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- シロハヤブサ(Falco rusticolus)について

シロハヤブサ(Falco rusticolus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Falco rusticolus Linnaeus, 1758
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:雄 23~25 mm 雌 25~28 mm
・全嘴峰:30~34 mm
・翼長:雄 360~405 mm 雌 400~425 mm
・跗蹠:雄 60~71 mm 雌 66~71 mm
・尾長:雄 190~255 mm 雌 230~255 mm
・卵:長径 55~62.6 mm×短径 43~48.5 mm 平均長径 58.6 mm×短径 45.6 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 シロハヤブサ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 446-447.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 分布
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全北区。ユーラシア大陸の亜寒帯やアラスカ北部のツンドラ地帯で繁殖し、冬はやや南下して越冬する。
日本には数少ない冬鳥として、主に北海道に渡来するが、北千島の松輪島での繁殖記録もある。
本種はハヤブサ類のなかでも最も身体が大きい。
参考文献
- 中村雅彦 1995 シロハヤブサ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 264.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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タカ目 ハヤブサ科
参考文献
- 吉井正 2005 シロハヤブサ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 275.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額、頭上、後頭、後頸は白色で、各羽には暗色の細い軸斑があり、羽軸は黒色であるが、ときには全部純白色のものもある。
眼先、耳羽、腮、喉は白色、眼瞼は黄色である。
背、肩羽、腰、上尾筒は白色で、灰褐色の横縞が多数あり、羽軸は黒色である。
胸、腹、脇、下尾筒は白色で、胸と脇には灰褐色の雨滴形の小斑が多少ある。
下雨覆、腋羽は白色。風切羽は白色で、初列風切の内弁の先端付近には暗褐色の横縞が多数あるが、ときには羽軸付近が暗褐色のものもある。
次列風切、三列風切には暗褐色の横縞が多数ある。
大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は白色で、灰褐色の横縞が多数あり、羽軸は黒色である。
尾は白色で、灰褐色の不明瞭な斑点様の横縞が多数ある。
嘴色は黄色、蝋膜は淡黄色、虹彩は褐色、脚色は黄色、脛羽は白色。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シロハヤブサ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 446-447.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は全身にクリーム白色の幼綿羽が密生する。
【幼鳥】
頭および後頭は成鳥に似るが地色はバフ色味あることが多く、後頸の軸斑は淡褐色である。
背・肩・腰の羽毛は淡褐色で、各羽には白色の縁がある。
ただし白色縁の広さは個体によって著しく異なる。
上尾筒は白色無斑紋のもの(概して背の白色縁が広い個体)と白色の地に淡褐色軸斑があるものとがある。
尾は白色で横縞なく、羽縁に近いところに淡褐色虫蠧斑があるのが常である。
風切と雨覆は成鳥に似る。ただし斑紋は淡褐色で成鳥のものより淡く、また大中雨覆の斑紋は不規則でしばしば軸斑で連絡せられている。
下面も成鳥と同様であるが、地色は多少褐色味あることが多い。
【第1回冬羽】
幼鳥は年内には換羽せず、第2年の6月より完全な換羽に入り、12月ごろに第1回冬羽を完成する。
この羽衣は成鳥冬羽と全く同色である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シロハヤブサ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 446-447.
- 山階芳麿 1980 シロハヤブサ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 722-726.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は淡黄褐色の地に暗赤褐色の斑点が散在し、地色は紅色、紫色、白色などを多少おびているものもある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シロハヤブサ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 446-447.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
生態
- 食性
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獲物はほとんどがヒヨドリ級以上の鳥で、渡来初期には川や沼地にいるカモ類を主食にするが、雪の降る日が続き積雪が増す12月中旬にはカモ類は渡ってしまうので、主食はドバト(船造, 1989)やカモメ類に移行する(米川, 私信)。
鳥類以外に地上でネズミやウサギを捕らえるという。
崖の上や見晴らしのよい木や杭などの止まり場所から空間を見張り、地上または地上付近に獲物を発見すると、地表の起伏や構造物を利用して獲物からの死角を突いて襲う。
ハヤブサの狩りと異なる点は獲物に対しての接近法で、ハヤブサが急降下による襲撃の頻度が高いのに対して、本種は水平低空(地上 30 m未満)での襲撃が多い(米川, 私信)。
ハヤブサよりも遅いはばたきと短い滑翔を交互にして直接的に飛ぶ。
繁殖地では主にライチョウを食物にしている(Cramp & Simmons, 1980)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 シロハヤブサ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 264.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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アイスランドでの繁殖期は4~8月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。
海岸や海岸に近い山地の断崖の岩棚の窪みに直接産卵する。ほかの猛禽類やカラス類の古巣をそのまま利用することもある。
とくに断崖の巣は、同じ番が何年も利用するばかりではなく、異なる番が次々と引き継ぎながら何十年もの間使うことが知られている。
1巣卵数は3~4個、約3日ごとに1卵ずつ産卵し、主に雌が抱卵し、34~36日で孵化する(Cramp & Simmons, 1980)。
雄は抱卵中の雌に獲物を運ぶ。孵化した雛は半晩成性で、白色の幼綿羽全身に密生する。
雛は46~49日で巣から少し離れ、さらに30日以上かかって飛ぶようになる。
雛が小さいうちは、主に雄が捕獲した餌を、雌が細かくちぎって雛に給餌するが、後期には雌雄とも雛に給餌する。
雄が捕えた獲物を雌に渡す求愛給餌が、産卵の約10日前から育雛期まで観察される(Cramp & Simmons, 1980)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 シロハヤブサ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 264.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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蕃殖期以外には全く啼かず、蕃殖期に巣の近くに近づいても啼かないことが多いが稀にはキィッ、キィッと鋭い声で啼くこともある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シロハヤブサ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 446-447.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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番ごとになわばりをもって分散する。
繁殖期になると雌雄でキィッキィッキィッと鋭い声で鳴き交わしながら急降下、急上昇したり、ときには宙返りする空中ディスプレイを繰り返す(Cramp & Simmons, 1980)。
越冬期には単独で見られることが多いとされるが、これは多くの場合亜成鳥か番が成立していない単独の個体で、北海道の特定地域(4箇所以上)で毎年観察されているのはいずれも塒付近(崖地、湖周辺の林縁、地上)において雌雄(番)で見られる。
ただし、行動圏が非常に広く、狩猟行動の特性などから単独として観察される場合が多い(米川, 私信)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 シロハヤブサ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 264.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ