部や草株の間の窪みに、草の葉などで皿形につくる。
主として雄がつくり、雌はときに巣材を巣のほうに投げるだけである(小林, 1955)。
1巣卵数は3~6個で、大部分は4個。雄だけが抱卵する。雛は19~20日ぐらいで孵化し、雄のみの世話で育つ。
初めのころ、雄親は雛に口移しに餌を与える。70~90日ぐらいで一人前になる(上木, 1991)。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ
- 鳴き声
-
警戒時にはギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッと絹を軽く摩擦する様な声で啼き、繁殖期(5月頃)には夜間にコーコー、コーコーまたはコンコン、コンコン、あるいはオーウヲ、オーウヲまたはコッオウ、コッオウなどと啼き、遠くではホンホン、ホンホンと聞こえる。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
-
冬は20羽ぐらいまでの小群ですごし、3月ごろから群れを離れて番の形成をはじめる。
雛期から雄の個体数が多く、雌1に対して雄3ぐらいである(上木, 1986)。
雌は雄より大きく羽色も鮮やかで、雌どうしが戦ってなわばり性を示す。
3~5月ごろ、雌は盛んにさえずり、ウーッウーッと声をあげながら空気を吸い込み、十分に胸を膨らませると、くちばしを少し開いてタマシギ独特のコーッコーッという声を出す(上木, 1968)。空気は食道に入れるらしい(小林, 1954)。
夕方から宵にかけて最もよくさえずり、最盛期の5月には日中も盛んに鳴く。
雌が雄に対して行う求愛ディスプレイは両翼を高く上げるもので、このポーズで雄の前で回ったり、飛び上がったりする。
交尾姿勢は雌がうずくまり、雄がマウントする(上木, 1986)。
1羽の雌に対する2羽の雄の巣は、4~10 mと比較的近くにある(小林, 1955)。
雌は抱卵期に入るとその雄から離れるが、まったく離縁してしまうわけではないらしく、前の雄に危険が迫れば、第2の雄とかかわっているときでもただちに駆けつける(小林, 1955)。
参考文献
最終更新日:2020-06-11 キノボリトカゲ