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ツクシガモ(Tadorna tadorna)の分類 カモ科(Anatidae)
ツクシガモ(Tadorna tadorna)の概要 ツクシガモ属(Tadorna)

ツクシガモ(Tadorna tadorna)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

絶滅危惧II類 (VU)

【環境省】絶滅の危険が増大している種

【 学名 】
Tadorna tadorna (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:48~60 mm
・翼長:雄 318~350 mm 雌 290~334 mm
・跗蹠:48~57 mm
・尾長:95~123 mm
・体重:620~1350 g
・卵:長径 61.1~70.5 mm × 短径 44.6~50 mm 平均長径 65.8 mm × 短径 47.5 mm

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツクシガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 549-550.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

分布

旧北区。ユーラシア大陸の低緯度地方の中央部および北部ヨーロッパに繁殖分布し、コスモポリタンの傾向がある。

冬は地中海地域からインド、中国南部あたりまでに渡ってすごす。

日本には冬鳥として九州、とくに有明海に渡来し、100~300羽の群れでやってきて、12月から翌年の3月頃まですごす。

そのほか、日本の各地にときどき少数が現れ、たいてい1~10羽ぐらいであるが、山口県には60羽の記録がある。危急種に指定されている。

参考文献

  • 中村登流 1995 ツクシガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 167.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

カモ目 カモ科

参考文献

  • 吉井正 2005 ツクシガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 332-333.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄】
頭部は黒色で緑色の金属光沢がある。腮の先端の部分は白色を呈しているものがある。

下頸・背・腰・上尾筒・胸・腹・脇は白色で、腹から背にかけて栗色の幅の広い輪になった帯があり、胸と腹の中央にはこれから延びた黒色を帯びた幅広い縦斑があるが、この各羽の基部は白色である。

肩羽は黒色、下尾筒は黄味がかった赤錆色で、先端の部分はクリーム色である。下雨覆・腋羽は白色。

初列風切は黒色で、その退化した第1羽だけは白色で、先端は黒色である。

次列風切は黒褐色で、外弁には緑色の金属光沢があり、内側のものの外弁は赤褐色である。

三列風切は白色で、外弁は赤褐色である。大、中、小雨覆は白色、初列雨覆は黒色、小翼羽は白色で黒色の羽縁がある。

尾は白色で、最外側の尾羽以外は全部先端に黒色の帯がある。

嘴色は赤色、春季には雄の上嘴の基部は瘤型に突起し、鮮紅色を呈している。虹彩は褐色、脚色は淡赤色を帯びた肉色。

【雌】
体色は雄より淡く、顔は褐色を帯び、頸部は緑色の金属光沢を欠き、胸にある輪になった斑は雄よりも幅が狭くて褐色を混じ、背のものには黒色の波形の横縞がある。

胸の中央にある縦線も幅が狭く、下尾筒は色が淡くて白色に近い。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツクシガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 549-550.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

【雛】
孵化直後の雛は全身に綿羽が生え、前頭、眼先、頬、幅の広い眉斑などは白色で、頭側の下部と、眼の後方とには暗色の小班がある。

頭上、後頸および翕の中央、背および腰の中央、翼の横帯、腿の後方などは淡チョコレート褐色、翕の中央には小白斑があり、背および腰の両側には白色の不規則な線になった斑がある。

体の下面はすべて白色である。

【幼鳥】
頭上・後頭・後頸は暗褐色、頭側・腮は白色である。

翕・肩羽は暗褐色で、各羽には白色の羽縁がある。

体の下面は白色、背・腰は白色、雨覆羽は白色で、各羽には灰褐色の縁があり、次列風切の外弁は赤褐色である。

尾は褐色で、白色の羽縁がある。ほかは成鳥と同様である。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツクシガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 549-550.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

卵の形質

卵はクリーム白色で斑紋を欠く。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツクシガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 549-550.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

生態

生息環境

泥深い干潟の水路や水を張った水田で見られる。

繁殖地は温暖な半乾燥地で、塩水湖、浅い沿岸、河口、内陸の湖沼などの浅く水につかる砂泥地である。

採食には干潮や蒸発によって乾くような場所が必要なため、環境選択の幅が狭い。

そのため不連続な繁殖分布を示し、基本的には遺存種である(Johnsgard, 1978)。

参考文献

  • 中村登流 1995 ツクシガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 167.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

食性

浅く水につかるところで、泥の表面や水底に首を入れて、底の泥などをくちばしでぐちゃぐちゃしたり、くちばしを左右に振り回したりして採食する。

歩いたり泳いだりしながら、気忙しくくちばしをつき進めて、軟体動物、昆虫、甲殻類のほか、水生植物の種子や根、海藻類なども食べる。

頭を水中に入れて逆立ちすることもある。

参考文献

  • 中村登流 1995 ツクシガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 167.
  • 清棲幸保 1955 ツクシガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 549-550.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は4~7月、一夫一妻で繁殖する。

巣は、樹木の樹穴、岩の割れ目、壊れたビルディングの割れ目、哺乳類の巣穴、巣箱、砂丘やふかふかした土壌の穴、刺藪の下、草むらのカバーの下、干し草の中など、いろいろな穴の中につくる。

浅い窪みにいくらか草を敷き、羽毛で内張りをする。

雄が監視しているところで雌が巣場所を選び、巣づくりをする(Johnsgard, 1978)。

1巣卵数は8~10個、13~32個という例も知られるが、これは2羽以上の雌が産み込んだものと考えられる。

雌のみが抱卵し、雛は早成性の離巣性で、19~31日ぐらいで孵化する。両親が雛の世話をするが、雛のところに10~15日ぐらいとどまって換羽地に立ち去る。

残された雛たちはクレイシ(託児集団)に集まる。

クレイシは100羽ぐらいになり、繫殖に失敗した成鳥か、どれかの両親がとどまっているらしい。

クレイシ内の個体は独立した若鳥から次々に立ち去り、個体数はたえず変化する(Cramp & Simmons, 1977)。

こうして雛は45~50日ぐらいで一人前となる。

参考文献

  • 中村登流 1995 ツクシガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 167.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

鳴き声

雄はコロー、コローと啼き、繁殖期にはウィー、オーと口笛の様な声で啼く。

常にはあまり啼かないが、繁殖地では喧しく啼く。雌はアク、アク、アク、アクと繰り返して啼く

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツクシガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 549-550.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

特徴的な行動

繁殖後の換羽期には数千羽の大群に集まる。渡り期に分散し、より小さい群れになる。

番の形成は冬の群れの中で行われる。

首を伸ばしたり、くちばしを上方へ向けたりするディスプレイがあり、1羽の雌を数羽の雄が追い回して旋回飛翔をする(Cramp & Simmons, 1977)。

3月ごろに群れが壊れ、番は巣穴を探すために内陸に入るが、すぐに採食地にもどり、採食地となる浅い水面に集まる群れがユニットになる。

巣穴の周りになわばりらしいものはなく、巣は同じ穴を使うほど密集する。

雌が抱卵中は雄は採食地におり、雌が1日に3~4回採食に出てくるとき、採食地で雄と邂逅する(Cramp & Simmons, 1977)。

参考文献

  • 中村登流 1995 ツクシガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 167.

最終更新日:2020-05-29 キノボリトカゲ

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