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- オジロワシ(Haliaeetus albicilla)について

オジロワシ(Haliaeetus albicilla)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Haliaeetus albicilla (Linnaeus, 1758)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:70~90 cm
・自然翼長:雄 552~640 mm 雌 621~715 mm
・尾長:雄 254~331 mm 雌 276~330 mm
・露出嘴峰長: 雄 47~58 mm 雌 52~64 mm
・ふ蹠長:雄 92~97 mm 雌 95~101 mm
・体重:雄 3075~5430 g 雌 4080~6920 g
参考文献
最終更新日:2020-06-16 キノボリトカゲ
- 分布
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繁殖地はユーラシア大陸の北部と東部、グリーンランド南西部、アイスランド西部のほか、アリューシャン列島でも営巣が確認された (Del Hoyo et al. 1994)。
寒冷地で繁殖する個体群の一部は越冬期に南下し、地中海沿岸やペルシャ湾沿岸、パキスタン、インド北部、中国南東部、日本などに渡る。
日本では、北海道で少数のつがいが繁殖するほか、越冬期にはロシアからの渡り個体が全国に飛来する。
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形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額、頭上、後頭、耳羽はクリーム褐色で、各羽の基部は暗色、羽軸は黒褐色である。
腮、喉はクリーム褐色で、各羽には暗色の軸線がある。後頬、背、胸、腹は褐色で、各羽縁は淡色である。
翕、肩羽は褐色で、各羽縁はクリーム褐色である。
腰と下尾筒とは暗褐色、上尾筒は暗褐色で、その両側の2対の羽は白色で、尾の斑くらいまでの長さがある。
上尾筒の基部と先端の各羽は黒褐色かまたは暗褐色の地に黒色の大理石の様な斑があるかである。
風切羽は黒褐色で、羽軸は褐白色である。大、中、小雨覆は褐色で、各羽縁はクリーム褐色である。
初列雨覆、小翼羽は褐色。尾は白色であるが、上尾筒に覆われた尾の各羽の基部は黒褐色で、尾の各羽端には多少黒褐色の大理石様の斑がある。
嘴色と蝋膜は黄色、虹彩は黄色、脚色は黄色、爪は黒色。脛羽は暗褐色。
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- 幼鳥の形質
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頭上、後頭は黒褐色、背の各羽は淡赤褐色で、基部は白色、先端は黒色である。
胸、腹、脇は赤錆色を帯びた褐色で、各羽には黒褐色の幅の広い軸斑がある。
尾は黒褐色で、内弁と外弁の先端に白色の大理石様の斑がある。
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生態
- 生息環境
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河川や湖沼などの淡水域から海岸や島嶼などの海水域まで、多様な水域環境周辺で生息する。
生息環境には餌場となる水域のほかに、営巣場所やとまり場、ねぐらとして利用するための大木、海岸部の崖や岩棚などを必要とする。
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- 食性
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魚類と水鳥類が主要な餌であるが、ウサギなどの中型哺乳類やヘビなども捕食する。
生きた動物を捕食する一方、産卵後のサケ科魚類や海岸に打上げられたアザラシやクジラなどの死肉を食べるスカベンジャーでもある。
北海道のオジロワシの巣やその周辺から餌の残滓を回収し、含まれていた餌鳥類について、地域間・調査年代間で比較をした。
1990年代に行った調査結果から、知床地域ではミズナギドリ類を主とする海鳥が、根室地域ではカモ類が主要な餌であり、地域によって異なっていた。
また、知床半島と根室地域の1990年代の調査結果を、1963~78年に行われた調査結果と比較した。
昔は知床、根室の両地域でカラス類が半分以上を占めたが、近年では非常に少なかった。
知床地域の近年の主要な餌種となっていたミズナギドリ類は、昔の残滓からは出ていなかった。
知床半島の海岸線で行われた調査では、1979~81年には、岩棚でカラス類が営巣していたが、1998年の調査では、確認されなかったことから、カラス類の巣の分布や数が変化した可能性も考えられる。
オジロワシは営巣地周辺に生息する餌種の分布や個体数の空間的・経年的な変化に対応して利用する餌種を変えると考えられる。
オジロワシの餌選択の柔軟性は、本種の餌資源利用の特徴のひとつであるといえる。
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- ライフサイクル
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繁殖期は3~8月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。
ミズナラ、ダケカンバ、トドマツ、エゾマツなどにある古巣を補強しながら、大きな皿形の巣をつくる。
巣づくりは1年中行われるが、産卵期にあたる3月になると活発になる。巣の補強は雌雄とも行うが、枝の積み上げは主に雌が行う(森. 1980)。
3月下旬に1~2個、まれに3~4個産み、主に雌が37~40日抱卵するが、雌が巣を離れると直ちに雄がかわって抱卵する(森. 1980)。
雛は半晩成性で、孵化直後には全身に淡灰色の幼綿羽が密生する。
孵化から巣立ちまでの日数は70~90日だが、個体によって大きなちがいがある。
育雛は雌雄とも行い、巣立ち後も雛はときどき巣にもどり、親鳥から餌を与えられる。
1巣に2羽の雛がいる場合、親鳥が餌を何かの原因で与えずにいると、強い方の雛が弱い方の雛を殺して食べることがあり(森. 1980)、通常、後から孵化した雛が先に孵化した雛の犠牲になる。
しかし、すべての雛が無事に巣立つこともある。
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- 鳴き声
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繁殖時期には上を向いてキャッ、キャッ、キャッ、キャッ…と力強く鳴く。
雌雄で合唱になることもあり、ディスプレイ飛行をしながら鳴くこともある。
警戒声はカッ、カッ、カッ、カッ。
種内・種間でいさかいが起きたときはキャキャキャキャキャという鋭い声をあげる。
ヒナは巣内や巣外でピィエーピィ エーと良く通る声で鳴き、親に餌をねだる。
若鳥がほかの個体に攻撃されたときは、ピルルルルッと悲鳴のような声を出す。
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- 産卵
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産卵時期は生息地域によって異なり、北海道では3月中旬~4月上旬だが高緯度の北極圏では1ヶ月ほど遅くなる (Del Hoyo et al. 1994)。
1~3卵(多くは2卵,稀に4卵)の白色無班の卵を産む。
卵のサイズは長径 67.5~84.2 mm×短径 53.4~64.0 mm(清棲 1952)で、抱卵はおよそ40日間である。
抱卵や育雛は主に雌が行うが、雌が採餌に出かけるときなどは雄が交替する。
巣内育雛期は70~90日間にわたり、巣立ちは6月下旬~7月中旬になる。
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- 特徴的な行動
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繁殖期には番ごとになわばりをもって分散する。
番が活発に行動を始めるのは1月からで、2月に入ると雄が頻繁に雌の上を飛んだり、クワッ、クワッ、クワッと鋭い鳴き声を発しながら追いかけ合う。
また、雌が 300 mほど上空で突然仰向けになり、雄に向かって足指を握ったり広げたりして見せると、雄は上空から雌めがけて突進し、お互いに爪を絡ませたまま海面すれすれまで落下する求愛行動を繰り返す(森. 1980)。
巣立ち後の若鳥は冬の12月まで親と行動をともにするが、その後は別行動をとる。番によっては、前年度に巣立った幼鳥が翌年の抱卵育雛中に親に追い出されることなく、なわばりにとどまることがある(森. 1980)。
単独か番で生活するが、冬は集団塒を形成する。
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最終更新日:2020-06-16 キノボリトカゲ