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- ヒメウ(Phalacrocorax pelagicus)について

ヒメウ(Phalacrocorax pelagicus)
- 【 学名 】
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Phalacrocorax pelagicus Pallas, 1811
基本情報
- 分布
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全北区。沿海州、カムチャッカ半島沿岸部、コマンドル諸島、アリューシャン列島、千島列島、アラスカなど太平洋の亜寒帯・寒帯に分布し、これらの地域の海岸や島で集団繁殖する。
日本では留鳥または漂鳥で、北海道、本州(青森県)、九州北部に繁殖コロニーが知られる。
大部分は北海道の太平洋岸の島や岩礁で繁殖し、ユルリ、モユルリ島に多い。
日本海側では天売島に少数が繁殖しているほか、新潟県粟島や佐渡島でも周年見られるが、繁殖は確認されていない。
また、繁殖期に北海道東部などにも生息しているのは確実だが、繁殖は確認されておらず、今後の詳しい調査が待たれる。
冬は南下した個体が主に本州中部以北の海岸に生息し、日本海側では山口県まで割合よく見られ、少数は九州、対馬、四国でも見られる。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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全身が黒く、緑色光沢がある。繁殖期には頭頂の羽が長くのび、眼の周りの裸出部が赤くなり、足の付け根に大きな白斑がでる。
嘴と頸は細長く、ウミウやカワウとくらべて優しく小さな姿をしているところから和名がつけられた。
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最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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岩礁の多い荒海や大洋に面する岩壁の多い海岸に生息し、島嶼、海岸の岸壁や岩礁で集団繁殖する。
繁殖地では、ウミガラス、ウミウ、オオセグロカモメなどと混群をなして営巣することもある。
非繁殖期には、海岸の岩礁など一定の場所に小群で休息している姿がよく見られる。冬には港湾にも入る。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
- 食性
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海上で生活し、水面では深く身体を沈め、尾を水に浸して、泳いだり潜ったりして餌をあさる。
食性は動物質で魚類を主食とするが、エビ、カニの類も捕食する。
冬は主に2、3羽の小群で、水面を泳いだり、巧みに潜水したりして餌をあさる。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は5月中旬から7月中旬、年に1回、一夫一妻で繫殖すると考えられる。
繁殖にさきがけ、額と顔の裸出した皮膚が鮮やかな赤色になる。岩棚や岩のへこみ、枯れ草や海藻で皿形の巣をつくる。
1巣卵数は2~6個で、3個の場合が多い(清棲, 1978)。抱卵日数は約31日(Orta, 1992)。
詳しい繁殖生態、および婚姻システムについては不明な点が多い。
近縁のヨーロッパヒメウ(Phalacrocorax aristotelis)では、産卵の約1か月前から雌雄共同で皿形の巣をつくり、3日ごとに1卵ずつ1~6個産卵する(Cramp & Simmons, 1977)。
第2卵を産卵してから雌雄交替で抱卵し、卵は30~31日で孵化する(Cramp & Simmons, 1977)。
雌雄共同で雛に給餌し、雛は48~58日で巣立つ(Cramp & Simmons, 1977)。
雛の巣立ち率は、繁殖期が進むにつれて若齢個体による繁殖割合が多くなるため減少する(Snow, 1960)。
繁殖期を前半期と後半期に分けて繁殖成績を比較した場合、平均巣立ち数は前半期の方がよく、この例はカワウでも同様に見出されている(福田, 1982)。
コロニーは、毎年同じ個体が同じ場所を利用するという。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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全季節を通して群れで生活することが多い。
繁殖期には小集団で営巣するが、巣は一定間隔をとって分散する。
越冬期には小群で分散して休息する。しばしばウミウの群れに混じることもある。
塒もウミウと同じ岸壁を使うことがある。舞い上がるときには滑走を必要とし、波の上の 1~2 mの低空を直線的に飛ぶ。
群飛するときには隊列を組んで飛ぶ。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ