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ビロードキンクロ(Melanitta fusca)の分類 カモ科(Anatidae)
ビロードキンクロ(Melanitta fusca)の概要 ビロードキンクロ属(Melanitta)

ビロードキンクロ(Melanitta fusca)

危急 (VU)

【IUCN】絶滅の危険が増大している種

【 学名 】
Melanitta fusca (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:41-51 mm
・翼長:雄 252-286 mm 雌 238-248 mm
・跗蹠:44-51 mm
・尾長:75-90 mm
・体重:1.2-1.6 g
・卵:長径 64.3-77 mm × 短径 44.8-51.5 mm 平均長径 71.5 mm × 短径 48.2 mm

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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

分布

全北区。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の高緯度地方に繫殖分布し、冬は両大陸の中緯度地方の沿岸に渡ってすごす。

日本には冬鳥として北海道・本州・四国・九州の海域に渡来し、本州中部以北に多く、日本海側では富山県、新潟県佐渡島あたりまで、太平洋側では愛知県あたりまでに、11月から翌年の4月ごろまで見られる。

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亜種・品種

ヨーロッパビロードキンクロ、アメリカビロードキンクロ

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分類学的位置付け

カモ目 カモ科 

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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄冬羽】
頭部・頸は紫色の金属光沢のある黒色で、眼の下には三日月形の白色斑がある。

背・肩羽・腰・上尾筒は藍色の金属光沢のある黒色、胸・腹は藍黒色、脇・腹は藍黒色、脇・下尾筒は黒色である。

胸・腹の各羽の基部は褐色である。下雨覆・腋羽は黒色、初列風切・三列風切は藍黒色、次列風切の中尾のものは純白色、ほかは藍黒色である。

大雨覆は藍黒色で、中央のものだけ各羽の先端に純白色の縁がある。

中、小雨覆は藍黒色、初列雨覆、小翼羽は黒色、尾も黒色である。

嘴色は雄の場合、基半部および上嘴の基部の隆起した部分は黒色、そのほかは鮮黄色で、嘴の前半部の両側はオレンジ赤色である。

雌は上嘴の基に隆起がなく、暗石盤色である。虹彩は雄が乳白色、雌が暗褐色。

脚色は雄が赤色、雌はオレンジ黄色。趾膜は黒色。尾羽の数は14枚。

【雌】
頭部・頸は黒褐色で、眼先と耳羽の付近および腮には淡色の斑紋がある。

背は黒褐色。肩羽・胸・腹・腰・上尾筒は暗褐色で、胸・腹の各羽には白色または汚白色の縁がある。

脇・下尾筒は褐色である。初列風切は黒褐色、次列風切の中央のものは純白色、ほかは暗褐色で、三列風切は暗褐色である。

大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、大雨覆の中央のものには先端に白色の縁がある。尾は暗褐色。

【雄夏羽】
頭上・頸は暗褐色、眼先と耳羽の付近に淡色の淡色の斑がある。ほかは雌に類似する。

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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

【雛】
孵化直後の雛は全身に綿羽が密生し、頭上、眼の下、後頸、体の上面などは黒褐色で、翕の上部、体側、脇などは暗褐色である。

ときには眼の下縁に小白斑があるものもある。

頬・頸側・腮・喉は純白色で、前頸には暗褐色の横帯がある。

そのほかの体の下面は灰白色で、頸側、腹、肛門の周囲などの各羽の先端は多少暗褐色を帯びている。

【幼鳥】
雌に類似し、眼先と耳羽の付近には白色かまたは白色に近い色の斑があり、体の下面の各羽に白色の縁がある。

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卵の形質

卵はクリーム色または淡黄褐色で斑紋を欠く。

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生態

生息環境

繁殖地は海岸線に沿って広がるが、内陸の亜寒帯針葉樹林内の湖沼や河川のあるところでも繫殖する。

クロガモよりもさらに陸上性で、また山地性でもあり(Cramp & Simmons, 1977)、クロガモよりもツンドラ地帯の池沼に多く、砂利の多い小島の藪や低木の多いところ(Johnsgard, 1978)で繫殖する。

渡りは内陸の水系を伝わり、越冬地では海上の沿岸、入江、河口部などですごす。

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食性

繁殖地では淡水性の甲殻類、水生昆虫の幼虫、水草の種子・葉・茎・芽・根などを食べ、越冬地では主として二枚貝類を食べる。

クロガモと同じような食性であるが、クロガモよりもいろいろなものを食べる(Cramp & Simmons, 1977)。

二枚貝類のほかに、カニ、ヨコエビなどの甲殻類、ウニ、ヒトデなどの棘皮動物、まれに小魚や植物質も食べる。

採食は 2~7 mぐらいまで溜るが、場所によっては 14~30 mも潜り、20~40秒ぐらい潜水する。潜水するとき、開かれた尾羽や一部開いた翼先が見え、ほぼ垂直に潜る。

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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は5~7月、一夫一妻で繁殖する。季節的な番関係で、抱卵期半ばに雄は立ち去る。

巣は地上の茂みの隠れたところや樹木の根元の浅い窪みに、小枝や葉などを敷いて雌がつくり、自分の羽毛をつけ加える。常に水域から 100 m以内にある。

1巣卵数は7~9個、12個以上のものは2羽以上の雌によるものと考えられる。

抱卵は雌だけが行い、27~28日ぐらいで孵化する(Cramp & Simmons, 1977)。雛は孵化した日か次の日には水の中に潜る。

早成性で離巣性の雛は雌親の世話になるが、多くは雌は間もなく雛から離れさる。

雛は次第に集まり、初めは雌の成鳥にくっつき、2~3羽の雌が16~20羽の雛を連れているが、たった1羽の雌が32羽の雛を連れていたり、84羽の雛を連れていたという記録がある(Palmer, 1976)。

また6~8羽ぐらいの雛だけの群れが採食していることもある。

雛の多くは、飛べるようになる前に雌親から離れて群れになる。

幼鳥は50~55日(Cramp & Simmons, 1977)、あるいは63~77日(Palmer, 1976)で一人前になる。

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鳴き声

雄はフィーと口笛のようなで啼き、雌はクラ―、クラ―と啼くが、常にはあまり啼かない。

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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

特徴的な行動

非繁殖期には、沿岸で数百から数千羽の大群になる。番の形成は冬の群れの中で始まる。

雄の小グループは、1羽の雌をめぐってグループディスプレイを行うがあまりコールをしない。雌に追随したり、素早く泳ぎ回ったりしながら、首を前に突き出して突進したり頭を上に振るなどのディスプレイを行う。

上体をもちあげたり、短距離の飛翔をしたりする活動はみられない(Cramp & Simmons, 1977)。

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最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

種・分類一覧