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ウミアイサ(Mergus serrator)の分類 カモ科(Anatidae)
ウミアイサ(Mergus serrator)の概要 ウミアイサ属(Mergus)

ウミアイサ(Mergus serrator)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Mergus serrator Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:50~64 mm
・翼長:雄 234~258 mm 雌 210~231 mm
・跗蹠:40~48.5 mm
・尾長:64~88 mm
・体重:675~1190 g
・卵:長径 60.4~70.7 mm×短径 40.3~47.6 mm 平均長径 65.5 mm×平均短径 45.1 mm

参考文献

  • 清棲幸保(1955)ウミアイサ, 清棲幸保(著)日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 603-604.
分布

全北区に分布する。
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の高緯度地方に繁殖分布し、冬は両大陸の中緯度地方に渡り、地中海地域から中国東部、北アメリカ大陸中南部で過ごす。日本には冬鳥としてほぼ全土に現れ、比較的よく見かけるカモであるが、南西諸島には少ない。

参考文献

  • 中村登流(1995)ウミアイサ, 中村雅彦(著)原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 142.
分類学的位置付け

カモ目 カモ科

参考文献

  • 吉井正(2005)ウミアイサ, 吉井正(著)三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 68.

形態

成鳥の形質

雄:頭部と上頸は黒色で、緑色と紫色の金属光沢がある。後頭の各羽は長さ 75 mmくらいで細長く、羽冠をなしている。下頸には白色の頸輪があり、後頭にある黒色の幅の狭い縦線が、これを2分する。肩羽は黒色であるが、外側は白色を呈している。

翕、上背は黒色、下背、腰は灰褐色で、灰白色の細い波形の横縞が多数密在する。上胸は淡赤錆色で、各羽には黒色の斑点があり、ときには各羽縁が白色のものもある。胸側の各羽は純白色で、濃黒色の羽縁があり、基部は灰色をしている。

下胸、腹、下尾筒は白色、脇は灰白色で、黒色の細い波形の横縞が密在する。上尾筒は灰褐色で、所々に白色の小斑点がある。下雨覆、腋羽は白色、初列風切は黒褐色で、内弁は黒色を呈している。

次列風切の外側の外弁は黒色で、内弁は白色又は暗褐白色である。中央のものは白色で、各羽には黒色の細い縁がある。

三列風切の短いものは黒色、長いものは白色を呈する。大雨覆は白色で、各羽の基部には黒色の帯があり、中、小雨覆は白色で、黒褐色の羽縁がある。初列雨覆、小翼羽は黒褐色、尾は灰褐色で、その数は18枚である。

嘴色は雄は赤色で、先端と上縁は黒色、淡色で、雌は褐色勝ちである。虹彩は雄は赤黄色から淡赤色までの各種の色、雌は褐色から黄褐色までの各種の色を呈する。脚色は雄は淡赤色、雌は淡色で褐色勝ちである。尾羽は17~20枚ある。

雌:頭上、後頭、後頸は灰色を帯びた赤褐色、頭側、顔、頸側は赤錆色を帯びた褐色、腮、上喉は白色である。体の上面は濃灰褐色または灰褐色で、各羽には淡色の縁と暗色の羽軸がある。

下喉、上胸は赤錆色を帯びたクリーム色、胸の各羽は褐色で、白色の縁がある。それ以下の体の下面は白色、脇は褐色で、各羽には淡色の縁がある。初列風切は黒色だが、内弁は褐色を呈している。

次列風切の外側のものは黒褐色で、各羽の先端と内弁とは白色である。中央のものは白色で、基部は黒色を呈している。内側のものは黒褐色である。

参考文献

  • 清棲幸保(1955)ウミアイサ, 清棲幸保(著)日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 603₋604.
幼鳥の形質

雛:孵化直後の雛は全身に綿羽が密生し、頭上から眼の下、後頭などは赤錆色を帯びた褐色である。眼先から眼までの過眼線及び、口角から顔までのやや不明瞭な線は黒褐色で、その両線の間は赤錆色を帯びている。

後頸以下の体の上面及び体側、腿の後方などは灰褐色、背と腰は暗色で、各綿羽の先端は淡黄褐色を帯びた褐色である。翼、背と腰の間にある両側には各白色の斑紋があり、背の白色斑は体の下面の白色部に引き続いている。ときには翼の下部にあたる背の両側に、白色斑のあるものがある。

頬、頸側、後頸の左右は赤錆色で、腮、喉及び体の下面は白色である。

幼鳥:雌に類似するが、後頭の羽冠が短い。虹彩は褐色、脚色は淡オレンジ赤色で、趾膜は淡褐色である。

参考文献

  • 清棲幸保(1955)ウミアイサ, 清棲幸保(著)日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 603₋604.
卵の形質

卵は緑色を帯びた淡黄褐色で斑紋をかく。

参考文献

  • 清棲幸保(1955)ウミアイサ, 清棲幸保(著)日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 603₋604.

生態

生息環境

海岸の沿岸に現れ、比較的浅い岩礁にいることが多いが、砂浜にくることもある。河口部や干潟の水路、潟湖などに入ることもあるが、淡水湖に来ることはまれである。繁殖地では、森林地帯の湖沼、海岸からあまり遠くない内陸の湖沼や河川に入ってくるが、秋に海岸地方に移動する。

参考文献

  • 中村登流(1995)ウミアイサ, 中村雅彦(著)原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 142.
食性

沿岸の岩礁地などで潜水して採食する。水中を脚と翼を使って泳ぐ。水中に頭だけ入れて泳ぎ、狙いをつけてスルリと回転するようにスムースに潜水する。

主として魚類(例えば鯉、ウグイ、ウナギ、鮭)などを好んで食物とする。体長 8~10 cmぐらいの獲物をくわえとり、水面に浮かんで呑み込む。小さいものは水中で呑み込むという。浅い内湾などで、群れで1列に並んでいっせいに潜る共同採食をすることがある。

朝夕に活発に活動し、水中に 3~7 mぐらい潜水し、15~60秒程度潜る。雛は淡水でマツモムシなどの水生昆虫を食べる。

参考文献

  • 清棲幸保(1955)ウミアイサ, 清棲幸保(著)日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 603₋604.
  • 中村登流(1995)ウミアイサ, 中村雅彦(著)原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 142.
鳴き声

クワッ、クワッまたはコローなどと鳴く。

参考文献

  • 清棲幸保(1955)ウミアイサ, 清棲幸保(著)日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 603₋604.
産卵

繁殖期は5~7月、短期的な一夫一妻で繁殖するものが多いが、一夫多妻や一妻多夫の記録がある(Cramp & Simmons,1997)。

巣は地上につくり、樹木や草むらの間、崖の割れ目の中や洞窟の中などにある。水の近くであることが多く、窪みに植物片や羽毛で内張りをして、雌がつくる。1巣卵数は8~10個、雌のみが抱卵し、31~32日くらいで孵化する。抱卵期に雄は繁殖地を立ち去る。

雛は幼綿羽で覆われ、早成性の離巣性、雌のみの世話で育ち、60~65日ぐらいで独立する。雛たちは次第に集合し、しばしば雌1羽だけついている。クレイシの傾向があるらしい。

参考文献

  • 中村登流(1995)ウミアイサ, 中村雅彦(著)原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 142.
特徴的な行動

年中群れで生活する。非繁殖期には数百羽の群れになる。繁殖期にも集合性があり、特に小鳥で繁殖するものは高密度のコロニーをつくる。最も分散する抱卵期であっても、採食に出た雌はしばしば群れになる。

雄は営巣地でなわばり行動をするが、決定的には激しくない。

求愛のグループディスプレイは11月に始まり、繁殖地に到着しても行われ、特にねぐらに集まる前に盛んである。いくつかの雄の群れは、1~数羽の雌をめぐってディスプレイをする。羽冠をなでつけて、頭を肩に引っ込め、くちばしを斜め上に向ける。また頭を上方に振ったり、立ち上がってはばたいたり、頭を揺すったりする。
最も見事なディスプレイは、頭を前方にゆすって、会釈をしながら軟らかいコールをしつつ、雌の側面から泳ぎ寄り、首を下ろして水の中につけ、頭だけもち上げてくちばしを開き、尻と翼先を上げて、尻羽を下に押し下げる。そして雌に向かって伸びをし、次に首を縮めるものである。(Cramp & Simmons,1977)。

参考文献

  • 中村登流(1995)ウミアイサ, 中村雅彦(著)原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 142.

関連情報

その他

日米渡り鳥条約、日露渡り鳥条約、日中渡り鳥協定指定種。ボン条約附属書Ⅱ掲載種。

参考文献

  • 吉井正(2005)ウミアイサ, 吉井正(著)三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 68.

種・分類一覧